①1950年代のホームの様子。女性スタッフも増えてきた。
②1930年代、飼えなくなってしまった犬との別れの寂しさに、涙が止まらない女の子
③1896年、狂犬病の拡大を防ぐため、1年に42500匹を保護した。  
                               
 

④昨年10月に新館ができる前の猫用保護スペース(cattery)だった建物。現在も使われている。
⑤現在のバタシー・ドッグズ&キャッツ・ホームにて「メアリー・ティールビー・ビル」と名づけられた建物。迷い犬の受付ビルとなっており、犬が見つからない飼い主や迷い犬を見つけた人がここを訪れる。
⑥子犬を抱く搬送車のドライバー。   
⑦1911年、ロンドン警察が保護した迷い犬の引き取りを開始した時の様子。                  
 
                               
 
 

 

 

 動物保護施設「バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム」は、野良犬、迷い犬(全体の70~80%を占める)や、諸事情により飼い主と共に住めなくなった犬、猫を収容している。
 その目的は、行き場のなくなった犬に新たな飼い主が見つかるまで、または元の飼い主が引き取りにくるまで保護する「一時預かり所」。日本の保健所や動物愛護センターでは、新しい飼い主が現れなかった場合、持ち込まれた動物たちは数日~1週間で『処分』されてしまう。その数は年間数十万匹にものぼるという痛ましい現実がある。しかし、同施設では、期間を決めず、保護が必要である限り世話を続ける(一部例外あり。次頁『獰猛な犬の増加で、安楽死増える』のコラム参照)。今までの最長記録は3年とのこと。
 バタシーのほか、ロンドン南東の郊外ケント地区(1999年~)とロンドン西の郊外オールド・ウィンザー地区(2001年~)にも施設ができ、これら3つの施設で常時600匹の犬と250匹の猫を保護している(バタシーのみでは、犬400匹、猫100匹)。2009年は1年間で1万600匹(うち犬9000匹)の犬猫が保護され、また、犬約1万匹、猫約3500匹が新しい飼い主の元へと引き取られた。1860年からの受け入れた犬猫の合計は、300万匹を越えるという。
 正社員約300人、ボランティア約400人。年間1300万ポンド(バタシーのみ)の運営費用などはすべて寄付金でまかなわれている。

 

   

持ち込まれた犬猫は…

 

施設にやってきた犬猫たちは、グルーマー(ペットの美容師)により十分なケアをほどこされた後、獣医により病気や怪我の有無を確かめる診察、予防接種を受ける。捨てられた、いじめられたといったトラウマを持ち、むやみに吠える、暴れるといった癖を持った犬猫は、施設に常駐するビヘイビアリスト(動物行動学などの見地から犬猫、飼い主の指導を行う専門家)が対応。それらの問題が解決されてから、飼い犬、飼い猫に戻る日を待つことになる。犬猫の平均滞在日数は共に1ヵ月に満たないとのこと。

 

 飼い主候補者にも厳しいチェック

 

バタシー出身の犬猫たちは、エルトン・ジョン、リリー・アレンなどセレブリティにも人気。
同施設による飼い主候補者チェックの徹底ぶりは有名な話。そのため、「バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム」出身の犬猫を飼えることは1つのステータスとされている。もちろん、引き取る犬猫の種類により条件は異なるが、①十分なスペースがあるか、②家を空けがちではないか、③上階に住んでいないか、④持ち家か、貸家か(大家の許可を得ているか)、⑤経済的に面倒を見られるかなどが細かく調べられる。必要とあれば家庭訪問を行うこともあるという。これは、欲しい人に無条件に犬猫を引き渡すと、結局飼えずにその犬猫たちがまた施設に戻ってきてしまうことを防ぐためだ。

 

 

 

