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ツツジの咲き誇る イザベラ・プランテーションを征く
スティル・ポンドで花の盛りを迎えたツツジ=2022年4月22日撮影。

■英王室と長きにわたる関わりを持つリッチモンド。ロンドン南西部のハイソな街である同地に広がるのがリッチモンド・パークだ。シカが多いことでも知られるが、同パーク内にあるイザベラ・プランテーションはツツジの名所として名高い。今号では、ツツジの見ごろを前に、東京ドームの3・4倍という40エーカー(17ヘクタール)の面積を誇る、そのイザベラ・プランテーションについてお届けしたい。

●征くシリーズ●取材・執筆/本誌編集部

ワガママ王の狩猟場

水路の水は、複数のポンプを使って循環するように流れる工夫がなされている。

テムズ河が重要な交通手段としての役割を果たしていた時代、グリニッジ、ウィンザー、ハンプトン・コートなどに英君主は居を構え、疫病が流行するたびに宮廷を移していた。リッチモンドもそうした場所のひとつで、1125年にヘンリー1世が着目したのが始まり。ヘンリー7世がここに宮殿を建てた際、自らが北ヨークシャーに所有していた伯爵領の名にちなみ「リッチモンド・パレス」と命名。周辺の村もリッチモンドと呼ばれるようになったのだった。

リッチモンド・パークは、1637年にチャールズ1世(在位1625~49年、享年48)が王室の狩猟場として約2500エーカーもの広大な土地を囲い込んだことにより生まれた。同王はこの地をレンガ塀で囲い、2000頭のシカを放ったという。塀の長さは8マイル(約13キロ)にも及び、当時は地元民から大きな不評をかったとされている。余談ながら、同王は英王室史で在位中に処刑された唯一の君主となり、現国王のチャールズ3世が「チャールズ」を名乗るかどうか疑問視されていた。

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チャールズ1世以降、歴代君主に愛されたリッチモンド・パークは、ロンドンの「ロイヤル・パーク」の中では最も広大。すなわち、ハンプトン・コートの北に位置するブッシー・パーク(Bushy Park)、ロンドン中心部のグリーン・パーク、ハイド・パーク、ケンジントン・ガーデンズ、セント・ジェームズ・パーク、リージェンツ・パーク、南東部のグリニッジ・パークをおさえ、最大規模を維持している。イザベラ・プランテーションはそのリッチモンド・パーク内に設けられた、大規模植物園と呼ぶべき区域だ。

テーマはオーガニック

シカが入り込まないように、イザベラ・プランテーションが囲われたのは1831年のこと。1953年には一般開放がスタートした。当初はオーク(ヨーロッパナラ)、ブナなどが主だったが、中には樹齢400年を越える古木もあった。もともと「Isabell Slade(小さな谷)」と呼ばれていた場所で、特定の王女や王妃にちなんで名付けられたれた訳ではなく、一帯の土の色から、灰色がかった黄色を意味する「isabel」という言葉が用いられ、それが変化して「Isabell」、やがては「Isabella」となったとする説が有力だという。


同区画の本格的な整備は、1951年から71年にかけて行われた。監督官となったジョージ・トムソンのもと、ウォリー・ミラーWally Millerが心血を注ぎ、シャクナゲを始めとする木々の移し替え、池や水路の設置が進められた。かつて「植物ハンター」として名を馳せたアーネスト・ウィルソンが1920年代に日本から運んだクルメツツジも、スティル・ポンドの周りなどに植え替えられ、植物保護を目的とするだけでなく、美しい庭園として大きなレベルアップが図られたのだった。

これ以降も、ビッグ・ロッタリー・ファンドなどからの財源を得て、断続的に様々な変化が加えられている。しかし、害虫駆除剤や除草剤などは一切使わず、オーガニックな環境で植物を育くむことを大切なテーマとして貫いている。携わる人々の強い思いが、季節ごとに見事な花を咲かせているといえるだろう。

このイザベラ・プランテーションの春をまっさきに告げる植物のひとつが、水路沿いに咲く黄色いコガネミズバショウ。クセのある強い臭いを放つため、欧米では「Skunk Cabbage」(スカンクに例えられる!)と呼ばれるが、ピンクやオレンジ、紫などの花々が多い中、黄色い仏炎苞(茎に直接花をつける肉穂花序を包む苞のうち、大形のものをいう。一見花びらのように見えるが、本当の花は中にある)は見事なアクセントになっている。

