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チャートウェル・ハウス
© National Trust Images/Robert Morris

■ 「イングランドの庭」と呼ばれるケントは、のどかで緑豊かな地域だ。その西端にある小さな町ウェスタラムには、ウィンストン・チャーチルが愛したカントリーハウスがある。今号では、彼のプライベートの姿を伝える終の棲家「チャートウェル・ハウス」を征く。

●征くシリーズ●取材・執筆・写真/本誌編集部

チャートウェル・ハウスで撮影された、チャーチル夫妻と孫たち。
© 2004 Topham Picturepoint

英国で最もよく知られた政治家のひとり、元英国首相ウィンストン・チャーチルは、48歳まで定まった住まいを持たず、「根無し草」のように転々と居を移していた。基本的にはロンドンを拠点に生活していたが、実はゆったりした田舎暮らしに憧憬を抱いており、実験的にイングランド南部リングフィールド近くに住んでみたものの、その時はあまり満足しないままに終わっている。そんな彼が一目惚れしたのが、このチャートウェル・ハウスだ。
 この館の起源は14世紀にさかのぼり、荒れ地(chart:古英語)に水源が引かれ、井戸(well)がつくられたことが由来だ。16世紀には、ヘンリー8世が同所から程近いヒーバー城で暮らすアン・ブリン(のちの2番目の王妃)のもとを訪れる際に、宿泊したりもしている。
 チャーチルが同館に出会ったのは1921年。実は学生時代の友人の兄が所有する家であり、当時オークションにかけられていた。ケントを眼下に一望できる立地を気に入った彼は、妻クレメンタインを伴ってチャートウェルを何度も訪ねたという。そして、翌年に館の所有者が亡くなり、弟に引き継がれたためにオークション販売が中止になったことを知ったチャーチルは、すぐに友人に連絡を取って、直接交渉して購入している。

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第二次世界大戦中はほぼ使われなかったものの、1945年の総選挙で惨敗して以降、多くの時間を愛妻とチャートウェルで過ごした。経済的な問題から断腸の思いで何度か売りに出そうとしたが、最終的に周囲の勧めでナショナル・トラストに買い取ってもらい、チャーチルの死後に一般公開することを条件に、最長50年のリース契約を締結。実際に息を引き取ったのはロンドンの別宅だが、ここが終の棲家となった。
 3階建ての館内は、当時の生活ぶりをそのまま残すとともに、チャーチルの生涯を振り返る展示室になっている。貴族の邸宅のように絢爛豪華ではなく、小さめで実用的、そして夫妻の趣味に彩られたプライベートな空間だ。ノーベル文学賞を受賞した作家でもあったチャーチルは蔵書家としても知られており、図書室だけでなく応接室、書斎など至る部屋に本棚が設けられ、隙間なく本が並べられている。本を抜いた際にどこに戻せばいいかわかるように、本と本の間に動物のぬいぐるみが挟まっていたりと、可愛らしい一面も垣間見ることができるだろう。また、絵画好きで制作アトリエ(見学可能)を構えていたチャーチルらしく、そこかしこに自身の作品を含めた数多くの絵画が飾られている。チャーチルは政治家として不遇だった時期に、精神安定のために勧められて絵を描き始めたが、のちに賞を受賞するほどの腕前となった。
 現在、外壁の修復工事中であるため、足場が組まれ、緑色のシートで建物が覆われていることが残念でならないが、一度訪れてみる価値はあるだろう。


The Drawing Room/応接室

© National Trust Images/Andreas von Einsiedel

フランスのド・ゴール将軍から妻クレメンタインに贈られた水晶の鶏の彫刻、フランスの巨匠クロード・モネの作品「チャリング・クロス橋」(1902年)など、フランスとの関係を思わせる品々が目を引く応接室。

The Library/図書室

© National Trust Images/Andreas von Einsiedel

自身の著書専用の棚もある図書室。蔵書の中に日本語の大型本『シェークスピヤ全集』(坪内逍遥・訳)を発見! ちなみに本棚の中央の展示されているのは、ノルマンディー上陸作戦の作戦会議で実際に使用した、フランス・アロマンシュ港の模型。

The Study/書斎

チャーチルが愛用し、数々のスピーチや著作が生み出された机。厳格で近づきがたい父親だったと語られるチャーチルだが、机には数多くの家族の写真が飾られている。建材がむき出しになった天井は、16世紀のテューダー朝時代につくられたものをそのまま活用している。

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The Dining Room/ダイニング・ルーム

© National Trust Images/Andreas von Einsiedel

アーチ状の大きな窓から、お気に入りのガーデンを一望できるダイニング・ルーム。この部屋は設計だけでなく、テーブルや椅子などのインテリアも建築士フィリップ・ティルデンがすべてデザインを担当している。

チャーチルは動物がお好き
6代目の愛猫「ジョック」を探そう!

©Mike Scott

チャーチルは「動物好き」な政治家としても有名で、犬や猫のほか、牛、馬、豚、鶏など多くの動物がチャートウェル・ハウスで飼われていた。

とくにマーマレード柄の猫「ジョック(Jock)」はチャーチルの大のお気に入りの子で、「チャートウェル・ハウスでは猫を絶やしてはならない」という遺言まで残している。そのため、跡を継ぐ猫もジョックと同じように、マーマレード色で胸元と足元が白くなくてはならないという。

その言葉通り、チャートウェル・ハウスには今でも6代目のジョックがいる(写真上)。初代ジョックと同じ柄で、動物保護施設から引き取られた。運が良ければ、敷地内を歩きまわっている姿が見られるだろう。取材班が訪れた日も、ガーデンを歩いていたところ、来訪を歓迎するかのようにこちらへ歩み寄ってくれた。初代ジョックや他の動物たちを埋葬した墓も敷地内にあり、チャーチルが熱烈な動物愛好家であったことが伝わってくる。

このほかにも、広大な庭の湖では彼が同じく好きだったブラックスワン(黒鳥)、金魚や鯉が泳ぐ小さな池のそばにはチャーチルがエサをやる際に座っていた椅子などが、当時のまま置かれている。

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Travel Information ※2022年10月3日現在

Chartwell チャートウェル
Mapleton Road, Westerham, Kent TN16 1PS
Tel: 01732 868381
www.nationaltrust.org.uk/chartwell
オープン時間
ガーデン:10:00〜16:30
ハウス:11:00〜15:40
※冬季はオープン日時が不規則になるので、あらかじめウェブサイトにてご確認を。
入場料
£15.40
アクセス
(車の場合)ロンドン中心部からM25、A25、B2026を経て1時間10分ほど。
(公共交通機関の場合)チャリング・クロス駅、ウォータールー駅、ロンドン・ブリッジ駅からセブンオークス駅まで鉄道で30分。その後タクシーで10~15分。


週刊ジャーニー No.1260(2022年10月6日)掲載