路上生活者を救え!ホームレス支援運動

英国で深刻化しているホームレス問題。これに立ち向かうべく、各団体はテクノロジーを駆使したアイディアなどを取り入れ、活発に支援活動を行っている。ロンドンの現状をレポートする。
ロンドン市庁舎のドネーション・ポイントでカードをかざすサディク・カーン市長。

政府機関が発表した2018年のデータを見てみると、英国における路上生活者の数は4677人。2010年からの8年間でおよそ2.6倍に膨れ上がったとされる。ロンドンだけに絞ると2018年は1283人とされるが、実際の数はさらに多いと見られ、2018年7~9月期のロンドンの路上生活者数を3103人とする別の団体の調査結果もある。
若者を対象に住居サポートを行う団体「センターポイント」によると、英国では昨年10万人以上の若者(16~24歳)が「ホームレスあるいはその危機にある」として、自治体に相談のため訪れたという。
こうした状況を受け、ロンドン市長のサディク・カーン氏の協力でスタートしたのは、コンタクトレス・カードでのホームレス支援を可能とする「TAP London」。ウェストエンド、シティなどのコーヒーショップやバーの会計レジ周辺、劇場、オフィスビルの受付、ショップのショーウィンドウなどに専用機器を取り付け、キャッシュレス社会のロンドンで寄付しやすい環境を整えた格好だ。

ショーウィンドウに設置された「TAP London」のドネーション・ポイント(場所は193 Piccadilly, W1J 9EU)。中央の白い部分にカードをかざすだけで寄付が完了。

運営するのは非営利団体「TAP London」で、同団体のウェブサイトで紹介されている設置場所はおよそ50ヵ所。カーン氏は、「少なくとも90ヵ所で導入することを考えている」と説明する。
寄付金額は一律3ポンドと設定され、コンタクトレス機能を持つカードやスマホをかざす(タップする)だけで完了。寄付金は路上生活者を支援する「Crisis」「Shelter」など、ロンドンで活動する22の団体に送られる。昨年11月にスタートし、2月4日現在で42,585ポンド(タップ回数は14,195)が集まったという。

テクノロジーを駆使して路上生活者数の削減を目指す、「unhoused.org」のオンライン・ショップ。生活必需品が販売されている。

一方、オンライン・ショップを通して、一風変わった支援活動を行うのは「unhoused.org」。下着からアウターウェアまでを取り扱う同ショップでは、消費者が商品を購入すると、それと同じ商品がチャリティー団体を通して路上生活者に届けられる仕組みになっている。サイト上にはメンズ、ウィメンズのほかに「Donation Only」のカテゴリーも設けられ、寄付用の商品だけを購入することも可。ここには、「ヘアカット」(10ポンド)、「携帯トップアップ」(11ポンド)、「女性用サニタリーキット」(9.99ポンド)など、生活に役立つ商品・サービスが並ぶ。

政府では2027年までに路上生活者数をゼロにすることを掲げている。誰もが平和に暮らせる社会が実現することを願うばかりだ。 (文/西村千秋)

週刊ジャーニー No.1072(2019年2月7日)掲載