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このほか、ツバキ、モクレン、スイセン、ブルーベル、シャクナゲなどが華やぎを沿える。また、夏にはデイリリーやクリンソウ、秋には紅葉、と季節ごとに人々を楽しませてくれる同プランテーションだが、編集部のイチオシはなんといっても、4月中旬~5月初旬のツツジの季節。春の天気に左右され、満開の時期がいつになるか予測は難しいが、できれば4月中旬に一度訪れてみて様子を探り、もう一度行き直すのがお薦め。盛りの頃に訪れることができれば、まさに息をのむような眺めに出会えることだろう。ご幸運を祈ります!

標識の代わりに使われている丸太。
水路は浅いが、子どもだけで立ち入らないよう、十分に注意が必要。
ペッグズ・ポンドそばには冬から3月ごろにかけて咲くヘザーが集められ、春を知らせる。
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Travel Information ※2023年4月2日現在

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リッチモンドパーク地図
住所

Richmond Park Office
Holly Lodge, Richmond Park, Surrey TW10 5HS
※広大な公園であるため、上記のポストコードはあくまで目安。
※ペンブルック・ロッジPembroke Lodge駐車場の公衆トイレそばにビジター・センターあり。


リッチモンド・パークのオープン時間
  • ● 車道に設けられたゲートの開閉時間が「オープン時間」となる。閉門時間前は車道が込むので帰宅時には余裕をもってパークを出発することをお薦めする。
  • ● 冬時間の期間は7:30~16:00が基本。
  • ● 夏時間の期間は7:00~19:30が基本。

※6~7月にかけては21:00までオープン。
※日の出と日没時刻にあわせて微調整が行われるので、www.royalparks.org.uk/parks/richmond-park/visitor-information/opening-times-and-getting-hereにてご確認を。

イザベラ・プランテーション 入場料
  • ● 無料。※パークおよび各駐車場も無料。
  • ● シカが入り込まないよう、フェンスで囲われている。入口は1ヵ所で、開閉式の鉄の扉がついている。
アクセス
  • ● リッチモンド・パーク内の各駐車場から徒歩。イザベラ・プランテーションに最も近い「Peg's Pond Gate」そばの駐車場は障がい者専用。「Broomfield Hill Wood」駐車場から徒歩約15分。「Pembroke Lodge」駐車場から徒歩約25分。
  • ● リッチモンド駅から歩くと片道約1時間。
  • ● 月・水・金曜には無料ミニバスが運行される(2023年は4月5日~11月29日)。1日4便。パークの北西Roehampton Danebury Avenueから各駐車場、イザベラ・プランテーションなどに停車するが、時計回りの巡回ルートのみ。

※詳細はwww.royalparks.org.uk/parks/richmond-park/visitor-information/free-minibus-service-in-richmond-parkにてご確認を。

歩き方
  • ● 入口で園内地図を確認し、滞在時間と自分の体力と相談し、歩くルートを決定。
  • ● 入口そばのペッグズ・ポンドPeg's Pondから、まずはスティル・ポンドStill Pondまでできるだけ水路に沿って歩く。所要15分ほど。ペッグズ・ポンド~スティル・ポンドを往復するだけでも、かなり満足できるはず。
  • ● トムソンズ・ポンドThomson's Pond界隈は樹木の割合が多く、地味な印象。
  • ● 入口そばのトイレは洋式ながら汲み取り式。下水道が整備されていないためという(手を洗うこともできないので、消毒ジェルが用意されている)。慣れない場合は、各駐車場のカフェなどであらかじめ用を済ませておくことをお薦めする。
覚えておくと便利な植物の名称
  • ●azaleas…アゼイリア ツツジ
  • ●rhododendrons…ロードデンドロン シャクナゲ
  • ●camellias…カメリア ツバキ
  • ●magnolia…マグノリア モクレン
  • ●beech…ビーチvブナ
  • ●sweet chestnut…スイート・チェスナット ヨーロッパ栗
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週刊ジャーニー No.1285(2023年4月6日)掲載