1983年に廃業以来、40年弱の時を超えて生まれ変わる旧バタシー・パワー・ステーション(火力発電所)。同所および周辺には、商業施設、高級アパートメント、ホテル、オフィスが建設中だ。
土曜日の昼下がり、真新しい「バタシー・パワー・ステーション」駅に降り立ち、旧発電所のほうへ向かう。旧発電所内にはまだ入れないものの、その周辺はすでに「マチ」として活気づいている。レストランなど商業施設が集中している「ヴィレッジ」エリアは、デザイン性の高い個性的な外観の店舗が並び、目にも楽しい。ちなみに今回の再開発マスタープランを担当したのは東京国際フォーラムを手掛けたことでも有名な建築家ラファエル・ヴィニオリ氏である。
点在するスプレー・アートやテムズ河を行き交うボートを見ながら、屋台が立ち並ぶ桟橋へ。かつてここで、海を渡り、南ウェールズなどからはるばる運ばれた石炭を降ろしていたのか…と過去に思いを馳せながら旧発電所を振り返ると、煙突のひとつに足場が組まれているのが見える。2022年に煙突の頂上からロンドンを一望できる展望台「チムニー・リフト」がオープンするのだという。
ロンドン中心部からの利便性が向上し、ぐっと訪れやすくなったテムズ南岸エリア。ロンドンの新たな息吹を感じてみては?
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バタシー・パワー・ステーション
● 建築士は、赤い電話ボックスをデザインしたことでも有名なジャイルズ・ギルバート・スコット氏。1920年代、着工前には「巨大すぎて景観を損ねる」と地元住民から強い反対意見が上がったが、縦溝彫りの煙突を備え、アールデコ調のデザインを施した荘厳なレンガ建築物を見事に完成させた。
● 同所で使用された総レンガ数は、なんと600万個。
● 優れた発電能力を備え、一時はロンドン需要電力の5分の1を供給するほど!
Information
Battersea Power Station
188 Kirtling St, Nine Elms, London SW8 5BN
https://batterseapowerstation.co.uk
週刊ジャーニー No.1210(2021年10月14日)掲載