イングリッシュ・ワインの世界を堪能

リッジヴューを征く

暖かい日が続いた7月の某日。編集部は英国産ワインの復興を体感しようと、リッジヴュー・ワイン・エステートへと足を運んだ。
交通手段を電車にするか車にするか迷った末に、見学後に試飲することを考え、電車を選択。 オフィスで留守番する編集部スタッフからの羨望のまなざしを受けつつ、ヴィクトリア駅へ向かい、ブライトン方面行きの電車に乗り込んだ。

1

リッジヴューへ

  50分前後電車に揺られてたどり着いたバージェス・ヒル駅。駅前に並ぶタクシーの運転手に「リッジヴューへ」と告げ、5分ほど走ったところで、田舎道にリッジヴューの看板がポツリと現れた。
指示に従って小道に入り、道なりにくねくねと進むと、倉庫のような建物の前でタクシーが停車。建物のシャッターは開け放たれ、ステンレス製のタンクが顔を覗かせている。いきなりの醸造所登場に、顔がほころんでくるのを実感しながら車を降りると、ワインのような酵母のようなにおいがぷわ~ん。この香りに、いよいよやってきたことを実感!

 

2

ブドウ畑

  醸造施設を右手に見ながら奥へと入っていくと、目の前にブドウ畑が飛び込んできた。見事に剪定されたブドウの木を前に、今回ガイド役を務めてくださるトムさんと対面。早速、ツアーが始まった。
リッジヴューは、オーナーのマイク・ロバーツ氏が自身で立ち上げたコンピューター関連の会社を売り、1994年にシャンパーニュからシャルドネ種、ピノ・ノワール種、ピノ・ムニエ種の台木を買ってきて植えたことに始まる。今も家族経営が続けられ、ワイン造りに対する家族の思いや、自然に寄り添って行われるブドウ栽培がトムさんの口から熱く語られる。
ブドウの木が奥の方まで列をなしていて、その端にはバラが植えられている。聞けば「バラが元気なうちはブドウも健康な証、と昔は言われていたんです」とトムさん。今では技術も発達し、バラが指針とされることはないが、ブドウ畑に彩りを添えていた。

 

3

醸造所

  年間でもっとも忙しくなるのは9~10月の収穫時。手摘みで丁寧に収穫され、隣接する醸造所へと運ばれる。醸造所の中にはステンレス製の大きなタンクがいくつも並んでいたほか、ボトリングの機械が稼働していた。 スパークリング・ワイン造りに徹するリッジヴューでは、伝統的シャンパーニュ製法が取り入れられ、醸造所および地下貯蔵庫はその要(かなめ)。設備の充実ぶりに、醸造所としての評価も高い。
ここでは、ブドウの圧搾が行われた後、収穫された品種、畑ごとにタンクに移され、一次発酵へと進む。その後、タンク別にテイスティングが行われ、それぞれの銘柄に合わせてブレンディングされる。これが、個性を左右する重要なステップとなる。この後、酵母が加えられ瓶詰めされるが、その時点ではまだ泡のない液体なのだそう。

 

4

地下貯蔵庫

  瓶詰めされた液体は地下貯蔵庫に運ばれる。貯蔵庫は常に12℃となるように空調がコントロールされており、少しひんやり。あちこちにブドウ・ジュースが詰められただけの瓶が積み上げられている。瓶内では静かに発酵が進み、アルコールと炭酸ガスが発生しているという。発酵が終わると、ここで2年間、あるいはそれ以上寝かせるものもあり、その間に熟成が深まっていく。
話を聞いていると、もう完成へと近づいているようだが、瓶内には役目を終えた酵母が澱となりたまっているのがわかる。この澱は一体どこへ行くのだろう? よく見ると、栓も通常のコルクではなさそうだ。その答えは次のステップにあった。

 

