普段着で自己防衛 アンチ・スラッシュ クロージング anti-slash clothing

ロンドンを悩ますナイフ犯罪やヘイト・ クライムが増加する中、市民の自己防衛意識の高まりを受け、防刃(ぼうじん)性能のある衣類の売り上げが急増している。
2016年のロンドン市長選で現ロンドン市長のサディク・カーン氏が、最優先すべき公約のひとつに掲げた「治安の回復」は、残念ながら実現からほど遠い現状にある。怒りの矛先はなす術なく手をこまねいているかのように見えるカーン市長や、政府に向けられているが、保守党政権が過去数年間にわたり、警察への予算の割り当てを削減し続けてきたツケがまわってきていることは明らかなようだ。
犯罪の中でも特に大きな社会問題となっているのがナイフを使用した殺傷事件。今年7月までの過去1年間の統計によると、ナイフ犯罪は12パーセント上昇。同2月~3月にロンドンで発生した殺人件数は37件で、ロンドンと同規模の人口を有する米ニューヨークの32件を上回った。このことはロンドン市民に大きなショックを与えると同時に、大ロンドン庁(Greater London Authority)は、「ナイフを使用した犯罪を深く懸念している」と述べた。
連日のように新聞紙面に掲載されるナイフ犯罪の被害者の写真を見るたび心が痛む。ギャングがらみの事件が目立つが、多くの一般人も強盗を目的としたナイフ犯罪の被害にあっている。
そんな危機的な状況の中、需要を高めているのが防刃(slash-proof)加工されたジャケットや手袋だ。スパイ用品を販売する「Spycatcher(www.spycatcheronline.co.uk)」が立ち上げた防刃服の専門ブランド「Bladerunner(www.bladerunner.tv)」では、防刃加工されたフード付きジャンパーや、強度レベルが選べる手袋などの売り上げが増加。同ブランドの代表リー・マークス氏は、「メトロ」紙のインタビューに応じ、「商品の中でも特に80ポンド程のフード付きジャンパーの売り上げがアップしています。警察や国防省などに多く販売していますが、最近は一般客やモスクやシナゴークといった宗教施設からの注文も増え続けています。一般客の中にはギャングのメンバーやその家族も含まれている可能性も大いにあるでしょう。どちらにしろ、我々は人々を守っているのです」と自負する。
これらの商品はシンプルなデザインのものが多く、一見すると普通のジャンパーや手袋のようなので、普段着として取り入れやすそうだ。
自分の身は自分で守るという意識を高め、行動を起こすことは良いことだと思う一方、同時に治安の回復を切に願うばかりだ。
(文/ネイサン弘子)

左;Bladerunner Anti-Slash Hooded Top Lined With Dupon ™ Kevlar ® Fibre
戦闘服などにも使われる米デュポン社のスーパー繊維「Kevlar®」を使用したフード付きジャンパー。ピンク(左)、ブルー(右)。各77.99ポンド。
www.bladerunner.tv


右;Bladerunner Steel Gloves - Cut Resistance Level 5
ステンレス・スティール・ワイヤーを編みこんだ軍手タイプのリーズナブルな防刃手袋。9.60ポンド(片手)。
www.bladerunner.tv

週刊ジャーニー No.1052(2018年9月13日)掲載