野田秀樹新作舞台 NODA•MAP「正三角関係」世界配信決定
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張り巡らされた路地

 ロイヤル・マイルの端から端までは、徒歩で1時間ほど。坂が多いので履きなれた靴で行こう。
まずはロイヤル・マイルの西端、高さ約130メートルの天然の奇岩上で堂々とした威容を誇るエディンバラ城(①、最終頁の地図参照)へ。この城内には、王冠や宝剣、歴代のスコットランド王が戴冠式で使用してきた「運命の石」こと「スクーンの石」が飾られたクラウンルーム(王冠の間)や、エリザベス1世により処刑された悲劇の女王メアリー・スチュワートの部屋などがある。メアリーはこの城でスコットランド王ジェームズ6世(後にイングランド王ジェームズ1世を兼務)を産んでおり、この出産の間も見ることができる。
スコットランドといえば、スコッチウィスキーを真っ先に思い浮かべる人は、エディンバラ城の麓にあるスコッチ・ウィスキー・エクスペリエンス(②)を訪れてみよう。スコットランドの各地にある蒸留所を見学する時間がない場合は、特におすすめ。ウィスキーができるまでの工程を、大樽を模した乗り物に乗車して楽しめるアトラクションだ。また、自分好みのウィスキーを知ることができるミニ講座もあり、試飲もできる。



スコット・モニュメントから望むロイヤル・マイル(東方面)とアーサーズ・シート(左奥)。
左下の波型の屋根はウェイヴァリー駅。

 

ところで、ロイヤル・マイルを歩いていると、両脇の至る所にトンネル状の細い路地があるのに気がつく。これはクロース(close)と呼ばれる小道で、ロイヤル・マイルの名物。激しい起伏が特徴的なオールドタウンには、こうした階段や坂、クロースが張り巡らされており、初めて訪れた人には立体迷路のように感じられてワクワクするはずだ。路地を覗くと、小さな商店があったり、駅まで抜けられる近道だったり、ニュータウンからフォース湾へと続く風景が望めたりと、一つとして同じ道はない。
中でも有名なのは、ブロディーズ・クロース(③)だろう。スティーブンソンの小説「ジキル博士とハイド氏」のモデルとなった男、ウィリアム・ブロディ(通称ディーコン・ブロディ)の家が、このクロースの奥にあったという(13頁のコラム参照)。ブロディーズ・クロースのほぼ向かいにあるレディ・ステアズ・クロースの先には、スコットランドを代表する3人の作家、ウォルター・スコット、ロバート・ルイス・スティーブンソン、ロバート・バーンズの自筆原稿や愛用していた文具等が展示されているライターズ・ミュージアム(④)が隠れている。文学に興味のある人には見逃せない博物館で、入場無料というのも嬉しい。
ロイヤル・マイルから少し横道へそれて、スコットランド版「忠犬ハチ公」として人気のグレーフライアーズ・ボビーの像(⑤)に向かうと、親しみを込めて像をなでている人々の姿が見えてくる。ボビーは飼い主が世を去った1858年から14年間、自らの天寿を全うするまで主人の墓を守り続けたという(13頁のコラム参照)。また、ボビーの像へ行く途中には、J・K・ローリングがシリーズ第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」の原稿を書いたカフェもあるが、これについては「ハリー・ポッター探訪」(15頁)にまとめて後述しているので、そちらをご覧いただきたい。

 

忠犬ハチ公
グレーフライアーズ・ボビー

  スカイ・テリア犬のボビーは、エディンバラ警察に勤めるジョン・グレイに飼われていた。ジョンが夜勤の時にはボビーも一緒に見張りをする、良きパートナーであったが、1858年、ジョンが結核により死去。グレーフライアーズ・カークヤードに埋葬された。ともに過ごせたのはわずか2年だった。
ボビーはその翌日からジョンの墓の脇に座り続け、食事や寒い冬の日以外は、その場を離れようとしなかったという。そして14年の月日が流れた1872年、ボビーはジョンのもとに召された。両者が一緒にいられるようにと市民は政府に嘆願し、ボビーはグレーフライアーズ・カークヤードの入口付近に、永眠が特別に許された。