リスクは必ずしも恐れるべきものではない
アーノルド・フルトン氏に聞く


 

■傘だけでなくレインコート、レインシューズなど、雨天用製品のメーカーとしては英国で最大手であるフルトン社。現在は三男に社長の座を任せているアーノルド・フルトン氏だが、頭の中は常に現役経営者のままのようだ。そのフルトン氏を、北西ロンドンにある本社オフィスに訪ね、話を伺った。

――ビジネスの世界で必要なものを挙げるとすれば?
 ビジネスに限らず、人生には支えとなるものが必要だと思います。もっとも一般的なのは宗教でしょう。神や天使を信じることができれば、精神的に大きな助けになるに違いありません。ただ、残念ながら私には、存在が「証明」できないものを信じることはできないのです。

――無神論者ということですか?
 無神論者というよりは、不可知論者(agnostic)というべきかと思います。ただ、それぞれの宗教で神を信じる人と議論するつもりは全くありません。信仰する対象のある人をうらやましいと感じることもありますし。


答えの内容によっては時折、鋭いまなざしを見せるフルトン氏。80歳の今でも現役のビジネスマンであり、エンジニアであることを感じさせる。

――では、フルトンさんを支えているものとは?
 不遜に響くかもしれませんが…自分への信頼でしょうか。私は自分自身を信じています。今まで色々なことがありましたが、乗り切ってくることができた。今後もたいがいのことには、対処していけるでしょう。もちろん、物質面、精神面で他からの助けを必要とすることはあるでしょうが。

――リスクについてはどう考えますか?
 リスクは必ずしも恐れるべきものではないと考えています。成功した時、得られるものが大きいなら、リスクが少し高くても私なら挑戦するでしょう。困難な問題があっても、将来のために、それをいかに克服するかをむしろ楽しむ、というのでしょうか。それが私にはあっていると言えます。やる気を高める上でも、挑戦していくことが必要ですね。

――今までで最も後悔したことは?
小さな後悔はたくさんありますが…深刻なものは、なかったと思います。ただ、仕事が忙しく、子供たちが小さい時に家族と過ごす時間が少なかったことについては気がとがめました。もっとも、妻(編集部注:2006年に脳腫瘍で逝去)のおかげで、そこまで良心の呵責を感じずにはすみましたが。今、かわいい孫たちと過ごすことで、その時に失ったものを取り返しているような気がします。

――「Quality of life」とは何でしょう?
 もし、あなたがハッピーだと思えば、あなたは「a  good quality of life」を手にしているといえるでしょう。幸せに様々な形があるのと同じで、何が「quality of life」なのか、はっきりと定義することはできません。自分でみつけるしかないのです。