■念願の自宅を手に入れたあと、いろいろ手を加えたいと思っても、DIY(日曜大工)でやりきる自信がない、あるいは、そもそもDIYレベルでは済まない場合、どうするか。
誰に、そしてどのように頼めばいいのかまったく検討がつかないという人は少なくないことだろう。
今号では失敗談を含めて、具体的なヒントをご紹介することにしたい。

●サバイバー●取材・執筆/運天 清美・本誌編集部

「日本人らしさ」を脇にどけて取り組みたいリノベーション

スーパーのレジで「いらっしゃいませ」とお辞儀つきで迎えてもらえる。家電を買う際、商品について店員に質問すると、詳しい答えが返ってくる。また、銀行などでは窓口でかなりの時間を取られたとしても、疑問点に懇切丁寧に説明をしてくれるなど、こちらがいつも「お客様」気分でいられる、我が日本。

一方の英国。筆者が英国に住み始めて25年余りになるが、その在英期間中の経験を振り返ってみれば、フレンドリーな人も多い反面、ニコリともせず、スキャン後の商品を利用客の都合など気にすることなくバンバンよこしてくるスーパーのレジ係や、専門的知識のない家電売り場の店員、アクビを噛み殺しながら機械的に手続きをする銀行の窓口担当者など―もう慣れてしまったものの、日本が恋しくなることもしばしばである。

英国のスーパーや家電売り場、銀行などで、接客態度に不満があったとしても用さえたせれば「まあ、そんなもん」とスルーすることもできる。が、例えば多額の金銭が発生する家のリノベーションとなれば話は別だろう。また、どれほど長く英国で暮らそうと、なかなか変えることのできない「日本人らしさ」=日本人によくある気質(「奥ゆかしさ」「引っ込み思案」「内弁慶」などの要素)を脇にどけ、自己主張をきちんとする必要がありそうだ。

本号では、知人3人のケースをとりあげ、家のリノベーション(リフォーム)に関する体験談を紹介したい。失敗したポイントや逆に成功だったと思えるポイントを、リノベーションの際に気をつけたいこととして、参考にしていただければ幸いである。

なお、3人は同じ学校に子供を通わせた筆者の「ママ友」で、3人ともロンドン在住。外国籍のご主人(あるいは元ご主人)と持ち家(またはフラット)がある。

苦労したAさんのケース

念願の我が家を手に入れた日本人女性Aさん。英国では、古い家を購入しリノベーションをする人が多いが、ご主人も英国籍ではないAさんは、英国の実情に乏しかったと振り返る。購入時、Aさん夫婦は、気になる点はあるものの差し迫ったリノベーションが必要のない物件を選択。ただ、大規模なリノベーションをしない代わりに、もう少しダイニングのスペースが欲しい、また、庭を眺めながら朝食をとりたいとの思いからコンサバトリーを作ることにした。

①業者選び

家に届くチラシなどの広告の中から一番安い所に頼むことを決断。その業者に連絡をとって打ち合わせをスタート。コンサバトリーのスタイルや日程など工事に必要な件を決めていき、最後に、支払いについては、工事着工前、途中、終了時の3回に分けることで合意した。


②実際の工事

2週間の予定で工事は計画通りに進み、完了まであと少しと言う段階で、最終の支払いを打診された。残った作業は、コンサバトリーの屋根の部分と、周りのセメント部分の仕上げ、それと作業で出た瓦礫の撤去など。Aさん夫婦は、コンサバトリーもほぼ出来上がり、業者とも顔見知りになったことから、完了を待たず軽い気持ちで最終の支払いをしてしまった。

③悪夢の事後処理

ところが、最後の支払いを完了した後、業者は作業に現れず、催促の電話をしても居留守をつかわれたり、工事期日を約束してもドタキャンされたりと、悪夢のような展開となってしまった。困り果てたAさん夫妻は、少々遠かったが、業者の会社まで出向き直談判をして、やっと仕上げてもらったという。

ここが問題だった!

Aさんのような支払いに関するトラブルの例は後を絶たない。Aさん同様3回に分けて支払うと約束した場合でも、その支払いの額については最初と2回目に重点が置かれ、最終の支払いが少額だったため、業者が仕上げをせずに逃げてしまったケースなどもある。

教訓1

支払いは複数回に分けるのが鉄則。分け方は等分、できれば最終の支払いに重点を置くのが理想。また、その最終支払いは工事が完了し、瓦礫の撤去など全て終わるまでしないこと!

