置き引き系犯罪が多発する 3大ホット・スポット
靴ショップ
カフェ
ATM(キャッシュマシーン)

 

【靴ショップ】

服を扱う小売店で、コートやジャケットを試着室以外で試している人もターゲットになりやすいとのことだが、さらに被害が集中するのが靴店。貴重品がつまったバッグを置いたまま、試し履きしつつ店内を歩き回るケースが多いためだ。置き引きの常習犯たちは、ターゲットと見定めた「エモノ」が、バッグを置いて歩き始めるまで根気強く待つ。私服警官も店の警備員も、現行犯でなければ手出しができないので、置き引き犯が動くまで、30分待機することもあるという。

靴の試着中、店員がバッグを見てくれているなどと考えるのは大きな誤り。また、自分のバッグを持ち歩くのは、店員や周りの人を信じていないようで失礼に映るのでは、といった考えも完全に捨てること。面倒でも、必ず腕にかけておくなど、一瞬たりとも肌身離さず持ち歩くのが基本中の基本。

 

【カフェ】

大手コーヒー・ショップ・チェーンの進出もあり、ロンドンではカフェの数が飛躍的に増えた。もともと多かったファストフードの店に加え、こうしたカフェが置き引き犯の格好の仕事場となっている。買ったばかりのブランド品を、袋ごと持っていかれるケースが見られるのもウェストエンドの特徴。

イスの背もたれと自分の背中の間にバッグを置くのは厳禁。小さなバッグならひざの上に、それがしづらい大きさのバッグや、買い物で手に入れた商品は、日本人女性の場合、行儀が悪いと抵抗があるかもしれないが足ではさんで座るのがベスト。また、携帯電話や音楽プレイヤーをカフェのテーブルに置いたまま、話し込むのも避けること。特に屋外のテーブルの場合、「英語が話せません。困っています。お金をめぐんでください」などと書かれた紙を見せられたり、突然、地図を広げられたりして、注意がそれた瞬間が危険。その紙や地図が視界から消えると同時に、携帯電話や音楽プレイヤーもなくなっているという手口だ。

 

【ATM(キャッシュマシーン)】

犯罪防止に役立ててもらえることを目指して特集記事を組むのは8年ぶりだが、その手口について、バリエーションはあるものの、「基本」はほとんど変わっていないことに驚かされた。アナログ・カメラ用のフィルムを二つ折りにしてカード挿入口に差し込み、カードが出てこないようにし、本人があきらめて立ち去るやいなや、そのフィルムごとカードを取り出して持ち去るケース(この場合、暗証番号を探るために、ATMマシーンの上など一目につかないポイントに小型カメラが設置されていることがあるという)、あるいはさらに大掛かりに、ATMマシーンのカード挿入口にスキミング(カード番号読み取り)機能のあるニセの挿入口を設置し、カード番号と暗証番号を盗み取るという、犯罪組織によるかなりの投資をともなう手口も見られる。また、2人組による右のようなケースにも注意が必要だ。

 

 

ATMマシーンは、できれば人通りの多いところにあるものを使うよう心がけること。人通りの少ない場所にあるマシーンには、スキミング機能つきのニセ挿入口を設置するといった仕掛けをほどこす機会が十分あるため要注意。日中なら、面倒でも金融機関支店内にあるマシーンを使うべき。また、友人といっしょなら、すぐ後ろに背中あわせに立ってもらい、周りに「ニラミ」を効かせてもらうと良い。1人でATMマシーンを使う場合、並んでいる人に失礼などとは思わず、まず、周囲をぐるりと見回すこと。必要以上に接近してきている人がいないか確認し、暗証番号を押す手もサイフでかくす(小型カメラで写されるのを避ける)くらいの用心をしたい。用心はどんなにしても、決してし過ぎることはない!

 

イーリング在住 A代さん(34歳)のケース
 それは朝から雨がちの嫌な天気の日のことだった。ATMで現金をおろそうとしたA代さんは、その日は傘をさしていたため、ATMのマシーンと自分との間にかなりの間隔があいていたと述懐する。ふだんから慎重なA代さんだったので、暗証番号を誰かに見られるのを避けるため、体をマシーンに近づけてできるだけ隠すようにして現金の引き出し作業をするよう心がけていたが、その日は傘のためにそれができなかった。カードを入れて、暗証番号を押し、カードが出てくるのを待っていたその瞬間、左手ななめ後ろから、10ポンド札を差し出された。
 「あなたのお金ではありませんか」
 A代さんは反射的に、その札と声の主に顔を向け、
 「いいえ、私のではありません」
と即答した。答え終わってマシーンに向き直ってみると、出てきていたはずのカードが見当たらない。その直後に出てきた現金は受け取れたものの、キャンセル・キーやエンター・キーを何度も押してみたが、カードが出てくる気配はなかった。はっとして周りを見回したが、さきほど10ポンド札を差し出した人物の姿も見えなかった。不審に思ったA代さんは、そのカードの発行元である銀行の最寄りの支店に入り、フロアで来客対応をしていたスタッフに事情を話した。そのスタッフの勧めですぐにカードを止めたものの、既にオイスターカードのトップアップに100ポンド相当分を使い込まれていた。カードを見失ってから時間にして、わずか20分ほどのことだった。
 意気消沈して友人に電話をかけてみると、「お札を差し出されたとき、右側に誰かいなかった?」と聞かれた。そういえば、右隣のATMマシーンに人がいたが、その人の様子は傘でよく見えなかった。
 「右手にいた人が、暗証番号を見たうえでカードも盗っていったのよ」
 警察に出向くと、
 「あそこのATMはCCTVに映っていないので、同様の被害が後を絶たないんですよ」
 そう告げられて、A代さんの落ち込みはさらに増したのだった。