◆130年以上続く「赤い悪魔」の歴史と強さ


マンUの本拠地、マンチェスターにあるオールド・トラフォードの外観(上)とスタジアム内の様子(下)。
 マンUは世界最高峰のビッグクラブであり、イングランド・サッカー史上最も成功を収めているチームであることは、誰もが認めるところだろう。
1986年にアレックス・ファーガソン監督が就任して以来、20の主要タイトルを獲得。先述した通りにプレミアリーグでは最多の19回の優勝、FAカップでも最多となる11回優勝という栄光を手にしている。
大手市場調査会社の調べによると、2012年現在のマンUファンの数は世界人口のおよそ11人に1人の割合にあたる、6億5900万人と推定されており、世界一ファンの多いサッカークラブであることが分かった。さらに、米経済誌『フォーブス』も、マンUの資産価値は22億3500万ドル(約1780億円)と発表。スポーツ界で最も資産価値の高いクラブであることが明らかになり、サッカークラブとしては8年連続の世界一に輝いた。
ロンドン市内に本拠地を置く主なクラブとしては、チェルシー、アーセナル、フルハムなどが挙げられるが、マンチェスターの場合はマンUとマンCが同じ市内を本拠地としている。この宿敵マンCとの試合は「マンチェスター・ダービー」と呼ばれ、世界でも有名なダービーマッチの一つ。また、歴史・伝統ともにライバル関係にあるリヴァプールとの試合は「ノースウェスト・ダービー」といい、これもリーグを代表する「伝統の一戦」の一つである。
こうした華々しい経歴を持つマンUだが、かつて多くの名選手を失う大惨事にも見舞われている。
会見で見せたいプレーを問われると、「攻撃」と力強く答え、こだわりを感じさせた。  1958年2月6日、ドイツ・ミュンヘンの空港でマンUの選手、スタッフを乗せた航空機が墜落する「ミュンヘンの悲劇」が起きた。55年から始まった欧州のクラブ選手権「チャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)」に初めてイングランド代表として出場し、まさに黄金期を迎えていたときだった。
チャンピオンズカップで8強に進んだマンUは、旧ユーゴスラビアの強豪レッドスター・ベオグラードと対戦。ホームでは2―1で勝利し、敵地では3―3で引き分けて、合計5―4で準決勝進出を果たす。直後にブラックバーン戦が控えていたこともあり、マンUは欧州
マンUの入団会見で笑顔を見せる香川。©manutd.com
全土が寒波に見舞われるという悪天候の中、英国への帰国を焦っていた。そしてベオグラードを発ち、ミュンヘンに給油で立ち寄ったときに、その悲劇は起きた。3度目の離陸を試みた際に航空機が滑走路脇のフェンスに激突したのである。
選手8人が死亡したほか、2人が再起不能の大けがを負い、チームは大打撃を受けた。控え選手で臨んだ準決勝も敗退し、チーム消滅の危機にまで発展したが、奇跡的に生還した監督と、復帰を果たした名選手FWボビー・チャールトンが中心となってクラブを再建。ミュンヘンの悲劇から10年後の1968年には、遂にチャンピオンズカップを制し、イングランド勢として初めて欧州制覇を果たした。この事故後、マンUのエンブレムには不死鳥が描かれるようになったという。
現在でも、事故の起きた日の試合では犠牲者を追悼する黙祷が行なわれ、名門マンUを支える重要な歴史となっている。どん底から這い上がるその強さが、「赤い悪魔」という異名を持つチームの強さに繋がっていることは間違いないだろう。
このマンUでプレーする機会を得た香川の大いなる活躍を期待したい。


 

にわかファンでもすぐわかる イングランド・サッカー Q&A


香川が挑むプレミアリーグとは、一体どんな舞台なのか。まずはサッカー発祥の地といわれるイングランドの「フットボール」について考察していこう。
 

 なぜイングランドでは「サッカー」ではなく
「フットボール」と呼ばれる?

