懐かしくて新しい カセット・リバイバル

■ デジタル化された音源をストリーミングやダウンロードで聞くことが音楽を聴く方法の主流となっている中、レコードのリバイバルに続き、80年代に最盛を誇った「カセット・テープ」の人気が高まっているようだ。

相当な音楽好きやアーティストのファンでない限り、音楽CDを買う人さえ少なくなっている今、懐かしの音楽メディアであるカセットが再び注目されている。あらゆる世代のファンが魅力を再認識したレコードの再ブームに比べ、特にカセット全盛期を知らない若い層からの支持を得ている。
英国レコード産業協会(British Phonographic Industry、BPI)の統計によると、2019年上半期の英国でのカセット売り上げ本数は35,000本で、2018年同時期の18,000本の約2倍にまで上昇。先日の米グラミー賞で5冠を達成し、2019年のカセット・アルバム売上第1位のビリー・アイリッシュをはじめとし、ジャスティン・ビーバー、コールドプレイ、ルイス・カパルディら人気アーティストが売り上げを牽引した。
この復活現象の最もシンプルな理由として、より多くのアーティストがカセットでアルバムを発売したことが挙げられ、さらに若者がそれらを購入する理由として、コレクタブルでヴィンテージ感あふれ、おしゃれなものとして受け入れられたからだろう。また、お気に入りのアーティストのアルバムをCD、レコード、カセットなど複数の形式で購入する熱烈なファンにも支えられているようだ。製造業者はフル稼働で需要に応えているという。
音楽業界や企業向けにCDやDVD、レコード、カセットを製造する「キー・プロダクション」社のカレン・エマニュエル氏は、「ガーディアン」紙にこの現象について聞かれると「我々はこれまで警察の聴取用にカセットの製造を続けていましたが、音楽業界におけるリバイバル現象には驚いています」と驚きを露わにした。また同氏は電子メディア「inews.co.uk」のインタビューで「若い世代が今まで手にしたことのないものに懐かしさを覚えるという現象が起きています。さらに物質的に音楽を所有することができ、また、友人間で貸し借りしたり、譲ったりして引き継ぐこともできますよね」と、デジタルにはない魅力を分析した。
今後カセットがストリーミングにとって変わることはないだろうが、全盛期にお世話になった世代としても、カセットが再び脚光を浴びていることが嬉しい。実家の物置にカセットが眠っていないか今度探してみよう。(文/ネイサン弘子)

(左)英国で昨年最も売れたカセットランキングの2位にランクインした、ウェールズ出身のインディーロックバンド「Catfish and The Bottlemen」のアルバム「The Balance」。7.50ポンド https://store.catfishandthebottlemen.com
(右)同3位にランクインした、米歌手「Madonna」の「Madame X」。CDとカセットのセット19.99ポンド https://store.universalmusic.com

週刊ジャーニー No.1122(2020年1月30日)掲載