まずまず成功だったBさんのケース

娘さんの独立を機に、第二の人生をと離婚したBさん。財産分与で購入したフラットには、古い電気ヒーターしかなかった。一冬をこれで過ごしたBさんは、電気ヒーターの効率の悪さと、電気代の高さからセントラル・ヒーティング設置を決意した。

①費用の目安をリサーチ

●Aさんをはじめ、いくつかの体験談を聞いていたBさん。Googleなどでリノベーションに関するリサーチを始めた。
●まずは、セントラル・ヒーティング設置にかかる予算の目安を知ることができるサイト「Checkatrade」で確認。
●このサイトでは、その時点での一般的な設置価格が把握できる。業者が提示する見積もりが妥当かどうかを判断する目安として有益。Bさんが考えているのが、「Gas system」という仕事であることや、設置の場合、安くて4,500ポンド、高くて6,000ポンド、平均で5,250ポンドぐらいであることが分かった。もちろん家のサイズや、部屋数で値段が異なるだろうが、大体このぐらいという指標になる。

②業者探し―まずは口コミ

●次は業者探し。馴染みのビルダーや知り合いが紹介してくれるガス・エンジニアに依頼できるのが望ましかったが、Bさんの場合は、あてにしていたエンジニアが多忙で6ヵ月先まで待たなければならないことが判明。冬が来る前に工事を終えたかったBさんは、仕方なく、①で予算の目安をチェックしたサイト「Checkatrade」で業者探しを始めた。
●サイトは至って簡単で、仕事内容を項目から選択していくシステム。Bさんの場合は、「Central Heating」「Gas」「Installation」の順にクリックしていくと、Bさん宅があるエリアに拠点を置く会社のリストが出てくる。そのリストには、名前や電話番号、業務内容に加えてレビューがついている。

③業者探し―サイトを駆使

●Bさんは、レビューを参考に、目ぼしい会社を選び、さらにその会社の評判を探ることにした。ビルダーで痛い目に遭ったAさんの話から、慎重には慎重を重ねることが必要と考えていたからだ。
●まずは、会社が正式に登録されているかどうかをチェック。
www.gov.uk/get-information-about-a-company
●この政府の登記サイトには、会社が登録された日付と事業内容、代表者、所在地などが掲載されている。Bさんがチェックしたところ、創業したばかりの会社や、長くビジネスを続けている会社のほか、中にはなぜか1年おきに会社名を変えている怪しげな会社もあった。
●さらに、会社の評判を調べるサイトとしてよく知られている「trustpilot」も活用。

④業者の絞り込み

●Bさんにとってこの改装は、結構大きなプロジェクト。できれば、4〜5社から見積もりをもらうつもりで業者選びを進めた。だが、「Checkatrade」では2業者しか探すことができなかったので、類似のサイト「myBuilders.com」であと3業者を選び出した。
●「myBuilders.com」のサイトも、まずは仕事内容をリストから選んでいくのだが、自分の考えているプロジェクトについてタイトルをつけ、仕事内容を簡潔に書いて投稿し、その仕事を引き受けたいと手を挙げた業者と連絡をとりあう仕組み。興味をもってもらえるよう、業者を惹きつけるキャッチーなタイトルと、分かり易い仕事内容を書くようにとのアドバイスが記されていた。他の人の投稿を参考になんとか文章を綴り、その後、名前やメールアドレスなどの必要事項を加えて投稿。
●興味を示してくれた複数の会社がすぐに名乗り出て、メールで知らせてきた。ここでも同じく、会社の評判をチェックし、業者の絞り込みを実行。

※「myBuilders.com」は、同サイト内にガス・エンジニアを選ぶ際の注意事項があり、「とても役に立った」というBさん。ここにその注意事項を記しておく。
1)「Gas Safe-registered」の証明を持っているか確認。
2)経験豊富か確認。
3)選び出したエンジニア全員から見積もりをもらうこと。
4)工事が始まる前に全額支払いを要求する会社には依頼しないこと。
5)交渉の際は、弱気になってはいけない。
6)その会社の誰が実際に仕事を担当するのか確認。

同サイトでは、この後1)~6)のそれぞれに関して、さらに細かい注意事項も開示されている。

⑤業者と面談・見積もり依頼

●5社を選んだBさんは、それぞれとアポをとりつけ、家に来てもらい、工事の内容を話し、見積もりを頼んだ。その際に気をつけたのは、見積もりには必ず工事の詳細と金額を合わせて記してもらうということ。後々のトラブルを避けるためだ。そして、支払い方法もしっかり話し合った。
●その中から選んだのは、話していて感じが良かったJさんの会社。見積もりとしては一番安い業者ではなかったが、説明する話し方や、こちらの意見も聞きながら経験を踏まえたアドバイスをしてくれるところに好感が持てたと話すBさん。そして何より、家に入る際、Bさんがお願いする前に「靴を脱ぎましょうか」と聞いてくれたのも決め手の一つになったという。

⑥実際の工事

●工事が始まってからは、事前に約束してくれたとおり、家をなるべく汚さないように食器棚や床にプロテクションを施してくれた=写真。
●4日間続いた工事だったが、夕方切り上げる際には、毎回工具や材料を片付け、掃除をして帰っていったという。Bさんは、もちろん最高のフィードバックをサイトに載せた。

失敗したAさんたちの話をふまえ、各種サイトを駆使し理想的な業者に出会ったBさん。英語でのやり取りに関しても、十分な情報を持っていれば、聞き慣れない単語が出てきたとしても、たとえ流暢に説明できなくても、要望を自信を持って伝えられそうだ。

ここが良かった!

