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2014年4月3日 No.824

●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部

 

時代が求めた死者の楽園
ヴィクトリアン霊園

ロンドン中心部および近郊には120を超す墓地が点在し、散歩道が設けられた公園さながらの霊園も少なくない。これらの多くが誕生したのは、19世紀、ヴィクトリア朝時代。産業革命による爆発的な人口増加から、ロンドンでは大規模な埋葬場所の確保が必要となったのを受けてのことだった。今回は、時代のニーズに合わせてユニークな発展を遂げた、霊園についてお届けしたい。

参考文献:『The Victorian Cemetery』Sarah Rutherford著、『London Cemeteries』Hugh Meller、
Brian Parsons著、『Highgate Cemetery Victorian Valhalla』Felix Barker著ほか

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緑あふれる庭園墓地

 アーチウェイ駅から徒歩15分。ハイゲート方面へ向かうハイゲート・ヒルを上り、左手に見えてくるウォーターロウ・パークを抜けた所に、「ハイゲート・セメタリー」と呼ばれる霊園がある。
葬儀に参列したり、家族や知人が眠っていたりしなければ、墓地へと赴く機会は少ないのではないだろうか。けれども、19世紀に建てられた同霊園は、年間7万人の来園者数を誇り、供養というよりは、観光、休日をゆったりと過ごす目的で足を運ぶ人が目立つ。
物理学者マイケル・フェラデーや作家ジョージ・エリオットなど、名の知れた人物が眠ることで知られており、なかでも哲学者カール・マルクスの墓は人気の筆頭格に挙げられる。彼の顔を模した墓碑たるや度肝を抜く大きさで、一瞬見ただけでも脳裏に焼きつくほどのインパクトを与える。だが、実際に歩いてみると、見所は著名人の墓だけではないことがわかる。同霊園は、1839年にオープンした西区画と、60年に拡張された東区画のふたつのエリアにまたがり、マルクスの墓があるのは東側だが、西側にこそ、この地の魅力が詰まっているという。しかも、入園はガイド・ツアーのみに制限され、訪れる前から厳かな空気を匂わせる。



ハイゲート・セメタリーの西区画にある墓石。 天使が横たわる石像は稀。

 

取材班はこの西区画へと向かった。ガイド氏の後に続いて敷地内に足を踏み入れると、茂みの中に埋もれるようにして佇む墓石群が我々の目に飛び込んできた。名前や生没年、メッセージが彫られた石版から、故人の顔、動物、天使をかたどった石像まで、そのひとつひとつは実に個性的だ。歳月の流れと共に朽ちかけていたり、草木に侵食されていたりするものの、静謐な空気を身にまとった個々の姿にじっと見入ってしまうこともしばしば。そこに身を置いていると、忘れ去られた遺跡、あるいは失われた庭園に迷い込んだような錯覚さえ覚える。
ガイド氏の説明をもとに墓石を眺めながら、敷地内に設けられた、ゆるやかなカーブを描く登り坂を奥へと進んでいく。すると、生い茂る木々の合間から、ふいに重厚な石門が姿を現した。苔のむした年季を感じさせる門と、そこから導かれる狭い上り坂は、別世界へと通じているような雰囲気さえ醸し出している。
門をくぐると閑寂さは一層深まる。通路の左右には埋葬室への扉が8つずつ並び、重金属のその黒い扉には火のともったたいまつが上下逆さまに描かれているのも見られ(13頁参照)、憂愁の陰をにじませる。この通りを抜けると、今度は堂々と聳えるシーダーの木(レバノンスギ)と、その土台をなすように円形に配置された埋葬室群が目の前に現れた。
霊園内を奥へ奥へと進むにつれ、まるで下界から切り離されていくような感覚が強まる。と同時に、なぜ霊園にこのような手の込んだ設計が施されたのだろうか、という疑問が沸いてくる。そもそも、どのようにして誕生したのだろうか―。
その答えを探るべく、歴史を紐解いてみることにした。

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