ロンドンの新名所!?安住の地を見いだした巡回展 Body Worlds

寄付された遺体は、ドイツ東部の町グーべンにある施設で加工されている。© Jeff Moore

特殊加工を施した現代の人間の死体を展示するというほかに類を見ないサイエンス・アトラクション「Body Worlds」が、常駐型のミュージアムとして、ピカデリー・サーカスに面したロンドンの一等地にオープン。好奇心旺盛なロンドナーの間で早速話題となっている。

© Joel Ryan

1995年から世界130ヵ国で4700万人もの観客を動員した「Body Worlds」。日本でも「人体の不思議展」として全国30ヵ所を超える会場で開催され好評を博した。ただ一方で、生命倫理上の問題から、日本医師会や保険医協会から異議や中止を求める声明が出されるなどし、物議を醸した。実際にフランスでは2009年に展示会の開催を巡り、裁判所が中止を命ずる判決を下している。
世界各地で論争を巻き起こしてきた展示がロンドンに安住の地を見いだし、特に大きな混乱も起きずにオープンできたのは、知的好奇心旺盛な英国人気質と、ロンドンがありとあらゆるミュージアムが混在する、世界のミュージアムの中心地であるからではないだろうか。タウン誌「タイムアウト・ロンドン」は、ハロウィンにちなんだ「子供向けのぞっとするおすすめ体験」として、同ミュージアムを挙げている。
抑えきれない好奇心に駆られ、筆者も早速出かけてきた。5階で音声ガイド(現在は英語のみ)を借りてスタートし、3階まで降りながら見てまわるスタイル。
展示されているのはホルマリン漬けにされた体の一部やミイラ化された人体ではなく、ドイツの医師で解剖学者の、グンター・フォン・ハーゲンス博士=写真上=が発明した、死体をより生き生きとした状態で保存できる『プラスティネーション(plastination)』技術によって加工された人体だ。
内臓が見やすいよう腹や背が開かれた人体、筋肉を取り除いた人体、健康な臓器、不健康な臓器、血管、神経、スライスされた胴体など、それらはてかてかとした質感で、一見するとワックスの作り物に見えなくもない。しかし、筋肉に走る無数の筋、複雑かつ繊細に張り巡らされた神経や血管、これまで見たこともなかった臓器のぶら下がり方やつながり方などをつぶさに観察していると、これが作り物でないということが見て取れる。
作り物でさえ不気味なこれまでの人体標本とは異なり、体操のポーズ、カードゲームに興じる3人組、巨大な馬の死体にまたがりながら自分の心臓を掲げるポーズなどの展示法は、時にコミカルにさえ映る。中には男女が交わる生々しい人体や、1センチに満たない胎児から33週の胎児、妊娠5ヵ月の妊婦の人体もあるが、それらを見たくない、子供などに見せたくない人のために、入り口には注意書きがあるのでご安心を。
脳の仕組みをビルに例えるなど、難しい言葉を使わずにわかりやすく説明される音声ガイドを聞きながら、常にフル稼働してくれている心臓や内臓を目の当たりにし、健康に、幸福に生きるために必要なこと、食事、笑うことや友達の大切さなど、気付きや驚きを与えられた。
帰りのエレベーター内の手すりでエクササイズをしていた男性同様、もうすこし摂生に努めようと心改める体験となった。  (文/ネイサン弘子)

死体の体液や血液、脂肪などの水分を合成樹脂に置き換えるプラスティネーション技術は、どんなポーズに加工することも可能だという。

Body Worlds

London Pavilion, 1 Piccadilly Circus, London W1J 0DA
www.bodyworlds.co.uk
月~木、日:午前9時半~午後7時
金、土 :午前9時半~午後9時
チケット :一般24.50ポンド、6~15歳17.50ポンド、5歳以下無料



週刊ジャーニー No.1058(2018年10月25日)掲載