サッカー(Soccer)とは、アソシエーション・フットボール(Associaion Fooball)のことであり、1863年に世界初のサッカー協会としてイングランド・サッカー協会(FA)が発足した後、上流階級の間で「Assoc」や「Soc」と略されはじめ、やがて「Soccer」へと変化したといわれている。
1904年の国際サッカー連盟(FIFA)発足に伴い、欧州では「フットボール」の呼称に落ち着いた。だが、北米ではフットボールから派生した独自のアメリカン・フットボールなどが人気となり、両者の区別を付けるために「サッカー」と呼ばれるようになったという。日本でも終戦までは「蹴球」と呼ばれていたが、戦後は米国の影響を受けて「サッカー」へと変化。ただ、日本サッカー協会の英語表記はイングランドにならい、「Japan Football Associaion(JFA)」となっている。


 イングランド人にとって、サッカーとは?


「The Freemasons Arms」の店内に設置されているテレビでは、試合のある日にサッカー観戦が可能。(81-82 Long Acre, Covent Garden, London WC2E 9NG/Tel: 020 7836 3115)
サッカーはイングランドの「国技」であり、またイングランドがサッカーの「母国」といわれる理由は、協会設立が世界最古というだけでなく、プロ・アマあわせて4万以上のサッカークラブが存在するからだ。これは世界最多を誇る。
最近は不況により激減してしまったが、数年前まではパブがアマチュアチームのスポンサーになるといった文化が根付いていたほど、サッカーとパブも密接な関係にある。自分のサポートするプロサッカークラブの試合がある日は、仲間でパブに繰り出し、ビールを片手に試合を観戦する人は少なくない。また、家族ぐるみで地元の弱小チームを応援し続けるファンも多く、地元と密着した関係がしっかりと築かれているといえるだろう。
余談だが、FA発足時の1863年には、実はパブでサッカーのルールを決める会議が行われていたという。そのパブはフリーメイソンズ・タバーン(現・フリーメイソンズ・アームズThe Freemasons Arms)といい、今もコベントガーデンで営業中だ。

 
 サッカー大会には、どんな種類がある?

 

各クラブと各国代表の大会があり、
次のように大きく分けられる。


主要な世界大会(男子)


クラブワールドカップ(クラブW杯)

 クラブの世界一を決める大会。大陸別選手権の覇者6クラブと、開催国の覇者の計7クラブが出場。毎年開催。次回は今年末に日本で開催される。
マンUは2008年に優勝し、イングランド・チームとして唯一、世界ナンバーワンとなった。現覇者、最多覇者ともにバルセロナ(スペイン、2度)。日本勢の最高成績は浦和レッズとガンバ大阪の3位(それぞれ07年と08年)。


◆UEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)

 過去5年間のクラブW杯覇者を生み出している欧州CLは、名実ともに世界最高峰のクラブ選手権。毎年開催。マンUも常連出場クラブで、過去3度優勝している。現覇者はチェルシー、最多覇者はレアルマドリード(スペイン、9度)。


◆ワールドカップ(W杯)

 国の世界一を決める大会。大陸別予選を勝ち抜いた32ヵ国が出場。4年に1度の開催。次回は14年ブラジル大会。
現覇者はスペイン、最多覇者はブラジル(5度)。日本の最高成績は16強。)


◆コンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)

 W杯のプレ世界大会。大陸別選手権の覇者6ヵ国、W杯開催国と招待国(W杯覇者)の計8ヵ国が出場。4年に1度の開催。次回は来年のブラジル大会。
現覇者、最多覇者ともにブラジル(3度)。日本の最高成績は準優勝(01年)。


◆大陸別選手権

 ユーロ(欧州)、コパアメリカ(南米)、アジアカップ(アジア+オーストラリア)、ゴールドカップ(北中米)、アフリカ・ネイションズカップ(アフリカ)、オセアニア・ネイションズカップ(オセアニア)の6大陸でそれぞれ行なわれ、覇者がコンフェデ杯に出場。北中米とアフリカは2年に1度、そのほかは4年に1度。
日本はアジアカップ覇者であり、同大陸最多優勝国(4度)。


◆オリンピック(五輪)

 23歳以下+24歳以上(3人まで)による準世界大会。大陸別予選を勝ち抜いた15ヵ国と開催国の計16ヵ国が出場。 現覇者はメキシコ、最多覇者はハンガリー(3度)。日本の最高成績は3位(1968年)。


イングランド国内の大会(男子)