失敗したAさんたちの話をふまえ、各種サイトを駆使し理想的な業者に出会ったBさん。英語でのやり取りに関しても、十分な情報を持っていれば、聞き慣れない単語が出てきたとしても、たとえ流暢に説明できなくても、要望を自信を持って伝えられそうだ。

教訓2

「こちらが言わなくてもやってくれるだろう」という都合のいいことはまず起こらないと肝に銘じ、念には念をいれること。面倒がらずにリサーチし、そして、自信を持って交渉する準備を怠らないことが成功につながる。

奮闘したCさんのケース

一軒家を上下で二分したメゾネット式フラットの2階に住んでいるCさん。階下は賃貸物件で住人はテナント、その大家は別物件に在住。Cさんが改修の必要を感じたのは、階下と共有する駐車場部分。古くなり、所々に割れ目ができ、足をとられ転んでしまいそうな危ない状態だった。Cさんのご主人は、仕事に忙しく、改修の件はCさんがメインとなって進めることになった。

①まずは階下の大家に連絡
リノベーション前のDriving Pavement

●階下の大家は、この建物のフリー・ホールダー(地主)でCさんたちも地代を支払っていたが、やり取りはメールのみで会ったことは一度もなかった。駐車場部分の改修について、階下の住人から大家に連絡してもらったが、色良い返事はもらえなかった。
●それなら、自分たちの駐車場部分だけでも改修しようと、知り合いのビルダーに、いくらぐらいかかるのかを聞き、大体の予算を組んでみた。

②新オーナーと相談

●そんな時、階下が売りに出され、ディベロッパーが購入したとフリーホールダーである大家がメールで知らせてきた。「今後、駐車場の改修については、(新オーナである)ディベロッパーと相談してくれ」という。
●売却後の階下は、テナントの退居後、直ぐに全面改装がスタート。駐車場部分の改修についても、共同で行うということになった。ただ、ディベロッパーは、自分が使っている仲介業者に頼むつもりで、改修にかかる予定費用も提示、それを折半しようと提案してきた。

③新オーナーとのバトル

●駐車場部分は共有しているが、駐車場から階下住居に続く階段部分などは、Cさんには関係がないスペース。リース契約にあるCさんの居住部分を示す図面に入っていない、そうしたスペースも改修の対象になった。「その分も払わなければならないの?」と納得のいかないCさんの戦いが始まった。
●Cさんは、まずリース契約にある図面を印刷し、費用の折半は不公平であると主張。さらに、知り合いのビルダーからの見積もりを提示し、これ以上は出せないと交渉した。強気の交渉はニガテなCさんだったが、多額の費用がかかっているため、勇気が出たという。結果的に、納得のいく金額で折り合いがついた。知り合いのビルダーに大体の見積もりを出してもらっていたのがよかったと振り返る。それがなかったら、言いなりになっていたかもと話す。

④予想外のアスベストス出現

●料金面では合意できたものの、スンナリとはいかなかった。駐車場のセメントを掘り返したところ、なんとアスベストスが出てきてしまい、その作業をする業者を別に頼まなくてはならないというオマケがついてしまったのだった。
●1920年代から、安くて丈夫、耐熱性などに優れているとして多くの建設現場で使われていたアスベストス。だが、発がん性物質が含まれているということで1999年に全面使用禁止になった。それが、駐車場の底上げのための盛り土の中に含まれていた模様。自分の所有物件・スペースからアスベストスが出て来るのは、本当に運が悪い。家を買う際、事前にサーベイ(住宅検査)が行われるので、問題がある場合は購入前に知らされるはず。それだけに、家を買ったばかりのディベロッパーにとっても青天の霹靂だったようだ。
●アスベストスの撤去は、専門業者が全身完全防護の装備で行う。Cさんは、ディベロッパーとは別に自分で検索して探した3業者に、撤去の場合の見積もりを出してもらった。ディベロッパーの提示した値段と自分が得た情報をすり合わせ、一番安い業者に作業を頼んだという。

ここが良かった!

Aさんの話を聞いていたおかげで、業者やディベロッパーに支払う場合も、3度に等分に分けて振り込んだCさん。また、相手がディベロッパーなど不動産のプロであったとしても、言いなりにならず、おかしいと思ったらあきらめずに交渉する勇気が必要だと痛感したという。

教訓3

改修に関しては同じ物件にかかわる他人と共同であたらなけばならないケースもある。必ず自分で業者を探し、見積もりをもらっておくこと。大体のことが分かっていれば、改修費用を分ける際など、対応時の心の準備ができ、納得するまで交渉することができる。

週刊ジャーニー No.1264(2022年11月3日)掲載