贅沢な時間を約束する充実の施設

 こうしてサマー・ロッジは、イルチェスター家の人々によって代々引き継がれ、200年近くにわたって改修・拡張が行われた。そして1979年に8つの客室を持つホテルとしてオープンした後、馬小屋だった棟は寝室へと改装され、テニスコートやプールが加わった。ラウンジには大きな窓が設けられ、明るい光が差し込む現在のものとなった。さらに、2003年に現在のオーナー・グループに運営がゆだねられ、スパ、プールなどの施設が新たに備えられ、ホテルとしてさらなる成長を遂げた。
 

 

現在サマー・ロッジを運営するのは、英国、南アフリカ、スイスなどに
ラグジュアリー・ホテルを所有するレッド・カーネーション・グループ。
客室、レストランのほか、クローケー場、温水プール(写真左)、スパ、ジムなどの施設が完備されている。
小川が流れる庭では、4人の庭師によって愛情たっぷりに育てられた季節の花々を愛でることができる。
写真右は、ルーム#1、2から見下ろせる日時計。

 

 スイートルームを含む24の客室は、ひとつとして同じ内装のものはない。部屋を特徴づける上品な布が壁を彩り、インテリア、バスルーム、クローゼットなど、趣向のこらされた各々の部屋が客たちを迎える。取材班が訪れた♯6の部屋には、ルノワールの原画が飾ってあったのだが、これが例えばガラスケースで覆われるということもなく、あくまでもさりげなく壁に掲げられていることに、贅沢さと宿泊客へのもてなしの心が感じられる。
ようやく人がすれ違えるほどの広さの廊下、階段などの壁も肌触りのいい布で覆われ、それが「人が暮らす家」らしい温かみを与えるのに一役買っている。
光がたっぷりさすコンサバトリー、エレガントなダイニングルームを持つレストランでは、「地産地消」にこだわり、ドーセット、近郊のサマセットおよびデヴォンで育まれた良質な農作物、鮮魚、チーズなど、新鮮な食材が揃う。さらに、庭にある菜園スペースでは、夏になるとサラダ野菜やハーブ、いちごなどの果物が、冬には根菜が育ち、それらを総料理長スティーブン・ティットマン(Steven Titman)氏が、伝統的な英国料理をベースにヨーロッパ風のアレンジを加えた料理に仕上げる。
食事に華を添えるワインを選ぶ際は、ヘッド・ソムリエのエリック・ツヴィーべル(Eric Zwiebel)氏にゆだねたい。フランスで生まれ育ち、「ベスト・ソムリエ・ヨーロッパ・コンペティション」で2位に選ばれた経歴を持つ氏に、その日の食事、その日の気分に合った特別な1本を選んでもらうのも、忘れられない記憶となるだろう。
サマー・ロッジ・レストランは、英自動車協会(The AA)の格付けによるAAロゼットの3を獲得しているほか、サンデー・タイムズ紙でドーセット第1位のレストランにも選ばれており、宿泊客以外にも、多くの人々が同レストランを目的にこのホテルへと足を運ぶ。
ところで余談になるが、取材に訪れたこの日、エプロンをつけ、髪にはティアラを飾り、おしゃべりに興じている6、7人の女性宿泊者グループに出会った。聞けば、そのうちの一人がまもなく結婚するとのことで、ヘン・ナイト(独身最後を楽しむための女性だけのパーティー)をここで開催しているという。カントリー・ホテルでゆったりと過ごし、スパを思う存分……というだけでなく、彼女らはシェフと一緒にカップケーキを作るというオプションを楽しんでいた。「宿泊客の皆さんの要望や目的にあわせて柔軟に対応し、思い出に残る滞在になったと言ってもらえるのが一番の喜び」と、取材班を案内してくれたセールス・ダイレクターのケヴィン・リード氏は優しい笑顔を見せてくれた。その笑顔に、入館して以来感じていた、都会のホテルなどでは望むべくもない温もりの一端を垣間見ることができた。

 



24の客室が、5つの棟にわたって設えられている。よりプライベートを好む場合は、
本館から少し離れた専用の庭付きの棟で宿泊することも可能。
敷地内で育った花々が室内を彩り、窓からは庭が見渡せるようになっている。

 

日本ウイスキーのコレクションが光る

 ラウンジで取材班を圧倒したもののひとつが、ウイスキーやブランデー、スピリッツの数々。ウイスキーだけでも230種類 にのぼるという。世界各国から厳選されたウイスキーが並ぶが、その中でも日本ウイスキーの豊富さには目を見張るものがある。サントリー「山崎」「響」をはじめ、海外では目にすることの少ないニッカ・ウイスキー「竹鶴」など、全体の1割を超す35種類を日本のウイスキーが占める。
ウイスキーに詳しい同ホテルのバー・マン、ジョナサン・ココンニャ氏は、「2011年に世界最高のシングルモルトウイスキーに与えられる『ワールド・ベスト・シングルモルト・ウイスキー』を受賞した『山崎1984』をはじめ、日本のウイスキーは世界最高級クラスの物が少なくありません。このコレクションをお客様におすすめできるのは、うれしい限りです」と話す。
気品漂うハーディのラウンジで、あるいはしっとり落ち着いた雰囲気のバーで、一日を締めくくる贅沢な一杯を堪能してみたいものだ。