食からジャーナリズムまで  独立系マガジン Print! Tearing It Up

■ インターネットが登場して以来、常にその将来が危ぶまれている紙媒体。この時代の流れに逆行するかのように英国では独立系雑誌がじわじわと人気を高めている。サマセットハウスで開催中のエキシビション「Print!」を覗いてみた。
社会のメインストリームとは一線を画し、独自の視点を押し出して制作される独立系雑誌。6月8日~8月22日の日程で行われている「Print! Tearing It Up」では、近年、英国で創刊が相次ぐ独立系雑誌の活躍を記念し、「デジタル時代における『紙』の力とは?」という問いのもと、英国で発行されてきた独立系雑誌の軌跡を紹介する。ラインアップは1914年創刊の、モダンアート運動を象徴する「Blast」、1972年創刊のフェミニズム雑誌「Spare Rib」、カルチャー誌「Real Review」(2016年創刊)など、その豊富さに目を見張る。
オンライン・メディアの蔓延によって出版業界の不況が叫ばれて久しいものの、独立系雑誌の創刊数は上昇。内容も政治から映画、ファッション、食、旅、クラフト、LGBTQ、移民文化に至るまで多様化しているのが現代の特徴という。これらの活動を後押しするのは意外にもデジタルの世界。クラウドファンディングを利用してスポンサーを集めたり、ソーシャル・メディアを使って読者や寄稿者を獲得したりしやすくなったことで、宣伝や制作に膨大な費用をかけなくとも、独自の切り口があれば高品質な雑誌作りが可能となったことが背景にあるという。
雑誌を取り巻く環境は、制作者だけにとどまらない。多岐にわたる雑誌を取り扱う「Stack」(www.stackmagazines.com)では、毎月異なる雑誌を届ける、ユニークな定期購読サービスを行う。雑誌好きの創業者が2008年に立ち上げ、世界各地から編集者の視点が光るものを取り寄せているのだそう。
エキシビション開催期間中は、「Delayed Gratification」(8月1~7日)=下参照=や、隔月発行の映画雑誌「Little White Lies」(同15~22日)による特別展示やワークショップも予定されている。これを機に、紙媒体の世界を改めて開拓してみては? (文/西村千秋)

Print! Tearing It Up
Somerset House, Terrace Rooms Strand, WC2R 1LA
8月22日まで
入場無料
www.somersethouse.org.uk


ニューススタンドをイメージしたコーナーでは雑誌を手にとって閲覧することができる。


1:Burnt Roti
2016年にロンドンで創刊した南アジアの女性のためのコミュニティ・ライフスタイル誌。不定期刊行。

2:Delayed Gratification
2011年創刊の季刊誌。膨大な情報が勢いよく消費される現代で「Slow Journalism」をコンセプトに、過去3ヵ月のニュースの本質を掘り下げる。

3:The Gourmand
食がテーマのカルチャー誌。年2回発行。2011年創刊。



週刊ジャーニー No.1046(2018年8月2日)掲載