 イングランドのプロリーグ(全92クラブ)は次のように分けられ、これに加えて2つのカップ戦を争う

- プレミアリーグ(1部)=20クラブ
- フットボールリーグ・チャンピオンシップ(2部)=24クラブ
- フットボールリーグ1(3部)=24クラブ
- フットボールリーグ2(4部)=24クラブ
※5部以下は俗にセミプロと呼ばれる。

 フットボールリーグの歴史はプレミアリーグより古く、1888年開始の世界最古のプロサッカーリーグである。当初は12クラブで創設され、その後チーム数の増加とともに階級別のリーグに分割された。1992年になると、放映権やスポンサー収益を伸ばすため、精鋭クラブによるプレミアリーグが創設される。フットボールリーグはその下部リーグとなった。
プレミアリーグ内の順位やカップ制覇の有無は、1部・2部リーグ間の昇格・降格や来季の欧州大会への出場などに影響する。


◆ プレミアリーグ

 イングランド1部リーグ。20クラブによって、毎年8月から翌年5月にかけて、ホーム&アウェー方式による総当たりで全38試合を戦う。今年は8月18日から開始される。優勝クラブは翌シーズン、袖に刺繍されているプレミアリーグの獅子が金色になる(通常は紺)。
1~3位のクラブには翌年度の欧州CL本大会、4位のクラブには同最終予選プレーオフ、5位のクラブにはUEFA欧州リーグ(欧州CLの格下大会)の最終予選プレーオフへの出場資格が与えられる。一方、下位3クラブは自動的に2部リーグへ降格し、2部からは上位2クラブと、3~6位の4クラブによるプレーオフを勝ち抜いた1クラブの、計3クラブが昇格する。
現覇者はマンC、最多覇者はマンU(12度、フットボールリーグ時代を合わせると19度)。


◆フットボールリーグカップ

 イングランド2~4部が主催するカップ戦のため、大会としての優先順位は最も低い。プレミアリーグとフットボールリーグに属する92クラブが参加。一発勝負のトーナメント方式(準決勝のみホーム&アウェー)。優勝クラブには翌シーズンの欧州リーグ3次予選への出場権が与えられるが、そのクラブがプレミアリーグで4位以上に入った場合は、同5位以下のクラブに欧州リーグの出場権が繰り下がる。現覇者、最多覇者ともにリヴァプール(8度)。


◆FAカップ

 世界最古のカップ戦。日本の天皇杯をはじめ、世界中のカップ戦がこの大会を規範にしている。プロ、アマに関係なく、FAに登録している全てのクラブに参加資格がある。一発勝負のトーナメント方式で、どちらのホームで行われるかは抽選で決定。引き分けの場合はホームを変えて再試合を行い、それでも引き分けた場合は延長戦およびPK戦を行う。優勝クラブには翌シーズンの欧州リーグ本大会出場権が与えられるが、そのクラブがプレミアリーグで4位以上に入った場合は、同5位以下のクラブに出場権が繰り下がる。弱小クラブが強豪から金星を挙げる「ジャイアント・キリング(大物食い)」もみどころの一つ。
現覇者はチェルシー、最多覇者はマンU(11度)。


◆コミュニティー・シールド

 FA主催のスーパーカップ。プレミアリーグ覇者とFAカップ覇者によって、シーズン開幕の1週間前の週末に行われる。同一クラブが2冠を達成した場合、そのクラブはプレミアリーグ2位と対戦する。
今年は昨季プレミアリーグ覇者のマンCとFAカップ覇者のチェルシーによる試合が12日に行われ、マンCが制した。最多覇者はマンU(19度)。


◆プレミアリーグ2012-13 出場クラブ一覧

- アーセナル
- アストン・ヴィラ
- ウィガン・アスレチック
- ウエスト・ブロミッチ・アルビオン
- ウエストハム・ユナイテッド
- エヴァトン
- クイーンズパーク・レンジャーズ
- サウサンプトン
- サンダーランド
- スウォンジー・シティ
- ストーク・シティ
- チェルシー
- トテナム・ホットスパー
- ニューキャッスル・ユナイテッド
- ノーリッジ・シティ
- フルハム
- マンチェスター・ユナイテッド
- マンチェスター・シティ
- リヴァプール
- レディング
※五十音順にて掲載