ダイアナ元妃も訪れた、ロンドンの伯爵邸 スペンサーハウスを征く
© Jarrold Publishing / Spencer House

■ 今年は英国の伝説のプリンセス、ダイアナ元妃の生誕60周年。今号では、そのメモリアル・イヤーを記念して、ダイアナ元妃ゆかりの地のひとつ「スペンサーハウス」を征くことにしたい。

●征くシリーズ●取材・執筆/本誌編集部

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チャールズ皇太子夫妻の公邸「クラレンス・ハウス」、ベアトリス王女(ウィリアム王子の従妹)夫妻が暮らす「セント・ジェームズ宮殿」など、王室メンバーの邸宅が集まるロンドンのセント・ジェームズ地区。その一角に建ち、王立公園「グリーンパーク」に隣接する白亜の大邸宅が、今回ご紹介する「スペンサーハウス(Spencer House)」だ。「スペンサー」の名からわかるように、この建物は英国の名門貴族スペンサー伯爵家のロンドン邸である。スペンサー伯爵家と聞いてピンとこない人は、「ダイアナ元妃の実家」と言えばわかりやすいだろうか。

スペンサー家の歴史は古く、500年以上前のテューダー朝時代までさかのぼる。イングランド中東部ノーサンプトンにて牧羊業で財を成した後、着々と富と権力を拡大していき、すぐに騎士爵の称号を授与された。1603年にはエリザベス1世の死去にともない、イングランド王として即位することが決まったスコットランド王ジェームズ6世が、ロンドンへと向かう旅程でスペンサー家の本邸「オルソープ(Althorp)」に滞在。これにより男爵に叙され、貴族世界への仲間入りを果たした。現在の伯爵位を得たのは1765年のこと。現当主はダイアナ元妃の弟チャールズ・スペンサーで、伯爵としては9代目にあたる。

スペンサーハウスは、一家のさらなる栄華と繁栄を実現させるべく、初代スペンサー伯爵がロンドンの一等地(当時の王宮はセント・ジェームズ宮殿だった)に社交用の私邸として建てたもの。周囲の豪邸が古い赤レンガ造りである中で、古代ギリシャ風の新古典主義様式を用いた白亜の屋敷は目を引き、のちにロンドンで新古典主義ブームを巻き起こす一端ともなっている。夏の社交シーズンになると、伯爵は王族や上流貴族を招待し、昼食会や晩餐会、演奏会や仮面劇鑑賞会などを開いて「コネづくり」に勤しんだ。やがて努力は実を結び、カリスマ性と美貌で社交界を牽引した娘ジョージアナを、英国有数の名家デボンシャー公爵家へ嫁がせるに至っている。彼女の華やかでスキャンダラスな人生は、映画「ある公爵夫人の生涯(The Duchess)」(キーラ・ナイトレー主演)でも描かれているので、ご存じの方もいるだろう。

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スペンサー家は1895年まで同所で社交シーズンを過ごしていたものの、主筋にあたるマールバラ公爵家の居城「ブレナム宮殿」の改築期間中、滞在場所として公爵夫妻に同屋敷を貸与。それ以降、一家がスペンサーハウスに戻ることはほとんどなかったが、現在も所有者はスペンサー家当主だ。1985年には、ヨーロッパ屈指の金融一族「ロスチャイルド家」が賃貸契約を結んでいる。

第二次世界大戦時にはロンドン空襲の被害を避けるため、スペンサーハウスにあった美術品や調度品はすべてオルソープへ避難させていた。ロスチャイルド家は18世紀当時の煌びやかさを取り戻そうと、スペンサー家と協力して邸宅内を復元。大改装を終えた1991年には、エリザベス女王をはじめとする王室一家、スペンサー伯爵家、英首相らを招いて大々的にお披露目し、ダイアナ元妃もその完成を大いに喜んだ。

スペンサーハウスは、ガイドツアーで日曜のみ一般公開されている(ロックダウン解除後の25日から再開)。ロンドンで現存している貴族のタウンハウスは非常に珍しく、ウェリントン公爵邸の「アプスリーハウス」など数えるほどしかない。近場で週末を楽しみたい人は、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

The Ante Room/控えの間

© Jarrold Publishing / Spencer House

かつては「Little Eating Parlour(小客間)」と呼ばれ、ー家のプライベートなダイニング・ルームとして使われていた。右端に見えるドア上部の半円形天井が特徴で、古代ローマの遺構「フォロ・ローマノ」の東端にある「ウェヌスとローマ神殿」のドームをモデルにつくられた。

The Palm Room/紳士専用の談話室

© Jarrold Publishing / Spencer House

食後に男性のみが集まって歓談や喫煙、カードゲームなどを楽しむ紳士用サロン。グリニッジ宮殿にあった国王の寝室をモデルにしており、ヤシの木(palm)をテーマに南国風にデザインされた。女性のみが集まる淑女専用の談話室は上階にある。

The Painted Room/ペインテッド・ルーム

© Jarrold Publishing / Spencer House

英国における新古典主義の先駆けとも言える部屋で、壁にはローマ神話をもとにした「愛の勝利」の寓話が描かれている。写真は天井の一部。初代スペンサー伯爵は、当時の貴族には珍しく恋愛結婚をしており、スペンサーハウスは結婚した翌年に建造された。

The Great Room/大広間

© Jarrold Publishing / Spencer House

スペンサーハウスで最も大きな部屋。1857年に開かれた舞踏会にはヴィクトリア女王も招かれ、ここで夫のアルバート公とダンスを披露した。第二次世界大戦中は、シャンデリアや家具、絵画だけでなく、大理石の暖炉や天井のパネルもすべて取り外し、オルソープへ運び込んでいたという。

Travel Information ※2021年7月12日現在

Spencer House スペンサーハウス

27 St James’s Place, London SW1A 1NR
Tel: 020 7514 1958
www.spencerhouse.co.uk

開館時間:日曜10:30~17:00

入場料:£15
※1時間のガイドツアーのみ。オンラインでの事前予約要。

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週刊ジャーニー No.1197(2021年7月15日)掲載