独立推進派のみる夢は

サモンド党首率いるSNPが思い描く、独立国スコットランドの未来の姿とは。
ここでは、独立時の『理想』といえる主な要素と、それに対する独立反対派や専門家が指摘する『現実』について、大まかながら記してみることにしたい。

元首は誰にする?

推進派の主張=エリザベス2世を元首にすえる。
現実は=この問題については、今回の住民投票の大きな争点とはなっておらず、英政府も明確な声明は出していない。しかし、スコットランドとイングランドが統合されたのは、エリザベス1世の没後、約100年がたってからのこと。つまり、スコットランドでは、エリザベスという君主が存在した史実はいまだかつてないことになる。従って、もし独立国スコットランドの元首となるなら、厳密にいうと現女王陛下は「エリザベス1世」と呼ばれるべき。

通貨は何になる?

推進派の主張=英ポンドを使い続ける。米ドルを使っているパナマなどの例もあり、誰もスコットランドの英ポンド使用は止められない。
現実は=この問題は、住民投票の最大の争点のひとつ。EU加盟が難しい以上、ユーロへの切り替えは非現実的。また、新通貨を導入するには、20億ポンドかかると試算されているうえ、新通貨が世界経済で信用を勝ち取ることができるかどうかも不明。サモンド氏は、英ポンドを使うと強硬に言い張っているが、英政府のみならず、野党労働党も、「ポンドは使わせない(通貨同盟は結ばない)」と断固反対の姿勢をとる。英政府が現在とっている、銀行破綻法制や預金保護制度などを、スコットランドが今後、同様に採用するだけの力があるかも疑問視される。

 

EUに加盟する?

推進派の主張=独立派が勝った場合、スコットランドは2016年3月をもって英連合王国から離れるとサモンド氏は説明。並行して、勝利後、18ヵ月をめどにEU加盟を試みる意向。
現実は=欧州委員会の新委員長に就任したばかりのジャン・クロード・ユンケル氏は、「今後5年間、新規加盟は認めない」方針であることを表明。また、新規加盟には既存メンバー28ヵ国の承認が必要であるため、EU加盟の道はきわめて厳しいといわざるを得ない。

 

北海油田は大丈夫?

推進派の主張=埋蔵量は「十分」、まったく問題なし。
現実は
=埋蔵量については、複数の専門家が異なる予測を立てている。当然のことながら、スコットランドは多めの数字を採用、それ以外の専門家は、スコットランドの主張より少ないとしている。また、独立したとしても、スコットランドは北海油田をひとりじめできるわけではない。埋蔵量の90%を取ることになる見込み。
減税される?

推進派の主張=北海油田がもたらす利益により、減税が可能。また、社会福祉サービスの拡充も約束。弱者を切り捨てる現英政府とは異なる政策をとる。
現実は=必ずしも安定しない北海油田の採掘量に依存して税制を決めるのは危険との指摘がなされている。なお、キャメロン首相は、独立反対派が勝った際には、税制を制定する権限を一部、スコットランド議会に与える準備があるとし、懸命に「ニンジン」をぶらさげようとしている。

 

独立にはいくらかかる?

推進派の主張=約2億5000万ポンド。
現実は=新しい税制、社会福祉サービスの確立・導入のほか、スコットランド軍の創設、世界各国での新大使館の設置など、スコットランドが国としての体裁を整えるには莫大な費用がかかる。こうした初期費用は、約25億ポンドと見積もる説があり、これは独立推進派の試算の10倍。もし、この数字が正しければ、スコットランドの1世帯あたりの負担額は約1000ポンドとなる。
核は持たない?

推進派の主張=グラスゴー郊外のクライドを基地とする、英海軍の原子力潜水艦については、撤収を求める。
現実は=英海軍の保有する原子力潜水艦4隻は、核弾頭を装備する潜水艦発射弾道ミサイル、トライデント(Trident)を搭載している。独立推進派は、巨額の浪費といえる核を放棄することにより、支出が減ると主張しているが、英海軍の撤収は、関係機関で働く8000名の職が奪われることを意味すると、独立反対派は強い懸念を示している。
BBCの人気番組は
見られなくなる?

推進派の主張=多くの人気番組は継続して視聴可能。
現実は=もし、新しく「SBS(Scottish Broad-
casting Service)」が設立される事態になった場合、BBC制作のプログラムの1割程度を購入するのが関の山だろう、と予測されている。ダンス挑戦番組「ストリクトリー・カム・ダンシング」も、SFシリーズ「ドクター・フー」も、スコットランドでは見ることができなくなるかもしれない!