世界中で親しまれている名作『不思議の国のアリス』だが、このほど著者であるルイス・キャロル直筆の未公開の手紙=写真下=が公開され、同作品の成功により得た名声を嫌い、「本など書かなければよかった」と嘆いていたことが明らかになった。「デイリー・メール」紙が報じた(写真は「デイリー・メール」紙より)。
ペンネームをルイス・キャロルとした、チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンさん=同上=は、生前、素性を明かさなかったとされるが、友人でオックスフォード大学の著名な外科医だったフレデリック・シモンズ医師の未亡人、アン夫人に宛てた手紙の中で、自分がルイス・キャロルだと知られたりすることに対して『激しい嫌悪感を抱いている』と記されているという。
この手紙は1891年、ドジソンさんが59歳の頃に数学者として勤めていたオックスフォード大学クライスト・チャーチ・カレッジ内の自室でしたためられたもの。ルイス・キャロルとして脚光を浴びることとなった『不思議の国のアリス』が発表されてから26年が経過した頃の心情とされている。
手紙を頻繁に書いていたドジソンさんは、自身の手紙が収集家の手に渡ることで、ルイス・キャロルが誰であるか露見する事態になるのを恐れていた。「見知らぬ人々が(ルイス・キャロルの)本名を知り、私と著書と結び付けるようになるばかりか、自分の行動が注視されたり、知らない人からじろじろ見られたりし、さらには『ライオン』などの珍しい動物のように扱われるに至る」ことを極度に嫌っていたという。
さらに手紙は続き「いっそ、本など書かなければ良かったと思うこともある」と嘆きの心情がつづられている。
ちなみに、ドジソンさんは、サインを求められても容易には応じず、自身とルイス・キャロルの繋がりについて問い合わせてきた人々には、自分はルイス・キャロルとはまったく関係ないとする断り書きを印刷し、返送していたとされている。
なお、このアン・シモンズ夫人に宛てた手紙はある個人コレクターが所有していたもので、来月19日に競売大手「Bonhams」でオークションにかけられる予定。落札価格は4000ポンド程度になるとみられている。