世界3大怪物のひとつも誕生

  マーローでもう1つの名所が、世界中の誰もが知るホラー/ゴシック小説『フランケンシュタイン Frankenstein: or The Modern Prometheus』に縁のある「シェリー・コッテージShelley's Cottage」。フランケンシュタインの作者メアリー・シェリー Mary Wollstonecraft Godwin Shelleyが、メアリーの夫で、当時の英国を代表する詩人、パーシー・シェリーと1817年3月から翌年の2月まで住み、同作を執筆した家だ。 フランケンシュタインは怪物の名前だと思われがちだが、原作ではその怪物(人造人間)を作ったスイス人研究生の名前。その人造人間は、吸血鬼、狼男と合わせて世界3大怪物と呼ばれている。 グロテスクで悲哀に満ちたフランケンシュタインの物語(上記コラム参照)が、なぜこの平和なマーローから生まれたかは、スイスで行われた「ディオダティ荘の怪奇談義」に端を発する。 1816年、英詩人、ジョージ・ゴードン・バイロン卿は、メアリーの妹、クレア・クレメントとの不倫、異母姉との近親相姦、同性愛疑惑という数々のスキャンダルを抱え、妻からは離婚を迫られ、スイスのレマン湖畔に別荘ディオダティ荘を借り逃れるように暮らしていた。そこへバイロン卿を頼って訪れたのが、同じく逃避行中だったシェリー、メアリー、クレアの3人だった(下記コラム参照)。 その年は長雨に見舞われ、一行は室内で時間をもて余した。そこでバイロンが退屈しのぎに提案する。 「各々で1つずつ怪談を書こうではないか!」 この怪奇談義から生まれた話を、メアリーは1818年にゴシック小説『フランケンシュタイン』として発行。興味深いことに、その怪奇談義に居合わせていたジョン・ポリドーリは、もうひとつの世界3大怪物である『吸血鬼 The Vampyre』(1819年発行)を書き上げている。ちなみに、ポリドーリは、バイロンの主治医で彼の同性愛のパートナーだったともいわれている。 フランケンシュタインのストーリーも悲劇だが、著者のメアリーも不倫による三角関係や駆け落ち、度重なる子どもの死、夫の突然の事故死など、数奇の人生を辿った。 現在、シェリー・コッテージは個人の住居となっているため、見ることができるのは外観のみ。残念ながら中は見学できない。



West Streetにあるシェリー・コッテージ。「Shelley's Cottage」と表記された小さな看板や、
シェリー夫妻が暮らしたことを記すプレートはついているものの、
「フランケンシュタイン」の面影などは全くない。だが、一度訪れてみる価値はあるだろう。



 

マーロー発の
「名著」を立ち読み!

1.コンプリート・アングラー アイザック・ウォルトン著

世界中の釣り人たちの「バイブル(聖書)」とも呼ばれる、英国随筆文学の代表作の1つ。釣魚術だけでなく、魚の生態、風俗、料理法、さらには人生にも通じる詩、格言などがちりばめられている。英国のカントリー・サイドの巧みな描写、英国らしいユーモアに満ちた文章も味わい深く、釣り人にのみならず愛されている1冊。日本では「釣魚大全」などの訳本がある。1653年初版。


2.フランケンシュタイン メアリー・シェリー著

 世界的に有名なゴシック/ホラー小説。自然科学を学ぶ研究生、フランケンシュタインは、墓場の死体などから得た脳、内臓、手足といった体部と、「理想の人間」の設計図を元に人造人間を完成させる。しかしその姿は怪物としか呼べないほど醜いものだった。人間たちから迫害を受け続け、嘆き悲しむ人造人間は、「もう人間の前には現れない。だから、自分に異性の人造人間のパートナーを作って欲しい」とフランケンシュタインに懇願。しかし、その申し出が拒否されたため、人造人間は復讐を開始する…。1818年初版。
※映像でこのストーリーを追いたい方は、ロバート・デニーロ主演の映画「メアリー・シェリーのフランケンシュタイン Mary Shelley's Frankenstein(1994)」をぜひどうぞ。