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ポールズデン
© National Trust Images/Chis Jonas

■ スコットランドで高い人気を誇るエールの銘柄「マキューアンズ」の創始者の娘、マーガレット・グレヴィルが愛したポールズデン・レイシー。今号では現エリザベス女王の両親、ジョージ6世とクイーン・マザーがハネムーンを過ごした場所としても知られる同邸宅を征く。

●征くシリーズ●取材・執筆・写真/本誌編集部

マキューアンズ社のスコットランド・エール

ロンドンから車で約1時間。今回紹介するポールズデン・レイシーは、英国南東部サリーの丘陵地帯ノース・ダウンズの見晴らしのよい高台に建っており、淡いレモン・イエローの外壁が特徴的な屋敷だ。邸宅名は、かつて同地を所有していたハーバート・ド・ポールズデン(Herbert de Polesden)とジョン・レイシー(John Lacey)の姓に由来する。14世紀初めに建造され、詩人・劇作家リチャード・シェリダンをはじめとする数多の人々の手を経て、最後の所有者となったのが今回の主役、マーガレット・グレヴィルである。

マーガレットは、スコットランド・エールの銘柄「マキューアンズ(McEwan's)」の創業者、ウィリアム・マキューアンの娘にあたる。スコットランド生まれの父マキューアンは、20歳のときにエディンバラにある叔父が経営するエール醸造所に就職。真摯な働きぶりと商才が叔父の目に留まり、資金援助を受けて1856年、29歳で自身のビール醸造所「マキューアンズ」を立ち上げた。そしてインドや南米など、当時の英植民地へのエール輸出にいち早く乗り出し、大成功を収めている。

 
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そんな敏腕マキューアンが不倫関係に陥った末に誕生した「婚外子」が、マーガレットだ。母親はエディンバラで下宿屋を営んでいた女性で、その夫はマキューアンの醸造所で荷物の運搬を請け負う日雇いポーターだった。夫と死別した後に2人は正式に結婚したが、当時のマーガレットはすでに20歳。物心ついたときから好奇の目や噂話の的にされ、肩身の狭い生活をしてきた彼女は、すっかりひねくれた女性へと成長してしまっていた。

「貴族になりたい」とアイルランド貴族グレヴィル男爵家の長男と結婚したものの、成り上がり商人の子であるマーガレットは社交界では爪弾きもの。必死で礼儀作法や教養を身に付けるが、男爵家の後継ぎとなる子どもに恵まれず、気持ちは荒んでいった。そうした中で長年苦楽をともにした母を失くし、悲嘆に暮れる娘を元気づけようと父マキューアンが娘夫婦のために購入したのが、ポールズデン・レイシーである。

自分の存在価値を見出そうとするかのように、マーガレットは豊富な財産を費やして派手な晩餐会を週末ごとに開き、多くの友人・知人を招待した。かなりの毒舌家として知られた彼女を敬遠する人も多かったが、意外にも英王室メンバーにはとても愛され、とくに同年代のジョージ5世の妃とは親友のように連絡を取り合っていたという。そうした縁から、その息子夫妻(後のジョージ6世とクイーン・マザー)がハネムーンをここで過ごしている。

マーガレットの意向で、寝室やジョージ6世らが滞在した部屋などのプライベートなエリアは公開されていないため、見学できる部屋は多くない。だが、ナショナル・トラストが管理する物件の中で、常に「ベスト10」内に入っているほどの人気スポットでもある。次の週末にでも、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。


The Central Hall/セントラル・ホール

© National Trust Images/Andreas von Einsiedel

吹き抜けになっているエントランス・ホール。父から贈られたこの邸宅をひと目見て気に入ったマーガレットは、パリやロンドンにあるリッツホテルを設計した建築家に大改築を依頼し、2年かけて完成させた。

The Saloon/サロン

© National Trust Images/Andreas von Einsiedel

インドのマハラジャをもてなすためにデザインされたサロン。18世紀イタリアの宮殿にあったパネルや黄金彫刻をそのまま用いている。右端の肖像画はマーガレットが26歳のときに描かれたもので、現在は2階の展示室に飾られている。

The Dining Room/ダイニング・ルーム

© National Trust Images/Andreas von Einsiedel

マーガレットは当時非常に珍しかった女性シェフを雇い、晩餐会では11コースにも及ぶフレンチ・ディナーでゲストをもてなした。左端の肖像画は、マーガレットの父で「マキューアンズ」の創始者だったウィリアム・マキューアン。

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The Billiard Room/ビリヤード・ルーム

ダイニング・ルームでの晩餐の後に、男性陣が集ったビリヤード・ルームに続く談話室。ここでウィスキーやタバコを楽しんだり、手紙をしたためたりしながら、紳士同士の社交を行った。女性用の談話室は隣室に設けられているが、スペースはこの部屋の半分ほど。

3度目のプロポーズでOK
ジョージ6世&クイーン・マザー

©Illustrated London News_NTPL

 多くの上流貴族や政治家がポールズデン・レイシーを訪れたが、なかでもこの邸宅を語る上で欠くことのできない「ロイヤル・カップル」が、現エリザベス女王の両親、ジョージ6世(1895~1952)とクイーン・マザー(1900~2002)だろう。
 ジョージ5世とクイーン・メアリーの次男として生まれたジョージ6世は1920年、25歳のときにストラスモア伯爵家の四女エリザベス(後のクイーン・マザー)と出会い、恋に落ちた。翌年、彼女にプロポーズするが玉砕。しかし諦め切れなかったジョージ6世は、さらにその翌年、自身の妹の結婚式でブライド・メイドを務めたエリザベスに再度求婚するも、またも撃沈。さすがの王子も断念するかと思いきや、彼女以外の女性とは結婚する意志がないことを家族に宣言し、1923年1月に3度目のプロポーズを決行。出会ってから3年、毎年告白され続けたエリザベスは、悩んだ末に求婚を受け入れた。そして婚約から約3ヵ月後、ウェストミンスター寺院で挙式を終えた2人は、クイーン・メアリーの薦めもあって、4月26日~5月7日までの12日間のハネムーンをポールズデン・レイシーで過ごしている(写真上)。

 エリザベスは1942年にマーガレットの訃報を聞いたとき、在りし日の彼女を思い出しながら、こう語ったという。
 「すごく親切でありながら驚くほど不親切で、とても頭の回転が速くて、そして人を楽しませるのが上手なのに意地悪でもあるのよ。彼女がとても恋しいわ」。

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Travel Information ※2022年8月30日現在

Polesden Lacey ポールズデン・レイシー
Great Bookham, near Dorking, Surrey RH5 6BD
Tel:01372 458203
https://www.nationaltrust.org.uk/polesden-lacey
開館時間
11:00~15:30
※平日午前中(11:00~12:15)はガイドツアーのみ。
午後は自由見学可(13:00~15:30)
※10月31日以降のハウス見学は土日のみ
入場料
£14
アクセス
(車の場合)ロンドンからA24を南下。A246に入り、Guildford方面へと進む。所要時間は約1時間10分。


週刊ジャーニー No.1255(2022年9月1日)掲載