献立に困ったらCook Buzz
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© Hugo Burnand/Buckingham Palace

●サバイバー●取材・執筆/名取 由恵・本誌編集部

■ チャールズ3世が頭上に王冠を戴く伝統的な儀式が、いよいよ5月6日(土)にロンドンのウェストミンスター寺院で行われる。今号では、目前に控えた英国における今年最大のイベントに焦点を当てたい。

英国(イングランド)で初めて戴冠式を行ったのは、現在の英王室の開祖となったウィリアム征服王ことウィリアム1世(在位1066〜87年)といわれる。ヘイスティングスの戦いでアングロ・サクソン王ハロルド2世を破ったフランスのノルマンディー公ギヨームが、1066年12月25日にウェストミンスター寺院で戴冠式を行い、イングランド王ウィリアム1世として即位した。そもそもウェストミンスター寺院は、アングロ・サクソンの最後の正式なる王、エドワード懺悔王が建造し、死後に埋葬された場所だ。王亡き後、王位を簒奪したハロルドを倒したウィリアム1世が、エドワード懺悔王の眠る同所で敬意を表し戴冠して以来、1000年近くにわたり、新しい君主が即位するたびにウェストミンスター寺院で儀式を開いており、式の内容は今もほぼ変わっていない。

チャールズ3世は、この寺院で戴冠する40人目の君主にあたる。エリザベス女王が崩御した昨年9月8日に王位に就き、同10日に国王として宣言されたが、それから約8ヵ月のあいだ「ゴールデンオーブ作戦」というコードネームで準備が進められてきた。70年前の1953年6月2日に行われたエリザベス女王の戴冠式には世界各国から8000人が参列したが、今回はそれよりも規模が縮小され、出席者は3000人程度になるという。また、注目されていたハリー王子は参列するものの、メガン妃は欠席すると伝えられている。

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戴冠式の流れだが、いくつかのステージに分かれている。① The Recognition(レコグニション/承認の儀):カンタベリー大主教が、戴冠の椅子(コロネーション・チェア)の横に立った国王を「君主」として紹介。列席者たちが「God Save the King(神よ、国王を救いたまえ)」と応じ、トランペットが鳴らされる。② The Oath(オース/宣誓の儀):国王が英国国教会の信仰と法律を守る誓いを立てる。③ The Anointing(アノインティング/塗油の儀):国王が身にまとうローブが外され、戴冠の椅子に着席。カンタベリー大主教より、王の頭、胸、手に聖油が塗られる。④ The Investiture(インヴェスティチャー/認証の儀):レガリア(Regalia)と呼ばれる「即位の宝器」を身につけ、カンタベリー大主教から聖エドワード王冠を授かる。⑤ The Enthronement and Homage(エンスローンメント&オマージュ/戴冠と忠誠の誓いの儀):王座に就いた国王が、王室の高位メンバーから膝をついて忠誠の誓いを受ける。ただし、今回はチャールズ国王の意向により、王室メンバーが膝まづくのは割愛されるとも伝えられている。また、カミラ王妃も同様に塗油(③)と王冠授与(④)を受ける。


注目したいのが、70年間もロンドン塔などに飾られていた「展示品」たちの活躍ぶりだ。歴史的な視点でいえば、地味だが戴冠の椅子の下に置かれる「スクーンの石(運命の石とも呼ばれる)」は要注目。かつて歴代のスコットランド王は、スクーン宮殿にあったこの石の上で戴冠式を行っていた。しかし、「スコットランド王の象徴」とされていたことから、1296年にイングランド王エドワード1世がスコットランドを侵攻した際に持ち去り、ウェストミンスター寺院で保管したのだ。700年の月日を経て1996年にスコットランドへ返還され、現在はエディンバラ城にあるが、そのスクーンの石が一時的にロンドンへ戻ってきて行われる初の戴冠式となる。

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さらに、「クラウン・ジュエル」として知られる戴冠用の煌びやかな宝器も見逃せない。④の認証の儀で使われる戴冠用王冠「聖エドワード王冠(St Edward's Crown)」は、エドワード懺悔王の王冠がモデル。オリジナルは共和制政治下の1649年に破壊されたが、王政復古後、1661年のチャールズ2世の戴冠式のためにつくり直された。重量はなんと約2キロ! ちなみに、戴冠式の最後やパレードで使われるのは、エリザベス女王の父ジョージ6世のためにつくられた「大英帝国王冠(The Imperial State Crown)」。また、カミラ王妃はエリザベス女王の祖母の「メアリー王妃の王冠(Queen Mary's Crown)」を戴く。そして権力を象徴し、世界で2番目に大きい530カラットのダイアモンドが眩い輝きを放つ「王笏(The Sovereign's Sceptre with Cross)」。戴冠式の間、国王の右手に置かれる黄金の「宝珠(The Sovereign's Orb)は、神から与えられた君主の権威を示す。

英国史にどのような新たな1ページが刻まれるのか、その目でぜひ確かめてほしい。

チャールズ3世ってどんな人?
新国王を知るための10のトリビア

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Q1: 学生時代、実は成績優秀だった?

A: 1967年にケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに入学。考古学と人類学を専攻したものの、2年目に専攻を歴史へ変更し、1971年に卒業した。学士号は2:2(中の下)だったが、実は大学へ進学し学位を取得した最初の英王室メンバーである。

Q2: 血液型は?

A: チャールズ国王の血液型はO型と伝えられている。ちなみに動物占いは、マイペースで自分の流儀を持った「狼」。

Q3: 魚派より肉派?

A: 朝食の定番は、私邸の庭で栽培しているプラムが入ったグラノーラ。また、大好物のひとつはマッシュルームのリゾットを添えたラム肉。

Q4: 晩酌がお好き?

