PART1 リッチモンド中心部で楽しむ

目抜き通りのジョージ・ストリート、およびキング・ストリートから、リッチモンド・グリーンへと抜ける3本の小道(地図上A、B、C)の両脇には、しゃれたカフェやチョコレート専門店、こだわりのセレクト・ショップなどが並ぶ。そぞろ歩きするのに最適。
A  Brewers Lane   B  Golden Court  
Paved Court


 

小さなカフェや
ショップを
自分で見つける

メインの通り(下の地図で道路名が紫色になっている部分)とリッチモンド・グリーンの間の路地 (Brewers Lane、Golden Court、Paved Court、King Streetなど)や高台に通じるヒル・ライズ(Hill Rise)沿いには、心惹かれる独立系カフェやセンスの良い品揃えの店が軒をつらねる。子供向けの良書や名作を集めた児童書専門店「The Lion & Unicorn Bookshop (19 King St, TW9 1ND)」、英国と欧州の伝統的な製法を続ける小規模のチーズ農家から130種類以上のチーズを集めたチーズ専門店「Teddington Cheese (74 Hill Rise, TW10 6UB)」など、品質の高い商品にこだわりを持つ住民が多いことを伺わせる専門店も少なくない。また、人気のチョコレート・ショップ「William Curley(10 Paved Court, TW9 1LZ)」のリッチモンド店では、席数はごく限られているが、その場でホットチョコレートなどを楽しむことも可能。
 

とにかく歩く

リッチモンド内はバスの便が良く、気が向くままに歩いても、疲れたらバスに乗れば良いので安心して歩き回りたい! テムズ河沿いを好きなだけ歩き、橋や渡し舟をみつけたら対岸や中洲に渡ってみるのも面白い。広大なリッチモンド・パークをすべて徒歩で網羅するのは大変だが、歩きたいエリアに近い門までバスで行けば時間も体力も節約できる。また、シーン(Sheen)方面へ向かう大通り沿いも様々な店が並び、そぞろ歩きにピッタリ。なお、中心部のみならず、もっと歩いてみたいという人は後半ページの、おすすめウォーキング・ルートをご参照いただきたい。
高台にあるリッチモンド・ヒルから、テムズ河に向かって、『斜面』に造られた「テラス・ガーデンズ」。

自転車で
リッチモンド・
パークを巡る

リッチモンド・パークをぐるりと一周する外周道路は舗装が行き届いていて、車の走行も時速20マイル以下に厳しく制限されているため、一般道路での自転車走行に不安を感じる人でも快適にサイクリングが楽しめる。また、駐車場以外での車の一時停車は堅く禁止されているが、自転車なら好きなときに止まることができるのも利点。パーク内に生息するアカシカやダマジカの群れを探してみよう。また、テムズ河沿いにレンタサイクル屋(http://blazingsaddlesbikehire.com)=写真上=もあり。
リッチモンド・パークの詳しい情報は下記ウェブサイトなどへ。
www.royalparks.org.uk/parks/richmond-park

歴史に浸る

 

王室ともゆかりの深いリッチモンドは、そこかしこの建物や通りに様々な歴史が隠れている。うんちくと逸話に満ちた街ともいえる。解体されたリッチモンド・パレスも、ゲート・ハウスと門の部分は残っているし、17世紀から18世紀にかけてリッチモンドに建てられた優美な家々は、多くが既に失われてはいるものの、リッチモンド・グリーン、リッチモンド・ヒル、オーモンド・ストリート(Ormond St)、ヴィンヤード(Vineyard)、ピータシャム(リッチモンド内を細かく分けたエリアのひとつ)やハム(同)の辺りでまだまだ見られる。20世紀モダニズム文学を代表する女流作家、バージニア・ウルフが住んでいた家など、著名人にまつわる建物も多い。リッチモンドの歴史について、深く知りたい場合は下記ウェブサイトなどへ。
www.richmond.gov.uk内にある「local history and heritage」のページ
ペンブローク・ロッジのそばにある「King Henry VIII Mound」。見過ごしてしまいそうになる=写真左上=ので要注意だが、このポイントはリッチモンド・ヒルの中で最も高台にある。垣根の中に「穴」が設けられており=写真上、望遠鏡(無料!)でのぞくと、遠くにセント・ポール大聖堂のドームが見える。このポイントと同大聖堂を結ぶ10マイル(約16キロ)のルート上に建てられる建造物の高さは厳しく規制されている。
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1536年5月19日、ヘンリー8世は、ここで2番目の妻アン・ブリン(エリザベス1世の母)の処刑完了を知らせる「のろし」があがるのを待ったというのが通説ながら、史実によると同王がこの日、滞在していたのはウィルトシャーで、リッチモンドにはいなかったという。


