2014年9月4日 No.846

●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部

 

英国の国旗、ユニオン・ジャックはイングランドの旗(白地に赤の十字)、
スコットランドの旗(紺地に白の斜め時十字)とアイルランドの旗(白地に赤の斜め十字)を組み合わせたもの。
住民投票の結果によっては、ユニオン・ジャックのデザインを変更する必要が生じるかもしれない…。
スコットランドの未来は、霧にかすむエディンバラ城=写真=のように、はっきりと見渡すことが難しい。

 

1707年に、スコットランドが
「連合王国」の一員となってから300年あまり。
形の上では対等ながら、
イングランドには常に虐げられてきたという思いを
拭い去れないスコットランド人がほとんどだろう。
独立を果たしたい―
これはスコットランド人の悲願といえる。
しかし、現実問題として考えるとなれば話は別だ。
それでも悲願達成を唱える賛成派が勝つか、
自らのために連合王国に残るべきだと主張する反対派が勝つか。
2週間後に迫った運命の日を前に、
今回の住民投票について書いてみることにしたい

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独立は貧困を招く


「エコノミスト」誌といえば、国際事情と経済を中心に扱う硬派の刊行物として定評があるのはご承知の通りだろう。1843年創刊、ロンドンを拠点に毎週発行される同誌では様々な特集記事が掲載されるが、2012年4月14日号=左写真=は発行されるや否や、大きな波紋を投げかけた。
「It'll cost you – the price of Scottish independence」(スコットランド独立は、高くつく)というタイトルの下に、何の変哲もないスコットランドの地図が置かれている…と思いきや、「Scotland」はよく見ると「Skintland」と打ち換えられている。「skint」とは「文無し」のこと。つまり、独立後のスコットランドは「文無しの国」になるという、強烈なメッセージがこめられた特製地図だったのだ。
この「Skintland」以外にも、エディンバラが「Edinborrow」になり、ご丁寧にも「(編集部註…財政難に苦しむ)アテネと姉妹都市」と注釈が入れられているのをはじめ、グラスゴーは「Glasgone」、アバディーンは「Aberdown」、スコットランド北部のハイランド地方は「Highinterestlands」と置き換えられ、「落ち目になる」「下降線をたどる」「困窮する」といった、マイナスのイメージを連想させる名前にどこも『変形』させられている。
スコットランドのシェトランド諸島に至っては、「Shutland Islands」(leased to Norway)=ノルウェーにレンタル中、と記されるなど、意地悪くも機知に富む英国人(イングランド人)の皮肉好きな性格がいかんなく発揮された表紙となっている。
これに激怒したのが、2011年5月の選挙で、予想外の大勝利をおさめ、スコットランド議会の第一党に躍進した、「SNP(Scottish National Party=スコットランド国民党)」である。SNPは、2011年の選挙で、「同党が勝ったあかつきには、スコットランド独立の是非を問う、住民投票を行う」ことを公約のひとつに挙げ、有権者の心をつかんだ。
SNPは見事、勝利を手中にし、党首のアレックス・サモンド氏(Alex Salmond)はスコットランド自治政府の第一首相に就任。公約どおり、住民投票を行うことを宣言したのだった。
エコノミスト誌が、独立を選んだ場合のスコットランドの行く末について特集を組んだのは、この宣言を受けてのことだ。冒頭で説明した表紙どおり、独立推進派にとっては厳しい内容の記事だったが、これが掲載されてから2年あまり。独立推進派と、連合王国にとどまることを求める独立反対派のあいだで、激しいバトルが繰り広げられてきた。
双方の主張について、主なものを記す前に、そもそもなぜスコットランドで独立を熱望する機運がここまで高まったのかを探っておきたい。

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