A: 夕食の前に、必ずマティーニを飲むのが習慣。レシピは、ジンとドライベルモットの割合1:1に、レモンピールを加え、氷入りのグラスに注いだもの。

Q5: 実は健康志向??

A: オーガニック食品に強いこだわりを持ち、グロスターシャーにある私邸「ハイグローブ(Highgrove)」の農場で生産されたオーガニックフードを、1990年に「ダッチー・オリジナルズ(Duchy Originals)」として商品化。2010年からは大手スーパーと提携し、「ウェイトローズ・ダッチー・オーガニック」(写真左)にリブランディングした。

また、紅茶やビスケット、ジャムなどを中心とするオーガニック・ブランド「ハイグローブ」(同右)も設立。収益はチャリティ団体「プリンス・オブ・ウェールズ」財団へ寄付されている。

 

Q6: 語学が堪能?

A: 1969年7月1日、20歳のときにウェールズのカナーヴォン城での叙任式で「プリンス・オブ・ウェールズ」(皇太子)の称号を与えられたが、これに先立ち、ウェールズ大学アベリストウィス校(現アベリストウィス大学)に9週間留学してウェールズ語を学習。叙任式では、ウェールズ語と英語でスピーチした。

Q7: アレの操縦ができる!

A: 大学在学中に王立空軍で飛行操縦のレッスンを受け、1971年3月に空軍ジェット機のパイロット資格を取得。大学卒業後はダートマスの王立海軍学校へ通い、1971~75年まで海軍に在籍した。海軍退職時に支払われた退職金は£7400。

Q8: 音楽の才能も?

A: 幼少時からピアノ、トランペット、チェロを習い、大学では「トリニティ・カレッジ・オーケストラ」でチェロを演奏。今でもピアノ、チェロのほか、ギターも弾くことができる。また、17歳から作曲も行っている。

Q9: 児童書を書いていた!

A: 2021年にメガン妃が児童書を発売したが、実はチャールズ国王も1980年に「The Old Man of Lochnagar(ロッホナガーのおじいさん)」を出版。幼い頃に弟のアンドリュー王子とエドワード王子に話し聞かせていた自作の物語をもとにしており、後にチャールズ国王本人のナレーションによりアニメ化もしている。

Q10: 出産に立ち会った!?

A: 王宮で出産するのが王室の慣習だった中で、ダイアナ元妃は英王室メンバーで初めて病院で出産。チャールズ国王もこれまでの王室の掟を破り、息子2人の出産にしっかりと立ち会った。

祝賀イベントガイド

戴冠式が土曜日のため、振替休日で翌週月曜がバンクホリデーとなり、この週末は3連休となる。5日(金)、6日(土)のパブやバー、ナイトクラブの営業時間は「2時間の延長」が認められている。

5月6日(土)
  • チャールズ3世戴冠式
    The Coronation of King Charles III

    ● チャールズ3世とカミラ王妃は、戴冠式の前にバッキンガム宮殿からザ・マル、ホワイトホールを通って、ウェストミンスター寺院までの道のりを馬車に乗ってパレード(The King's Procession)。このときに乗るのは、エリザベス女王の在位60周年イベントのために製造された「ダイアモンド・ジュビリー・ステート・コーチ」(写真)。

    ● 戴冠式は午前11時スタート。ハイドパークやセント・ジェームズ・パークに、大型スクリーンが設置される。
    ● 戴冠式では、国王に付き添う4人の「キングズ・ページ・オブ・オナー」の1人を、ウィリアム皇太子夫妻の長男ジョージ王子(9)が務める。また、カミラ王妃の「ページ・オブ・オナー」は自身の孫たちが務める。
    ● 式典が終了した後、国王夫妻はバッキンガム宮殿までの道のりを、今度は歴代の戴冠式で使用されてきた「ゴールド・ステート・コーチ」(写真下)に乗ってパレード(The Coronation Procession)。一般客からの祝賀を受ける。
    往路と同じ約2キロの道のりで、これはエリザベス女王の戴冠式での8キロに及ぶパレードと比較すると4分の1に短縮されている。
    ● バッキンガム宮殿に戻った後、国王夫妻は王室メンバーとともにバッキンガム宮殿のバルコニーに登場。伝統のフライパスト(儀礼飛行)が披露される。

     

5月7日(日)
  • ウィンザー城での野外コンサート&レーザーライトショー
    The Coronation Concert at Windsor Castle
    © Diliff

    ● ウィンザー城のガーデンで「コロネーション・コンサート」を開催。テイク・ザット、ケイティ・ペリー、ライオネル・リッチー、アンドレア・ボチェッリなど、世界のスーパースターたちの出演が予定されている。公演の模様はBBCで放送される。また、コンサート中にはレーザー、プロジェクション・マッピング、ドローンなどを使った光のショーが英国各地で行われる。

  • コロネーション・ビッグランチ
    The Coronation Big Lunch

    ● 家族、友人、隣人、コミュニティなどが集まり、料理や飲み物を持ち寄るストリートパーティーのほか、アフタヌーンティー、バーベキュー、ランチなどをみんなで楽しむイベント。公園や庭でのピクニックなど、自由に企画しよう。ビッグランチに合わせて、国王夫妻が祝賀料理として選んだホウレンソウとソラマメ、タラゴンの「コロネーション・キッシュ」のレシピも発表されている。

5月8日(月・祝)
  • ビッグ・ヘルプアウト
    The Big Help Out

    ● ボランティア団体、慈善団体などを中心に、地元コミュニティでボランティア活動を行い、恵まれない人、困っている人、支援が必要な人にサポートを行うイベント。

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週刊ジャーニー No.1288(2023年4月27日)掲載