工場潜入ルポ

 スティルトンを語るには、その製造過程も確かめなくては! ということで、取材班はスティルトンを生産する6ヵ所の工場のうちのひとつ、「コルストン・バセット・デアリー」を訪れることになった。
チーズ製造所の朝はきわめて早い。デアリー・マネージャーを務めるビリー・キヴァン氏から「チーズ作りの様子を見たいのなら、遅くても朝の9時には来て欲しい」という要請を受け、取材班は早朝にロンドンを出発、車でノッティンガムシャーの現地に向かった。 

 
地元の農場から搾乳された牛乳が到着、有害なバクテリアの繁殖を防ぐためにミルク・タンクで低温殺菌した後、30℃に冷まして、チーズ・バットに移す。 
 
 
 
 
 
 
 

 
スターターと呼ばれる培養乳酸菌(カルチャー)と青カビ(ペニシリウム・ロックフォルティ)を牛乳に加え、さらにチーズを固めるためにレンネットと呼ばれる、羊の胃袋から抽出した凝乳酵素を入れてかきまぜる。  

 
チーズのもととなる固まり(カード)ができる。それをナイフで、まず垂直方向に切り、さらに水平方向に切って、インゲン豆大になるまで切り分ける。 
 
 
 
 
 
 
 

 ④ 
数時間経過すると、下部にカードが沈み、濁った水分であるホエイ(乳清)と分離する。午後にはカードを手ですくい、カード皿に移す。ホエイは豚の飼料となる。

 
 

 ⑤ 
 翌朝、カードの水気を切り、皿に量り分ける。カードに塩を加えて、よくかき混ぜてから、円筒状型に入れる。 
 
 
 

 ⑥ 
カードを入れた型を棚にのせる。容器には小さな穴が開いており、チーズ自体の重みで余分な水分がでるようになっている。5日の間、1日に数回、型をひっくり返して、水分を取り除いていく。 
 
 
 

 ⑦ 
およそ5日後、十分に固くなったチーズを容器から出して、キッチンナイフでチーズの表面を磨き、でこぼこや穴を塞ぐ。チーズはニュー・チーズ室に移され、そこでおよそ3週間を過ごす。表面を乾燥させる間、チーズは毎日ひっくり返される。 
 
 

 ⑧ 
熟成室に移されたチーズは、毎週3回ひっくり返される。スティルトン特有の静脈のような青い模様が表面から内部に向かって形成されていく。 
 
 
 

 ⑨ 
 4―6週間経過すると、チーズ本体にステンレスの針で穴が開けられる。チーズ本体に空気が入ることにより、さらに青カビの熟成を進めさせる。
 
 
 
 
 
 
 
 

 ⑩ 
1週間後、再びステンレスの針でチーズに穴を開け、さらに熟成。 


 
 

 ⑪ 
  およそ3週間後、ひとつひとつのチーズの青カビの模様の具合、匂い、風味をチェック。すべてに合格した製品のみが出荷される。 
 
 

 ⑫ 
出荷を待つばかりのチーズたち。 


 
 

 

品質にあくまでこだわる
コルストン・バセット・デアリー
Colston Bassett Diary

 前述のとおり、PDOによってスティルトンの製造が認可されている6ヵ所のうちのひとつが、この「コルストン・バセット・デアリー」。ノッティンガムシャーとレスターシャーの境に位置する、コルストン・バセット村にある。
1913年に地元の牛乳製造者や地元住民のグループが共同出資し、共同組合の形でスタート。その形態は現在も変わっていない。当初、搾乳業者として参加していた18社は、今では4社のみとなってしまったが、牛乳そのものの生産量は以前よりも多くなっているという。
第二次世界大戦中はチェダーチーズも製造していたが、この時期を除けば、スティルトンの生産に専念しており、現在はブルー・スティルトン、ホワイト・スティルトン、シュロップシャー・ブルーチーズ作りに情熱を傾けている。
 製造過程や機械などは近代化しているものの、製造技術そのものは限りなく昔に近い方法に保たれている。牛乳にクリームを混ぜて、スティルトンの脂肪分を調整する業者も中にはあるとのことだが、当社では、乳牛に与える飼料を変えるという昔ながらの方法で脂肪分を調整している。
当社のスティルトンは他社製品と比較して高価ではあるが、ハンドメイドで高いクオリティを保っているのが特徴。グレード分けはせず、一定のクオリティに達しない製品は販売しないというほど、その品質管理は徹底している。
 エリザベス女王も隠れたファンという同社のスティルトンは、英国各地のチーズ専門店、高級食料品店で入手できる。主な卸先はニールズ・ヤード・デアリーで、国外への輸出業務もニールズ・ヤード・デアリーが一括して行っているとのこと。また、近日中には英大手スーパー・チェーン「マークス&スペンサー」の一部店舗での販売がスタートするという。
コルストン・バセットのチーズ製造工場には、隣接して直営店もあり。自分が欲しいだけのスティルトンを量り売りしてくれるので、とても便利。直営店だけあって、ロンドンの小売店と比べると値段も驚くほど安い。現地にわざわざ出かけて買うだけの価値はある。

Colston Bassett Dairy Ltd.
Harby Lane, Colston Bassett,
Nottinghamshire NG12 3FN
Tel: 01949 81322
www.colstonbassettdairy.com

直営店営業時間
月ー金 9:00 - 12:30 & 13:30 - 16:00
土 9:00 - 11:30 (休日・祝日) ※工場の一般見学は不可