Yutaka Online Shop Hanami Picnic Sale 2024
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サッカー試合で広がった客層

 さて、ブックメーカーという言葉を聞いても、すぐにピンと来る方は多くはないかもしれない。
辞書によれば「競馬など賭け事の胴元」、つまりギャンブルを運営する者のこと。掛け率(オッズ)を提示して客の投票を募り、勝者に配当を行う賭け屋のことである。口語ではブッキー(bookies)と呼ばれている。英国の大手私営ブックメーカー「ラドブロークスLadbrokes(英語での発音はラドブルックス)」や「ウィリアム・ヒルWilliam Hill」は、英国の街のハイ・ストリートには必ずといっていいほど店を構えているので、誰でもそのロゴを目にしたことがあるはずだ。これらの大手私営ブックメーカーは、いずれも20世紀の初めに個人による小さな賭け屋から出立し、第2次世界大戦期に大きな飛躍を遂げた。
ブックメーカーは最初から合法だった訳ではなく、政府による規制と緩和の影響を受けつつ今日を迎えているのだが、英国で今のようにブックメーカーの存在が合法化されたのは1961年のこと。

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 当時ベッティング・ショップでの賭けは競馬とドッグレースが中心で、これらのレースが行われるのは主に日中が多かったことから、ショップのオープニング時間もかつては昼間のみだったという。ここから、ベッティング・ショップの客は無職の人かお年寄りばかりというイメージが出来上がってしまったようだ。
ブックメーカーが本格的にサッカーのベッティングにも力を入れ出したのは、ここ10年程のことで、意外にもそれほど遠い昔のことではないという。夜間でも行われるサッカー試合のためにベッティング・ショップも夜10時まで営業を行うところが登場したほか、衛星放送「Sky TV」の導入で国外の試合も賭けの対象になるなどし、こうしたことから新たな若い客層が開拓された。
かつての店内は薄暗くタバコの煙がもうもうと漂い、入口からは中が覗けないようになっている、かなり『ディープ』な入りにくい空間だった(エリアに寄っては、今でもそうした雰囲気を留めている店もあるが)。しかし、現在は全館禁煙で、モダンなインテリアで整えられ、「ベッティング・カフェ」という言葉が似合う姿に変貌しつつある。それでも、誰もが気軽に立ち寄るには、まだまだ特殊な場所といえるだろう。



ウィリアム・ヒルの公式サイト(www.williamhill.com)。
店頭とは異なり、カジノなどにも挑戦できる。日本語版サイトもあり。

 

オンライン・ベッティングの台頭

 忘れてはならないのが、2005年に合法化されたオンライン・ベッティングの存在である。
実店舗に足を運ばずに、自宅のパソコンからブックメーカーのサイトにアクセスして賭けに参加するという手軽な方法は、ギャンブルの敷居を格段に低くしたであろうことは間違いない。それに加え、「すでに始まっている試合の途中で賭けに参加することは出来ない」という今までの決まりが、オンラインの導入とともに変化した。
例えば、サッカーでいえば「後半戦でルーニーがレッドカードをもらう」とか、テニスならば「次のセットでアンディ・マリーが転ぶ」というような細かい賭け方が可能になったのである。つまり、競馬やドッグレースの人気の理由は「すぐ結果が分かる」の一言に尽きるが、オンライン・ベッティングの登場で、サッカーやテニスといった、試合結果が出るまでに比較的時間が長くかかるものでも、賭け方次第でいくらでも手に汗にぎる展開を楽しめるようになったわけだ。さらに、オンラインだとカジノやポーカーといった、店舗では扱っていないギャンブルにも挑戦できる。
ウィリアム・ヒルによると、現在国内の実店舗数は2390店。オンラインと実店舗の売り上げの割合は、3対7といったところだという。
しかし、最近のスマートフォンの普及からオンライン・ベッティングの利用者は増加しつつあり、今後この割合が変わる日も遠くはないだろうというのが彼らの考えのようだ。



© William Hill

人の力で割り出すオッズ

 Sky TVの導入やオンライン・ベッティングが登場したことで、賭けの環境は大きく変化した。だが、意外なことにブックメーカーによる予想のたて方やオッズのつけ方は、今も昔ながらの方法、つまり『人の力』によって行われている。
ウィリアム・ヒルでは、サッカーの予想に20人、競馬の予想に15人、というように専門の予想屋(自社のスタッフ)を投入し、ひとつの予想に対し平均20分から1時間、また複雑なものや大勢が参加して大金がからむものに関しては10時間あまりをかけて、徹底的に調査したうえでオッズを割り出しているのだという。
英国の賭け事でユニークな点は、明日の天気からリアリティ番組の勝者、セレブリティの結婚・離婚までと、あらゆる事柄に対してオリジナルの賭けを作りだすことができる点にあるが、これらにオッズをつけるのも専門のスタッフたちである。アルゴリズム(コンピューターを使用した計算処理のこと)を使って予想出来る事柄のみコンピューターで計算してオッズを出すが、それ以外は「予想屋」としてのブックメーカーの腕の見せ所というわけである。
そういった理由から、残念ながら今回取材班が賭けようとしたベットのいくつか(東京の桜の開花日予想など)は、その場ですぐにオッズを出してもらうことができなかった。また、天災や戦争、人の死に関わることなど、ネガティブな事柄に対する賭けは御法度となっている。
さて、簡単にブックメーカーの歴史や賭けの仕組みを振り返ったところで、実際に我々が店で賭けにチャレンジしてみることにしよう。