日本の国宝が大英博物館にやって来た!Nara: sacred images from early Japan

ラグビーW杯や来年に迫った東京五輪を前に、日本への注目度が高まる中、奈良の社寺が誇る国宝や文化財を展示する企画展「奈良—日本の信仰と美のはじまり」が大英博物館で開かれ、世界中の訪問客を魅了している。普段は奈良県内の各地を訪れなければ見ることができないこれだけの名宝を、ロンドンで一度に鑑賞できる(しかも無料!)貴重でありがたい機会。早速足を運んだ。(写真・文/ネイサン弘子)

ルーム3

今回海を渡った日本の名宝は国宝6点を含む全19点。大英博物館のコレクション8点と合わせて2つのスペースにわたり展示されている。まずは正面玄関を入ってすぐ右にあるルーム3。展示室の正面に現れる迫力の絵画は、同館が所蔵し、今回初公開となる「法隆寺金堂壁画(第9号壁)模写」=写真上。原画は飛鳥時代に法隆寺金堂内の壁に描かれた、現存する日本国内最古の仏教絵画だが、1949(昭和24)年の火災で激しく焼損してしまった。

保存状態が完全ではないものの、失われた彩色を伝えるのがこの模写だ。1879(明治12)年に法隆寺を訪れた英国人外交官のアーネスト・サトウが壁画に感動し、12あるうちの第9号壁に描かれた「弥勒浄土図」の模写を画工に依頼して、自国に持ち帰ったものが、後に大英博物館に買い取られた。サトウが模写を依頼したことは、日本でも金堂壁画を模写などで資料として残そうという動きのきっかけになったという。

世界の宝物を様々な経緯で所蔵する同館は、時に文化財返還問題に揺れることもあるが、貴重な品を後世に伝えるべく保管していることに敬意を表したくなった。

金堂壁画の模写の前に佇むのは、法隆寺所蔵の国宝「観音菩薩立像」=同上=で、壁画の模写を背景にした法隆寺コラボ。本企画展の特徴は、日本の文化財に並んで同館所蔵の関連作品が展示されていること。世界最大規模の博物館とだからこそ実現し得たコラボレーションと言えるだろう。観音菩薩立像は「夢違観音」の別名があり、『悪夢を吉夢に変えてくれる』と古くから信奉を集めてきた。日頃から夢見が悪いという人は手を合わせてみては?

ルーム93

日本の文化財が常設されている「日本ギャラリー」の中心に位置するルーム93には、さらなる国宝や重要文化財が並ぶ。

仏生会(釈迦の誕生を祝う法会)の本尊として東大寺に伝わった国宝「誕生釈迦仏立像及び灌仏盤」=同上=は、釈迦誕生時の伝説をもとに、釈迦の童子の姿をかたどった彫刻で、法会の際に甘茶を受けるための灌仏盤もそろった希少なもの。
ほかにも、法隆寺所蔵の重要文化財「聖徳太子七歳像」と並ぶ同館所蔵の「聖徳太子孝養像」、今年新たに国宝に指定された唐招提寺の「持国天立像」及び「増長天立像」=同上=のほか、西大寺、薬師寺、春日大社、丹生川上神社などからの仏像、仏具、女神像や舞楽面までが展示される。奈良に伝わる日本の伝統文化の原点と美しさや精神性が目の当たりにできる充実した内容となっている。

 

The British Museum, Room 3 & 93

Great Russell Street, London WC1B 3DG
11月24日(日)まで
www.britishmuseum.org

週刊ジャーニー No.1107(2019年10月10日)掲載