キーワード4: イングランドを食べる
環境への取り組み
造り手の情熱と大地からの恩恵だけなら英国産ワインがここまで賞賛されるものに成長することはなかったかもしれない。
英国の食文化は過去15年ほどでめまぐるしい変化を遂げているのは皆の知るところだ。英国の大地が生み出す天然の旨みを届けたいという生産者や、生産者の姿の見える安全な食品を口にしたいという消費者が増え、地元の産物に、よりスポットが当てられるようになったことはワイン業界でもプラスに作用した。英国が生んだ「フードマイレージ」という概念は、食料の輸送距離を短くして、環境への負担を減らそうというものだが、こうした考えの定着も、「英国産」に目を向けさせる大きな流れとなった。
こういった「メイド・イン・ブリテン」への取り組みは、英国の良さを国外にアピールする側面を持ち、今後も英国産ワインの販売促進への大きな力となることだろう。
少々横道にそれるが、パブでパイント・グラスを傾ける人々の姿は典型的な英国の光景だ。しかし普段はパブでビールを飲むという人でも「自宅ではワイン派」という人は多い。女性ならばパブでワインを注文するのもアリだが、「男性がワインを飲むのは男らしくない」との固定観念に縛られ、心の中では「ワインが飲みたい」と思いながらもビールを注文している男性の心理を指摘する専門家もいる。英国人もワインが好きなのである。これまで他国に押されどおしだったワイン造りにおいて自国のワインが実は優秀だったことを知らされ、誇らしく思う英国人も多いことだろう。
キーワード5: ブランディングの力
王室は、敏腕セールス・ファミリー
国産ワインを取り扱う動きも盛んになり、ワイン専門店のほか、ウェイトローズやマークス&スペンサーなども積極的に取り入れるようになっている。また、やり手のビジネスマンも関心を示し、ワイナリーを投資先として選ぶ者も出現している。
さらに強力なサポーターといえるのがロイヤル・ファミリーで、国産ワインの振興に取り組み、王室主催の式典でも積極的に採用している。例えば2011年に行われたウィリアム王子とキャサリン妃の結婚披露宴では、ケントでワイン造りを行うチャペル・ダウンChapel Downのロゼ・ブリュットRose Brutが振る舞われたことが知られている。また翌年のエリザベス女王即位60年を祝う、テムズ河での水上パレードの際に英王室専用船の中では前出ナイティンバーのクラシック・キュヴェClassic Cuvee 2007が、ダイヤモンド・ジュビリー・レセプションではイースト・サセックスにワイナリーを構えるリッジヴューRidgeviewのブルームズベリーBloomsbury 2009が供され、話題を呼んだ。当然ながら、これらの銘柄はどこで紹介されるにも「王室の~」という修飾がなされ、付加価値が高められている。
さらに、王室ではワイン醸造計画が進行中だ。2011年に は、ウィンザー城に隣接したウィンザー・グレート・パーク内に、シャルドネ種などの苗木がおよそ1万6000本植えられたという。どれだけゴージャスなワインができあがるのだろうか…。
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