犬を引き取りたい場合

同施設から犬猫を引き取りたいと考えた場合、まずは同施設のホームページのリホーム(rehome)専用サイトから、もしくは施設に直接足を運んで、各人のライフスタイルや家族構成などについての登録を行う。
施設で各犬猫の保護スペースの入口に備えられた彼らの『自己紹介』カードを参考にしながら見て回り、飼いたい犬猫の候補を決める。リホーマーたちによる面接、チェックなどを受け、OKが出れば引き取り決定。年齢、サイズ、犬種、血統書の有無にかかわらず、費用は一律で犬なら1匹£105、猫は£65(マイクロチップ埋め込み費用など込)。詳しくはホームページなどでチェックできる。

自己紹介カードには、「I am~」と一人称が使われていたり、スタッフからの愛情が感じられるコメントがそえられていたり、温かみにあふれている。
 

 

150周年記念、New Cattery完成


New Catteryオープン記念式典でのカミラ夫人(中央)
昨年150周年を迎えた同施設では、女優、アマンダ・ホールデン司会によるバタシー・パワー・ステーションでの大規模な150周年記念イベントなど、様々な催しが行われた。

ガラス張りのネコ部屋。遊び道具も各種備えられている。
 中でも昨年10月には新しい猫の施設(cattery)が完成。そのオープン記念式典にはチャールズ皇太子の妃、カミラ夫人が訪れた。清潔感があり明るい雰囲気ただよう3階建ての施設には、抗菌が施されたガラス張りの猫部屋が90室ならぶ。おもちゃにじゃれて遊んだり、丸くなって眠ったり、のびのび過ごす猫たちの姿が見受けられる。


きわめてモダンなNew Cattery

獰猛な犬の増加で、安楽死増える

 

 避けられない諸事情により、2009年に同施設内の2815匹の犬が安楽死させられ、そのうちの1931匹は健康ではあるが、ペットとして飼うには獰猛過ぎることが原因だったと「デイリー・テレグラフ」紙が報じた。
 問題となっているのはスタッフォードシャー・ブルテリアという犬種=写真。英国では近年この攻撃的な性格を持つ犬を飼うことが、若者を中心に流行となっている。しかし、多くの飼い主があえて獰猛に育てた挙句、育てきれなくなり、捨ててしまうことが多いのだという。
 1996年以来、同施設にこの種類の犬が連れてこられる件数が85%も増加。現在50%以上がブル(ブルドッグ)系、そのうち43%はスタッフォードシャ-・ブルテリアかその混血種だという。取材時に、施設の犬用保護スペースの中で圧倒的に多くみかけたのも、この犬種とおぼしき外見の犬たちだった。

 

バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム年表

【1860年】

メアリー・ティールビー により、犬の一時預かり施設「Home for Lost and Starving Dogs」設立

【1862年】

チャールズ・ディケンズ、施設について記す

【1871年】

施設が現在のバタシーに移転し、「Battersea  Dogs Home」に

【1883年】

猫の受け入れ開始
ヴィクトリア女王の孫、アリス王女。父親のテリア(バタシー・ドッグ)のスキッピーと

【1885年】

ヴィクトリア女王、パトロンに

【1940年】

戦争により爆弾の直撃を受けるもスタッフ、動物たちともに犠牲者なし

【1956年】

エリザベス女王、パトロンに

【2002年】

「Battersea Dogs & Cats Home」に名称変更

【2010年】

創設150年を迎える

 


1940年、被弾直後のホーム

 


1956年、ホームのパトロンとなったエリザベス女王(中央)

 

トラベル・インフォメーション  【2011年1月31日現在】

Battersea Dogs & Cats Home
4 Battersea Park Road, London
SW8 4AA
Tel: 020 7622 3626
www.battersea.org.uk
 


   見学可能時間    
月-金 午後1時~4時
土日・祝 午前10時30分~午後4時
※犬の引き取りは午前10時30分~午後6時、ショップは午前10時30分~午後4時

 

   入場料    
犬猫を飼いたい人以外にも同施設は一般に開放されており、年間10万人以上が訪れている。ぜひ一度見学してみてはいかがだろうか。
大人   (18歳以上)£2
子供/シニア (60歳以上) £1


施設内のショップでは、オリジナル・グッズほか、150周年を記念したグッズも販売中。