2011年4月18日 No.673 取材・執筆・写真/本誌編集部

950年の歴史を誇る現役の城
ウィンザー城を征く

エリザベス女王が週末を過ごされる公邸、ウィンザー城――。ウィリアム征服王によって建てられて以来、英国王室の所有として脈々と受け継がれている。今回は、約950年の英国王室の歴史が凝縮された、世界最古にして最大の現役の城を征く。

The Royal Collection ©2011, Phillip Craven, Her Majesty Queen Elizabeth II

親しみ深い英国王室

 昨年11月に公式発表された、ウィリアム王子と恋人のケイト・ミドルトンさんの挙式が1週間後に迫ってきた。挙式には王族、各国の著名人、親族、友人など約1900人、祝賀パーティーには約600人が招待されており、ウィリアム王子の両親であるチャールズ皇太子と故ダイアナ元妃が1981年7月に挙げた式以来、英王室としては最大の結婚式となる。結婚発表当初から、メディアはこの話題で持ちきりで、ダイアナ旋風ならぬ「ケイト旋風」が巻き起こる勢いで世界中の注目を集めている。
 ツイッターやフリッカー、YouTubeなど、以前からソーシャルメディアの活用に積極的だった英王室は、昨年9月には「一般の人々とより良い関係をつくるため」、フェイスブックに公式ページ(www.facebook.com/TheBritishMonarchy)を開設。ウィリアム王子とケイトさんに関わる情報はもちろん、王室関連の最新ニュースやイベントが写真や動画などと共に満載されており、「友達」になってメール交換することなどはできないものの、32万人近い人々がこのページの「ファン」になっているという。
 「君臨すれども統治せず」の原則に従い、国民に支持されるために常に「開かれた存在」であることを目指してきた英王室らしい試みだ。
 ちなみに現在、王室および皇室などの「君主」が存在する国は世界に約30ヵ国あり、そのうちの10ヵ国がいわゆる先進国で、君主が権力を持たない、あるいは持っていても制限された立憲君主制による国家だ。先進国以外の国では、サウジアラビアやモロッコ、カンボジア、タイ、マレーシアなどが君主国家として知られる。デンマークやスペイン、ノルウェーが10の先進国組に含まれるが、G8と呼ばれる主要先進国8ヵ国に絞り込むと、残るは日本と英国のみ。日本の皇室ではフェイスブックなどによる情報公開は考えにくく、その「開かれ度合」に違いはあるものの、王室および皇室の存在は、日本と英国に共通する大きな特徴であり、英国に住む我々日本人に親近感を抱かせる理由のひとつともいえる。

ラウンド・タワーに王室旗(ロイヤル・スタンダード)が掲げられていたら女王は滞城中。英国旗がかかっていたら不在だ。旗は何時でも、女王のお出かけ、お出ましとともに掲げ替えられる。
The Royal Collection ©2011,
Phillip Craven, Her Majesty Queen Elizabeth II

 

ウィンザー城の近衛連隊。近衛歩兵第1連隊、コールドストリーム近衛連隊、スコットランド近衛連隊、アイルランド近衛連隊、ウェールズ近衛連隊の5つの歩兵連隊から構成され、常にいずれかの連隊が駐留している。衛兵交替は下郭の行進場で、日曜と一部バンクホリデーを除き毎日午前11時から行われる。

 現在まで継続する世界最古の君主と称される天皇を中心とし、1500年余りの歴史を誇る日本の皇室に対し、英王室は、ウィリアム征服王が開いたノルマン朝を起源とし、その歴史は約950年。エリザベス女王を君主に仰ぐ現王朝が、1917年から続いている「ウィンザー朝」だ。
 ウィンザー朝については弊誌4月7日号で詳しく特集しているので、そちらをご参照いただきたいが、英王室は18世紀にドイツから王を迎えてハノーヴァー朝がスタートしており、以来、ヴィクトリア女王の母后をはじめ、その夫のアルバート公など、英王室にはドイツの王族や家系出身の者が少なくなかった。ヴィクトリア女王の死後に始まったサクス・コーブルク=ゴータ朝はアルバート公の出身王家の家名をとったものだが、第一次世界大戦中にドイツが敵国にまわると、英国らしさを強調するためジョージ5世により「ウィンザー朝」と改名された。
 そのため、現エリザベス女王も、その父親で映画『英国王のスピーチ』のモデルになったジョージ6世も本名にWindsorという家名(苗字)が含まれている。
 ではなぜ、「ウィンザー」が英国らしいのか? それは、英王室のスタートとほぼ同時期に建てられ、以来、脈々と王室の居城として受け継がれてきた「ウィンザー城」にちなんでいるからだ。そのウィンザー城は今も、夏休みやクリスマス休暇を除いて、ほぼ毎週末、エリザベス女王が過ごされる離宮として知られ、ガーター勲章の授勲式のほか、王室の婚礼の儀や洗礼式、誕生祝賀会などが催されている「現役の城」だ。
 2005年にここで行われた、チャールズ皇太子とコーンウォール公爵夫人の祈祷式と披露宴も記憶に新しい。