ダイアナ元妃 生誕60年 ケンジントン宮殿を征く

■ ダイアナ元妃が衝撃的な事故で世を去ってから24年。もし彼女が存命であれば、今年7月1日には60歳の誕生日を迎えていたはずだった。その記念すべき日に、ダイアナ元妃が暮らしていた「ケンジントン宮殿」のサンケン・ガーデンで、ウィリアム王子とハリー王子が依頼していた「ダイアナ像」が披露された。3人の子どもたちと共に、宮殿をまっすぐに見つめる元妃――。今号では、そのケンジントン宮殿をあらためて紹介したい。

●征くシリーズ●取材・執筆/本誌編集部

プリーツが入ったブラウスにペンシルスカート、長方形の大きなバックルが目を引くベルトを身にまとった、ダイアナ元妃の像。この服装は、1993年に彼女が親しい人に贈ったクリスマスカードの写真をモデルにしたと言われている。その前年にチャールズ皇太子との別居を発表し、自分ひとりの署名で送った初めてのクリスマスカード。今回お披露目された像は元妃の死から20年が経った2017年、ウィリアム王子とハリー王子が依頼して制作されたものだが、新たな人生のスタートを切ったときの母の姿を選んだ両王子の気持ちに胸を打たれる。
また、彫像は建物を背にして設置されるのが一般的であるのに対し、新婚時代から別居、離婚後も暮らしていたケンジントン宮殿を見守るように佇んでいるのも特徴的だ。ちなみに、ダイアナ元妃と一緒にいる3人の子どもたちは、特定の人物を示しているわけではない。慈善事業に熱心だった元妃の人生と功績を象徴しており、子どもが好きだった彼女の「慈愛の精神」を表現している。
さて現在、ケンジントン宮殿にはウィリアム王子夫妻一家のほか、エリザベス女王の従弟にあたるグロスター公爵夫妻やケント公爵夫妻が暮らしている。一般公開されているのは建物の3分の1ほどで、そのほかは英王室のプライベートエリアだ。
同宮殿には、大きくわけて3つの見どころがある。①1688年の名誉革命により共同統治を行うことになったメアリー2世とウィリアム3世夫妻、そしてメアリー2世の妹であるアン女王が建造した「The Queen's State Apartments」、②アン女王亡き後に国王の座に就いたドイツ出身のジョージ1世、そしてその息子ジョージ2世が造営した「The King's State Apartments」、③ケンジントン宮殿で生まれ育ったヴィクトリア女王の幼少期の生活を知ることができる「Victoria: A Royal Childhood」。とくにヴィクトリア女王に関する棟は、生誕200年を迎えた2019年に大改装され、新たに公開されたエリアである。
ケンジントン宮殿は、ノッティンガム伯爵家の私邸「ノッティンガム・ハウス」が起源だ。カトリック復興を目論んだ英国王ジェームズ2世を退位させ、その娘メアリー2世と共同統治者になるべくオランダから来たウィリアム3世は、気管支喘息を患っていた。空気のよどんだロンドン中心部を嫌った彼は、当時の王宮「セント・ジェームズ宮殿」とは別の過ごしやすい屋敷を探し、見つけたのがケンジントン村にあったノッティンガム・ハウスだった。すぐに伯爵から邸宅を買い取り、セント・ポール大聖堂などを手掛けた建築家クリストファー・レンに増改築を依頼、宮殿へと姿を変えている。これ以降、ケンジントン宮殿は今でも王室メンバーが暮らす王室所有物件のひとつとなっている。
これまで宮殿のそばにある「The Orangery」(アン女王時代につくられた旧温室&晩餐会場)でのアフタヌーンティーは高い人気を誇っていたが、今年から同建物はエキシビション用の特別スペースに変身。現在は、20歳を迎えたばかりのダイアナ元妃が身にまとったウェディングドレスが、期間限定で特別展示中だ。この夏、ケンジントン・ガーデンズでの散歩がてら、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

Queen Victoria Birth Room/ヴィクトリア女王 誕生の部屋

ジョージ3世の第4子であるケント公爵の一人娘として、1819年5月24日にケンジントン宮殿で誕生したヴィクトリア。ケント公爵が残した手紙や、家具、絨毯、壁紙などの購入記録をもとに、当時の部屋の様子を忠実に再現している。

The King's Staircase/王の階段

ジョージ1世のために造営された「The King's State Apartments」の螺旋階段。国王に謁見する際に着用が許されていたのは衣服と宝飾品だけで、それ以外の所持品は衛兵に預けないと、この階段をのぼれなかった。18世紀当時は赤い制服を着た近衛兵が壁沿いに等間隔で立ち、警備をしていた。

The Cupola Room/キューポラ・ルーム

「The King's State Apartments」にある宮殿内でもっとも絢爛豪華な部屋。中央に建つ大きな時計塔はオルゴールを兼ね、英国でも活動していたドイツ出身の宮廷音楽家ヘンデルの音楽が流れるようになっている。ヴィクトリア女王は、ここで洗礼を受けた。残念ながら、現在は改修工事中。

The King's Gallery/キングズ・ギャラリー

妻のメアリー2世が死去した後、単独統治となったウィリアム3世のためにつくられたロング・ギャラリー。当初の壁やカーテンは緑色のベルベット仕様で、王はここで諜報員や軍幹部らと面会した。1702年、ウィリアム3世はハンプトン・コート宮殿で落馬して重体となり、運び込まれたこのギャラリーで息を引き取っている。

The Queen's Bedroom/女王の寝室

「The Queen's State Apartments」にある女王の寝室。このベッドは1688年、ジェームズ2世(メアリー2世の父)の2番目の王妃が息子ジェームズ・エドワードを出産する際に使ったもので、セント・ジェームズ宮殿から移された。このカトリック系の異母弟誕生がきっかけで名誉革命が起きたが、本物の男児は死産で、このベッドで秘密裏にすり替えられたとされる噂が絶えなかった。

あれから40年
ダイアナ元妃のウェディングドレスが公開中
Royal Style in the Making

© Historic Royal Palaces

改装された「The Orangery」では、セント・ポール大聖堂での挙式でダイアナ元妃の身を飾ったウェディングドレスを見ることができる。食事やアフタヌーンティーは、仮設された「Kensington Palace Pavillion」で引き続き楽しむことができる。

Travel Information ※2021年7月19日現在

Kensington Palace
Kensington Gardens, London W8 4PX
Tel: 0333 320 6000
www.hrp.org.uk/kensington-palace
開館時間:水~日曜10:00~18:00
入場料:£23
最寄り駅:High Street Kensington / Queensway
※Sunken Gardenは入場無料

週刊ジャーニー No.1198(2021年7月22日)掲載