●サバイバー●取材・執筆/本誌編集部
■ 高額を支払って楽しむアフタヌーン・ティーでは、良質で素晴らしいサービスが受けられるのは当然のこと。そうしたアフタヌーン・ティーもいいが、買い物や観光途中に、ドレスコードを気にせず、気軽にほっと一息つけて、カジュアルに美味しい時間を過ごせる店もおすすめだ。今回は、価格を25ポンド程度かそれ以下にしぼって、オックスフォード・サーカスとピカデリー・サーカスというロンドンのど真ん中からほど近い、4店をご紹介する。
好立地 No.1
リバティのセカンド・フロアにあるカフェスペース。茶器やケーキのラインナップ等、カントリースタイルで統一。温かみが感じられ、親しみやすい雰囲気が流れる。スコーンは1人1つで、残さず食べきれるサイズ。プレーンとフルーツから選択可。サンドイッチは具材のみならずパンも4種類とも違うものが使用されており、目で見ても楽しめる。上段のスイーツは、マカロン、ラズベリームース、レモンタルト、キャロットケーキ。どれも甘すぎず日本人好みといえそう。
Arthur's Café
020 8159 658
Liberty London
Great Marlborough Street, London W1B 5AH
www.libertylondon.com
料金: 一人あたり £27.25
最寄駅: Oxford Circus / Piccadilly Circus
予約: 事前予約不要
営業時間: 月−土 10:00 - 19:00 日 12:00-17:00
お値打ち度 No.1
大手スーパー・チェーン「マークス&スペンサー(M&S)」のパンテオン店内セカンド・フロアにあるカフェ。オックスフォード・サーカスから徒歩4分。お味は全て安定のクオリティ。スコーンは食べ応えのある大きめサイズでプレーンとフルーツから選択可。サンドイッチは小ぶり、スイーツもフィンガーサイズで、すべて食べ切ってもディナーに響かない程良いボリューム。何と言っても、1人10ポンドでアフタヌーティーセットが楽しめるのがうれしい。今年3月より全国のM&Sカフェにて提供されているがロンドン内では当店のみ。
M&S Café Pantheon
020 7437 7722
173 Oxford Street, London
W1D 2JR
www.marksandspencer.com
料金: 一人あたり £10.00
最寄駅: Oxford Circus / Tottenham Court Road
予約: 事前予約不要
営業時間: 毎日14:00 - 17:00
眺望 No.1
ピカデリー・サーカスから徒歩3分、大手書店「ウォーターストーンズ」内のフィフス・フロアにあるバー兼カフェ。窓外に広がる眺めの良さはすばらしく、「View」と名付けられたのもうなずける。アフタヌーン・ティーは1人21.99ポンドだが、ふたり分なら36.99ポンドとなり断然お得。サンドイッチのひとつはアボカド・トーストで、他店ではなかなか見られない試み(美味!)。スコーンは1人に1つ。スイーツはチョコレートタルト、キャロットケーキ、ラズベリーミニスポンジで、どれも甘さ控えめ。時間制限がないので、心おきなくおしゃべりできる。
5th View Bar & Food
020 7851 2433
5th Level, Waterstones, Piccadilly
203 - 205 Piccadilly London
W1J 9HA
5th-view-bar-and-food.co.uk
料金: 一人あたり £21.99※2人分は £36.99
最寄駅: Piccadilly Circus
予約: 事前予約可 ※できれば窓際の席をリクエストしたい。
営業時間: 月−土 9:00 - 21:00 日 12:00-18:00
雰囲気 No.1
進化系クロワッサン「クラフィン」でも人気を博している当店。アール・デコ調でエレガントな店内は、カフェスペース、レストラン、バーとエリア分けされている。天井も高く、ゆったりと空間と時間を堪能できる。サンドイッチは濃いめのしっかりした味付け。スコーンは1人2つずつ。また、上段のケーキはどれも少し甘めだが、サクサクした生地のシュークリームに、紫のチェリークリームがのったピスタチオフィナンシェなど、華やかで白プレートに映える。紅茶はおかわり&茶葉の変更も可。
Richoux
020 3375 1000
172 Piccadilly, St. James's
London W1J 9EJ
www.richoux.co.uk
料金: 一人あたり £32.95
最寄駅: Piccadilly Circus / Green Park
予約: 事前予約 推奨
営業時間: 月-土 12:00-17:30 日 12:00-16:30
ちょっぴり軽めのクリーム・ティー
