■ 夏時間も終わりを迎え、暗く寒い冬の訪れを実感する今日この頃。でも「英国らしさ」といえば、暗闇にともるガス灯と霧、血塗られた歴史、そして幽霊にあり⁉ ハロウィンが目前に迫った今回は、ウォーキングツアーから参加型アトラクションまで、恐怖体験が楽しめるロンドンのホラーイベントを大特集!
●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部
ハロウィンの起源は2000年以上前にさかのぼり、アイルランドや英国北部に住んでいた古代ケルト人の宗教行事が由来だ。ケルト人の暦では、年始は11月1日。つまり、その前日である10月31日は大みそかにあたる。彼らが信仰していたドルイド教では、あの世へたどり着けなかった死者の霊(魂)は、大みそかに家族のもとへ戻ってくると信じられていた。そして新年初日に、その霊がいる場所に「災厄を招く神々」が現れることから、死者の魂は「悪霊」として忌み嫌われ、10月31日は霊を追い払うために「かがり火を焚く日」とされていたのである。悪霊から身を隠すため、外出時には身元がわからないように、同じ悪霊の姿に扮したことがハロウィンの仮装の発祥だ。
ハロウィンといえば必須の目・鼻・口を切り抜いたカボチャのお化けも、悪霊が関係している。このカボチャには名前があり、「ジャック・オー・ランタン(Jack-o'-Lantern)」(手提げランプを持ったジャック)という。ジャックとは、悪魔をだまして「死んでも地獄に落ちない契約」を結んだ後、安心して悪行に励んだとされる人物。しかし死後、生前の行いの悪さから魂は天国へ行けず、契約を結んだために地獄へも行けなかった。仕方なくジャックは畑に転がっていたカボチャで手提げランプをつくり、地獄の火を灯してほかの悪霊たちから身を守りながら、今も暗闇をさまよい続けている。大みそかに家の窓辺や軒先にかがり火を焚く習慣は、火を灯したカボチャのお化けを飾る文化へと変化したというわけである。ちなみに、米国にハロウィンが伝わり、「イベント」のように大流行した結果、なぜかジャックが掲げるランプは「カボチャ」になってしまったが、本来は「カブ」がオリジナルだ。
英国ではハロウィンはそれほど盛り上がらず、ガイ・フォークス・ナイト(11月5日)の方が人気が高い。とはいえ、どこのアトラクションもハロウィン特別イベントを企画している。日暮れが早い冬だからこそ、身の毛もよだつ恐怖体験をさらに楽しめるかも?
定番のホラー系ウォーキングツアー London Walks
英国公認のブルーバッジ観光ガイドが案内する、ウォーキングツアー。ロンドンの過去と現在の歴史がわかるコースやパブをめぐるツアーのほか、夜に開催される切り裂きジャックによる殺害現場を歩くツアー、幽霊が出る「いわくつき」の場所を案内してくれるコースなど、ホラー系も充実。ほかにも多数のウォーキングツアー社があるので、比べてみよう。
www.walks.com
閉鎖したロンドン地下鉄駅を探索 TfL Hidden London
ロンドン交通博物館が主催する、閉鎖されて現在使われていない地下鉄駅やトンネルなどを歩くウォーキングツアー。ベイカーストリート駅、ピカデリーサーカス駅、ムーアゲート駅などのほか、コベントガーデンにある旧オールドウィッチ駅、第二次世界大戦でシェルターとして使われ、チャーチル首相の隠し部屋があった旧ダウンストリート駅も訪れることができる。
www.ltmuseum.co.uk
血塗られたロンドンの歴史を再現 The London Dungeon
ロンドン塔での拷問や処刑、ロンドン大火、ペストの大流行、魔女狩り、連続殺人鬼の理髪師スウィーニー・トッドの事件、切り裂きジャックの連続殺人事件といったロンドンの血塗られた歴史を、乗り物に乗ったり、役者たちの迫真の演技に巻き込まれたりしながら体感できるアトラクション。所要約90分。
最寄り駅:Waterloo / Westminster
£29.50~ www.thedungeons.com/london
地下墓地の迷路で恐怖体験 The London Bridge Experience
古代ローマ軍の侵攻から始まる2000年ものロンドンブリッジの陰惨な歴史を、アニメーションや役者たちの演技により学ぶことができるアトラクション。とくに、ロンドンブリッジの地下空間につくられた墓地は迷路となっており、「最恐」と名高い。果たして襲い来るゾンビなどの魔の手から逃れられるか⁉ 所要約75分。
怖いけど面白い⁉ ゴーストバスツアー The Ghost Bus Tours
ロンドンの幽霊出没スポットをバスで案内してくれる、夜開催のバスツアー。案内してくれる運転手や車掌に扮したツアーガイドらが面白い!と人気。
www.theghostbustours.com/London
怪奇現象も頻発! 地下洞窟を歩く Chislehurst Caves
4500年以上前の石器時代から採掘されていた地下採掘場跡が、ロンドン中心部から電車で30分ほどの小さな町、チズルハーストにある。ケルト人による生贄儀式が行われていたほか、第二次世界大戦中はシェルターに。殺人事件も起きている。
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60分で脱出なるか?恐怖のエスケープ・ルーム No Escape London
オックスフォード・ストリート、オールドゲイトのほか、ブリクストンやヴィクトリアなど次々に施設をオープン中のエスケープ・ルーム。黒い噂の漂う美容室、歯医者、肉屋、監獄など、場所によってテーマや難易度はさまざま。60分の時間制限内に、パズルを解いたり、室内でヒントを探し出したりして脱出を目指す。さもないと…。2~6名のグループ推奨。
最寄り駅:Tottenham Court Road
59 Wentworth St, London E1 7TD
最寄り駅:Aldgate / Aldgate East
www.noescapelondon.co.uk
週刊ジャーニー No.1314(2023年10月26日)掲載