ひっかかるのは旅行者ばかりじゃない! の詐欺犯罪

 

【旅行者・短期滞在者向け】

スリに狙われることの多い日本人は、多額の現金、キャッシュ・カードを持っているとして、残念ながら詐欺犯罪のターゲットにもなりやすいのが実情だ。

本物の警官が「サイフを見せなさい」ということは100%ありえないと、日本から来英予定の肉親、知人、すべての方々にくれぐれもよく言っておくこと。ましてや、暗証番号は、どんな状況であろうと誰にも言ってはいけない!これは旅行者だけでなく、在住者にも同じことがいえる。

 

【在住者向け】

最近は、Eメールを使った、「振り込め詐欺」のほか、税務署からの還付金があるように装い、振り込みのために口座の詳細を知らせるよう仕向け、個人情報を盗む手口など、インターネット関連の手口が急増している。また、一時期、キングズ・クロス駅や大英博物館など、日本人もよく訪れる場所で、多く見られた「エジンバラから来た男」による寸借詐欺も、完全になくなったわけではないという。念のために、事例をご紹介しておこう。

「お金をすられた」「カバンを盗られた」ので助けてほしい、といわれた場合、同情してしまうかもしれないが、最寄の警察署へ行くよう提案すること。もし、最寄の警察署が思い浮かばないなら、「サヴィル・ローにある警察署」で十分。実際、本当に困っている人には、警察はお金を貸すとのこと。この申し出を断るようなら、相手は寸借詐欺!

 

ウィンブルドン在住 C介さん(28歳)のケース
 6ヵ月の短期留学生として英語を学びにロンドンにやってきたC介さんは、渡英してきてからまだ1ヵ月。週末を迎えるたびに、ロンドンの名所をたずねて精力的に出掛けていた。そんな週末のある日、ロンドン・アイからテート・モダンに向かってテムズ河沿いを歩いていた時のこと。どこの国籍かはわからないが、白人系の男性がニコニコと近づいてきた。
 「おトクなレートで両替しませんか」
 その時、円建ての現金は持ち合わせておらず、両替することはできないとC介さんが一生懸命、その男性に説明していたところ、別の男性が足早に近づいてきた。
 「警察です。路上での両替行為は違法であることは知っていますか。身分証明書を見せなさい」
 私服ながら警官と名乗る男は、警察のバッジ(と、C介さんには見えた)を見せつつ、トランシーバーで誰かと交信した後、C介さんと両替屋の男性に向かって厳しい顔を向けた。パスポートもホームステイ先においてきたため、身分証明書となるようなものは何も持っていないとC介さんが告げると、
 「では、サイフを見せなさい。クレジット・カードを持っているなら、それが証明書の代わりになる」
 と警官に言われたC介さん。両替屋の男性が素直にサイフを警官に渡すのを見て、C介さんもそれにならった。ふたりのサイフをあらためながら、さらに警官はこう告げた。
 「クレジット・カードの暗証番号は?」
 両替屋の男性が、再び素直に暗証番号を口にしたため、C介さんもそれに続いて暗証番号を伝えた。
警官は納得した、という表情でサイフをC介さんと両替屋に返すと、立ち去ったのだった。
 両替屋もきまり悪そうにそそくさと、どこかに行ってしまい、C介さんひとりが残された。「ひどい目にあった…」と思ったものの、気を取り直してテート・モダンに向かったC介さんだったが、ショップで買い物をしようとして、クレジット・カードがないことを発見。あの警官がサイフをあらためた時、カードはサイフの中に戻したように見えたが、どうやらまんまと抜き取られていたらしい。
 翌月曜日、日本のクレジット・カード会社に連絡したところ、1000ポンド相当が既に使われた後だった。幸い、C介さんの場合は、旅行保険で損害は補償されたものの、お金が戻ってくるまでに約半年かかった。

 

ウェスト・ハムステッド在住 D子さん(32歳)のケース
 駐在員の妻として英国に住み始めて1年というD子さんは、友人とナショナル・ギャラリーに出掛けることにした。絵画の鑑賞後、リージェント・ストリートにある、日系店舗で買いたいものがあったため、トラファルガー広場から徒歩で向かうことにしたが、あいにく雨が降り出した。その日、家を出る時には晴れ間が見えていたため、油断して傘を置いてきてしまったD子さん。仕方なく、足早にリージェント・ストリートに急ぐしかなかった。こういう時に限って歩行者用信号も赤になるものだ。うらめしそうに空を見あげたD子さんに、誰かが傘を差し出してくれた。
 「よろしければ、そこまでご一緒にいかがですか」
 声の主を見ると、こざっぱりとした英国人男性だった。30代後半というところだろうか。「英国紳士」という言葉がD子さんの頭に浮かんだ。
 「リージェント・ストリートまでで十分です」と好意に甘えることにしたD子さんが、その紳士に「どちらへ?」とたずねると、その紳士は表情を暗くして、D子さんに相談事をもちかけた。
 「私はエジンバラ在住の建築家です。打ち合わせのためにロンドンに来たついでに、久しぶりにナショナル・ギャラリーに寄ったのですが、ついさっき、トイレでサイフなど貴重品の入ったカバンをとられてしまったのです。ナショナル・ギャラリーの警備員にも相手にしてもらえず、ギャラリーを出たところで見かけた警官に話しても力になってもらえず、途方にくれています。明日の朝一番で、別の大切なミーティングがあるので、どうしても今日中にエジンバラに帰らなければならないのですが…」
 紳士は本当に困っているという様子でさらに続けた。
 「100ポンドあれば、列車でエジンバラまで戻れます。貸して頂けませんか。これが私の名刺です。この電話番号まで、あなたの口座をお知らせくだされば、エジンバラからお返しします
 手持ちは50ポンドしかない、とD子さんがいうと、「片道の特別料金があるかもしれない。駅で聞いてみます」とその男性は安堵の色を顔に浮かべてそう答えた。リージェント・ストリートで、男性と別れたD子さんは「50ポンドしかなくて、申し訳なかったなー」と思ったという。
 しかし、翌日、名刺にある電話番号、携帯電話もつながらなかった。「だまされたー」ようやく、それを悟ったD子さんだったが、あまりに悔しくて、ご主人に話せずにいるという。