ティールームやカフェで、「クリーム・ティー」というメニューを目にすることも多いだろう。これは、デヴォンやコーンウォール地方が起源(どちらも自分たちがオリジナルだとして譲らない)。こってりとしたクロテッド・クリーム(clotted cream=甘くない。脂肪分は60%程度でバター〈80%程度〉と生クリーム〈30~48%〉のあいだ)にイチゴジャムを添えたスコーンと紅茶のセットのこと。サンドイッチなどはつかない。今日、ホテルで供される「トラディショナル・アフタヌーン・ティー」には、このクロテッド・クリームとジャムを添えたスコーンのセットが欠かさず含まれている。
食事並みのボリュームのアフタヌーン・ティー
「トラディショナル・アフタヌーン・ティー」は、次のような構成であることが一般的。
①サンドイッチ
普通の食パンを4分の1程度の幅に切った、細長い四角形であることが多い。パンは薄く、耳は切り取ってあるのが上流階級式。具は、これまた薄く切ったキュウリ、あるいは薄いハム+マスタード少々、ゆで卵のみじん切りのマヨネーズあえ、ローストビーフ、ツナ、薄いスモークサーモンなど。
②スコーン
クロテッド・クリームとストロベリージャム(ラズベリージャムの場合もあり)が添えられているのがおきまり。ナイフで水平に2つに分け、口に入れる分のみにクロテッド・クリームとジャムをのせ、指で上品に食すのが正式とのこと。
③ケーキ
サンドイッチなど、甘くないものを先に食べ、スコーン、ケーキはその後で食べるのが正しいエチケット。しかし、現在では、温めたスコーンが冷めないようにスコーンから食べることを薦められることもあるほか、堅苦しいことは言わずに、好きなものから食べればよしとする意見も聞かれる。どれだけ「気取って」食べたいか、で決めれば良さそうだ。
④紅茶
銀のポットから、薄く繊細かつ美しい陶磁器のカップに注ぐのが理想。ミルクを入れる習慣は17世紀後半ごろにフランスで始まり、それが英国に伝わったとされている。行儀作法を教える学校の中には、紅茶→砂糖(好みによる)→ミルクの順が正しいと断言するところもあるというが、お好みでご判断を。レモン・ティーを所望する場合、ミルクは入れないこと!
紅茶の主要産地とお勧めの飲み方
紅茶名 | 産地 | お勧めの飲み方 |
---|---|---|
ダージリン Darjeeling |
インドのダージリン | 香りの良さで知られる。香りを生かすならストレート。 ミルクティーでもミルク少なめで。ブランデーを落としてもいい。 |
アッサム Assam |
インドのアッサム | 濃厚なコクがある。ミルクティーにぴったり。 |
ニルギリ Nilgiri |
インドのガッツ山脈 | マイルドな風味で、レモンでもミルクでもあう。 |
ウバ Uva |
スリランカのウバ | セイロン紅茶の名称で親しまれるスリランカ産紅茶の中でも、カップのふちに現れるゴールデンリングで知られるのはウバの上級品。ミルクとあう。 |
ジャワ Java |
インドネシアのジャワ | ややコクに欠ける分、ストレート、またアイスティーに向く。 |
ケニア Kenya |
ケニアのマウントケニア山麓 | コクと新鮮な香りが特徴。ストレート、レモンティー、ミルクティーとオールマイティーに楽しめる。 |
キーモン Keemun |
中国の安徽省 | スモーキーな香りは、ストレートに向くが、ミルクもあう。 |
ラプサンスーチョン Lapsang Souchong |
中国の福建省、崇安省 | 漢字では拉普山小種で、ラプ山の小さな植物という意味。好き嫌いの分かれる薬臭いような独特の香りがある。スパイシーな料理にあう。 |
紅茶の等級
●紅茶の等級は、紅茶の質ではなく、茶葉の大きさを表すもの。大きいほど高価で、大きい方から、
茶葉がそのまま……ペコー(Pと表される)
ちぎれている……ブロークン・ペコー(BP)
細かく切れている……ファイニング(F)
もっと細かい……ダスト(D) の順になる。
オレンジ・ペコー(OP)はオレンジ色の芯芽が含まれるもので、これにもBOP(ブロークン・オレンジ・ペコー)など、大きさが分かる表示がなされる。
●どこまでがブロークンで、どこからファイニングかなどの表示基準は、メーカーによりまちまち。葉の大きさで、お湯を入れてからお茶が出るまでの時間に差が出ることから、同じ大きさの茶葉で製品を作る必要があるため、メーカー内で独自の基準を設けているという。
●等級とは別に製法もお茶の出る時間に影響する。オーソドックスと呼ばれる従来の製法に対して、CTCと呼ばれる近代の製法がある。クラッシュ、ティアー、カールの頭文字をとったこの製法は、文字通り、つぶして、引き裂き、丸めるようにして、細かい茶葉を作るもので、ティーバッグ用の製品などに用いられる。
週刊ジャーニー No.1308(2023年9月14日)掲載