5

再び醸造所

  地上階へ戻り、発酵タンクが置かれていた場所を抜け別の部屋へ。そこでは熟成を終えた瓶が逆さまの状態で機械にセットされていた。ここに至るまでに瓶を徐々に回転させて澱の移動を促し、最終的に逆さになった瓶の口に澱を集めるという。
ここからが澱抜きというステップ。瓶の口を塩化カルシウム水溶液につけて、たまった澱を瞬時に凍らせる。そして栓を抜くと、澱が飛び出し、取り除くことができるというよく考えられた仕組みだ。その後、ドサージュと呼ばれるリキュールの添加作業が行われ、コルクを打って針金が巻かれて完成となる。一連の複雑な作業をこなす頼もしい機械は、当日は稼動しておらず、その働きぶりを見ることができなかったのはちょっと残念。完成したスパークリング・ワインは3ヵ月ほど休ませてから、いよいよ出荷の時を迎える。

6

試飲!

  そして、待ちに待った試飲タイム! 取材当日は試飲スペースが改装中だったことから、ブドウ畑の一角にテントが張られ、テーブルと椅子が用意されていた。リッジヴューを代表するシャルドネ種、ピノ・ノワール種、ピノ・ムニエ種をブレンドした「Bloomsbury」、ピノ・ムニエ種とピノ・ノワール種をブレンドしたスパークリング・ロゼ「Victoria」など、トムさんの解説を一つひとつ聞きながら試飲。決して堅苦しい雰囲気ではないので、ワインに詳しくなくても、きっと楽しめるはずだ。また、味利きを行う場合、ワインを口に含んだ後に専用のバケツに吐き出すのが基本とされるが、もちろん飲んでも問題なし。

 

  通常スパークリング・ワインは食前あるいは前菜の際に飲まれるが、「私たちの造るスパークリングは、すべてのコースに合わせられるほどに、それぞれのラベル、年代毎に異なる個性を兼ね備えているんですよ」と誇らしげに語るトムさんの目に、ワインに込められた作り手の愛情を感じた。
ついでながら、帰り際に、英国産ワインの復興やライバルとなるワイナリーの存在について聞いてみると、「造り手としてもちろんライバルではあるけれど、業界を一緒に盛り上げる仲間でもあるのです」とトムさん。その一言に英国産ワインのますますの発展を予期し、頬を緩ませながら取材班はリッジヴューを後にした。

 

Travel Information
Ridgeview Wine Estate
Fragbarrow Lane, Ditchling Common, East Sussex BN6 8TP
Tel: 0845 345 7292 www.ridgeview.co.uk
営業時間(試飲、販売):午前11時~午後4時 ※日曜定休

[見学ツアー]
開催日:土曜(不定期、10月を除く)
所要時間:1時間半~2時間
料金:1人15ポンド
定員:35名
※時間はウェブサイトでご確認を。
プライベート・ツアーもあり
[ロンドンからのアクセス]

電車:ヴィクトリア駅からバージェス・ヒルBurgess Hill駅まで直通でおよそ50分。駅からはタクシーで約5分。
車:M23からA23へと南下し、ガトウィック空港を通りこしてBurgess Hillのサインが現れたらA2300へ進む。その後A273、B2036、B2113を経てB2112に入り、しばらくするとリッジヴューの看板が見えてくる。

 

ぜひ立ち寄りたいパブ 
The Bull

リッジヴューを訪れた後のオススメは、車で5分ほどの場所にあり、16世紀にコーチ・イン(馬車宿)として建てられたガストロ・パブ。リッジヴューのワインのほか、チャペル・ダウンのワインとビールなど、飲み物のラインナップが充実。また、素材選びから盛り付けに至るまで、納得いくまでこだわった料理が供されるのでぜひとも食事を取られたい。広々としたガーデンスペースからの眺めもよく、ロンドンのパブではなかなか出会えない開放感が味わえる。


近隣の農場で育てられた鶏の胸肉を使ったソテー。カリッと焼かれた皮とやわらかい肉の、食感のコントラストが印象的。

スタッフが迷わずオススメするダークチョコのブラウニー&カルーア・ムース。程よい甘さで日本人好み。レベルの高さにうれしくなった。

[The Bull] 2 High Street, Ditchling, East Sussex,
BN6 8TA
Tel: 01273 843147
http://thebullditchling.com
※リッジヴューから車で約5分。徒歩なら30分強
※宿泊も可能