2011年2月17日 No.664

取材・執筆・写真/本誌編集部

美食と歴史を楽しむ小休止

Mallory Court Hotel

マロリー・コート・ホテルを征く

美食を味わい、静寂に浸り、そして歴史をたどる―、
英国内での小旅行を考えたとき、何を中心に据えて選ぶだろうか。
限られた時間を有意義に過ごすなら、
これらがすべて揃っているのが理想的といえる。
マロリー・コート・ホテルは、そんな願望を叶えてくれる
美しい佇まいのカントリー・ハウス・ホテルだ。
今回は、ロンドンからのアクセスも便利なこの地を征くことにしたい。
 

 

欲ばりな滞在を可能にする館

 

 マロリー・コート・ホテルはイングランド中西部ウォーリックシャーのほぼ中央に位置し、ロンドン市内からは車でおよそ2時間の距離にある。取材班は昨年12月某日、高速道M40を北上し、同ホテルへと向かった。繁忙期となる年の瀬にもかかわらず、我々の依頼を快諾してくれたのは、同ホテルでグループセールス&マーケティング・マネージャーを務めるタラ・ロビンソンさん。昨今は日本、中国を始めアジア圏からの宿泊客も増えているため、弊紙に登場することで同ホテルの認知度がさらに上がればという願いを込めて、と話してくれた。
 

 

 ホテル滞在の楽しみとして「美食」は外せない要素の1つといえる。弊紙でこれまで紹介してきたいくつかのマナー・ハウス・ホテルがミシュランの星付きレストランを有し、多くの宿泊客、訪問客を集めているように、マロリー・コート・ホテル内のレストランも一つ星を有し、その実力を証明している。しかも、2003年から今年まで同じシェフの元、9年連続で一つ星を維持しているというから、さらなる期待を寄せたくなる。
 また、同ホテルは人気観光地であるシェークスピアの生誕地、ストラットフォード・アポン・エイヴォンへ車で約30分、中世の古城、ウォーリック城にいたっては10分という立地に建つ。有名な歴史スポットが近場にあるという点も、大いに魅力的だ。このホテルなら、歴史巡りを楽しんだ後、街の喧騒とは無縁の心休まるカントリー・ハウス・ホテルで、美味しい料理に舌鼓を打つ―、という充実の週末プランが立てられそうだ。


太陽光をたっぷりと浴びながらリラックスできるテラス・ルーム。
創始者は綿工業の成功者

 マロリー・コート・ホテルは、16世紀後半の建築様式であるエリザベス様式が用いられており、直線的でシンプルな外観と大ぶりの窓が特徴だ。今からおよそ100年前となる第一次世界大戦(1914年―18年)の只中であった1916年に完成した。創始者の名前は、ジェームズ・トーマス・ホルト James Thomas Holt。イングランド北西部ランカシャー・プレストン出身の彼は、老後の人生をウォーリックシャーで過ごすことに決め、この地に邸宅を建てたという。
 ランカシャーといえば、18―19世紀、産業革命の発端の地として知られる場所だ。当地で、それまでの主流産業であった手作業中心の毛織物業から、機械制綿工業への転換が達成されたのだった。ホルトはまさにその時期のランカシャーで、時勢に乗り、綿工業で財を成した人物だ。
 

 

1.Crusted tuna loin, turnip and apple beignet, lime and ginger

カルパッチョ風マグロのたたき

ベッドのショウガのスライスが程よい味の引き締め役を果たしていたスターター。柔らかなマグロのたたきと、中央のじゃがいものフリッターのサクサク感が互いにひきたてあっていた。

 

2. Ham hock ballotine, hazelnut puree

豚肉のバロティーヌ

肉を筒状に成型した煮込み料理の「バロティーヌ」。ほんのり甘いアップルソースにより豚の脂のしつこさが上品におさえられており、なめらかな口当たりが楽しめた。

 

3.A nage of seafood and shellfish, with herbs

シーフードのネージュ

フランス語で「泳ぐ」を意味する「ネージュ」。あんこう、たいなどの白身魚にクリーム仕立てのソースを絡めながら食す。ソースは少々塩気が強く、魚にからませて頂くには、トロミが足りずさらっとしすぎていると感じたものの、たっぷりと染み出した魚介の旨みが味わえる満足の一皿。

 

4.Breast of woodpigeon,smoked ox tongue, red wine jus

モリバトの胸肉 赤ワインソース添え

寒い季節ならではのゲーム(狩猟肉)を主役とした一皿。モリバトの赤々とした見た目にややためらいを覚えたが、絶妙に火が通されており、くさみもなく、赤ワインソースが良く絡み、濃厚な肉の風味を味わえた。