眺めの良い場所を
制覇する

 


リッチモンド・パーク内にある、イザベラ・プランテーション(Isabella Plantation)。4月末ごろから5月にかけて咲き誇るシャクナゲの華麗な姿には、思わず息をのむ。ゥMark Percy
 
リッチモンドで最も愛される眺めはピータシャム・メドウを高台から望む景観だろう(10頁参照)。英国ロマン主義の画家、J.M.W.ターナー(1775~1851)や、肖像画家のJ.レイノルズ卿(1723~92)もリッチモンド・ヒルからの眺めを作品に残している。テディントンからリッチモンド、そしてキューまでの景観は、アルカディア・プロジェクトという景観保護プロジェクトによって守られており、ピータシャム・メドウも法律で開発が規制されている。ロンドンのナショナル・ギャラリーやテイト・ブリテンに展示されるターナーの風景画を見れば、ここが奇跡的と言えるほど昔の姿をとどめており、大切に保存されてきたことがわかる。
また、リッチモンド・パーク内にあるペン池やペンブローク・ロッジ、春にはツバキ、モクレン、シャクナゲ、ツツジなどが美しく咲き乱れるイザベラ・プランテーションなど、「絵になる」眺めが期待できる所が多いのもリッチモンドの特長。

ターナー作『The Thames from Richmond Hill』(1815年頃)。テイト・ブリテン所蔵。

リッチモンド・ブリッジのすぐそばから、テムズ河めぐりのボート・ツアーを利用するのも一興(今年はイースターから運航。冬季休業)。テムズ河から眺めれば、リッチモンドの異なる表情が楽しめることだろう。

ランチやお茶を
堪能する

 

リッチでトラディショナルなランチやアフタヌーン・ティーから、カジュアルなカフェまで、質の高い時間を過ごすにあたり、選択の幅が広いのもリッチモンドならでは。暖かい日ならピータシャムの草地やテムズ河沿いのベンチでピクニックも良いだろう。また、編集部が選んだ、アフタヌーン・ティーのお薦めスポット4ヵ所については14ページをご参照いただきたい。
ホテルほどかしこまらずにパブよりワンランク上の食事がしたい人にお薦めなのが、リッチモンド・パークのピータシャム・ゲート前にある「The Dysart Arms(ダイサート・アームズ)⑯」 (www.thedysartarms.co.uk/ Tel: 020-8940-8005/ TW10 7AA)=写真右上、および下4点。ダブリン、ニューヨークのミシュラン星付き店、シドニーの高級創作フレンチといったレストランで修行を積んだヘッドシェフが、英国、フランス、日本、タイなど様々な国のテイストを組み合わせたユニークな料理を提供している。意外な組み合わせも舌になじみ、思いつきだけでなく、熟考の上での冒険であることがわかる。アイルランド出身のシェフが祖母から受け継いだ秘伝のレシピというソーダ・ブレッドやフェンネルの花粉を使ったバター、こだわりセレクションのチーズボードなども、テーブルでの会話を弾ませてくれることだろう。
写真左から、この日のプレ・スターター、メインのラム、デザートの「バーント・ハニー・カスタードburnt honey custard」。週末のランチは混むので要予約。