アーリントン・ロウは村ナンバー・ワンの写真撮影スポット。 撮影に集中するあまり、小川に足を滑らせないよう要注意!
「コッツウォルズ(Cotswolds)」の語源は、羊小屋を意味する「cot」と、なだらかな起伏の原野を意味する「wold」。中世に羊毛取引で栄えたこの一帯には、今なお昔ながらの景観が広がっている。4回にわたり、コッツウォルズの魅力あふれる村々を紹介したい。第3弾は、バイブリー。

●征くシリーズ●取材・執筆・写真/本誌編集部

コッツウォルズとは、グロスターシャーを中心に北はウスターシャー、ウォリックシャー、東はオックスフォードシャー、南はサマセットにまでまたがる2038平方キロの一帯。特別自然美観地域(AONB: Area of Outstanding Natural Beauty)に指定されている。

時がゆるりと流れる村

Bibury

バイブリー

コッツウォルズ中部に位置する小さな村バイブリーは、「イングランドでもっとも美しい村」と称され、高い人気を誇る。

白鳥が優雅に泳ぐコルン川。写真奥の左手がアーリントン・ロウ、右手に広がる草地がラック・アイル。

コルン川に架かる小さな石橋を渡ると、アーリントン・ロウにたどり着く。

「イングランドでもっとも美しい村」。
19世紀に活躍した詩人で芸術家のウィリアム・モリスがこう形容したバイブリー。2010年以降に発行された英国のパスポートを開くと、そこには村を特徴づける石造りのコテージ群「アーリントン・ロウ(Arlington Row)」が描かれており、英国が誇る風景であることは間違いない。

アーリントン・ロウのコテージ。きれいに手入れされた草花からは、住民らが大切に家を受け継いでいる様子が伺える。
村を流れるコルン川(River Coln)とB4425が並行する通りに車を停め、まるで印象派の画家モネが描いた絵画ような小さな石橋を渡ると、ライムストーンで作られた壁とスレートの屋根が特徴的なアーリントン・ロウが近づいてくる。このコテージ群は、1380年頃に修道士が管理する羊毛の貯蔵庫として建てられた後、17世紀に入ってウールの織工らのために改築された。外観からすると2階建てであることがわかるものの、ロンドンなどの都市部にそびえる歴史的建造物に比べると、驚くほどに小ぢんまりとしている。窓枠の傾きや今にも剥がれ落ちそうなスレートの屋根に歴史と趣が感じられる。
アーリントン・ロウの目の前には「ラック・アイル(The Rack Isle)」と呼ばれる湿地帯が広がっている。羊毛が盛んだった時代には、織物を木製のラック(棚・枠)にかけてここで乾燥させていたことからこの名がついたという。草が生い茂るラック・アイルを右手に見ながらコルン川の支流に沿って伸びるフットパスを3分ほど歩くと、その先に旧水車小屋が現れる。かつての織工らはこの小屋とラック・アイル、そしてアーリントン・ロウを行き来して日々の生活を営んだのだろう。木漏れ日の中、小川のせせらぎに耳を傾けながらその様子に思いを馳せてみると、人々の息づかいが聞こえてきそうだ。
機械技術がめまぐるしく発展した産業革命期に、手仕事の重要性を訴えたウィリアム・モリス。バイブリーを「もっとも美しい村」と称したのは、村に漂うこの空気感なのかもしれない。

17世紀に建てられた水車小屋「アーリントン・ミル」。織物生産、脱穀などの施設として村人の生活を支えた後、博物館として利用された。現在は宿泊施設となっている。

コルン川沿いに建ち、ツタに覆われた外観が特徴的なスワン・ホテル。レストランでは地元で獲れたマス料理を堪能することができる。
動画へGo!

週刊ジャーニー編集部では、3分ほどのムービーを制作しました。下の動画を、ご覧ください。

踊り狂うマスが見られる!? Bibury Trout Farm

ファームの入り口はカフェになっており(写真左)、マス料理を手ごろな価格で食べられる(3~9月)。写真右は「Smoked Trout Fillet」(6.95ポンド)。スモークあるいはベイクしたマスにレモンを添えただけのお手軽メニュー(4.50ポンド)もあり!

バイブリー観光の目玉といっても過言ではない場所が「バイブリー・トラウト・ファーム」。1902年に創業し、国内でもっとも古い養殖場として名高い。もともとは、「地元の川をブラウン・トラウトがのびのびと泳ぐ環境にしたい」と考えた自然主義者がマスを育てるための施設として作ったのが始まり。広大な敷地内で、ニジマスやブラウン・トラウトが養殖される。年間最大で600万個にのぼる卵が孵化するのだそう。餌やり、釣り(4~9月)、バーベキュー、ピクニックをすることができるほか、スモークしたマスなどをお土産に買うこともできる。

入場料:大人4.50ポンド、子供3.25ポンド www.biburytroutfarm.co.uk

trout

マスの餌やりを体験してみよう!

入り口で入場料を支払い、餌を購入(カップ1杯60ペンス、バケツ1杯6ポンド)。1カップはすぐになくなることが予想されたので、取材班は思い切ってバケツを選択!


敷地内にはコルン川の水を利用したいけすがいくつも連なっている。静まりかえった水面を見ていると魚がいるのかどうか不安になる。代わりに鴨たちがたむろしていて、フレンドリーに近づいてくる…。ひょっとして魚の餌目当て!?


数あるいけすの中から適当な場所を選び、直径1センチ弱の丸い餌をごっそりつかんで、いけすにポイッ!


次の瞬間、水中で息を潜めていたマスが次々と現れ、競うようにして一斉にジャンプ! まるで水がボコボコと沸騰しているかのよう! 途中からは思った通り鴨も参戦。あまりの面白さに夢中になって撮影していると、魚たちの上げる水しぶきで服がびしょぬれになってしまった…。餌やりの際はご注意を。

sheep
アーリントン・ロウに宿泊!

9 Arlington Row

石造りのコテージ群アーリントン・ロウは現在、ナショナル・トラストが所有し、同団体管理の下で一般の人々が暮らしている。なんとこのうちの1棟、アーリントン・ロウ9番地はホリデー・コテージとして利用されていて、観光客も滞在することができる。1棟貸しのセルフ・ケータリング・スタイルなので、アーリントン・ロウの住人になった気分を味わえる場所だ。
ベッドルームは2つで、最大で3名が宿泊可能。歴史的建造物とはいえ、寝室や水回りはモダンに改装されているので、そのあたりはご安心を。観光客がほとんどいない早朝や夕暮れ時に村を散策したり、ここを拠点にコッツウォルズのほかの村々を訪れてみたりするのも良さそう。最低3泊から宿泊できるが、土曜からの7泊が推奨される(予約もしやすい)ので、時間をたっぷりとって旅の計画を。

Travel Information

※2018年8月27日現在

■ロンドンから車

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M40でオックスフォード方面に向かい、ジャンクション8でA40に進む。28マイルほど走りバーフォードを過ぎたあたりでB4425へと左折。8マイルほど走ると到着する。ロンドンから約1時間40分。ロンドンからM4でスウィンドン方面に走り、ジャンクション15でA419→A417と進み、サイレンセスターからB4425をたどって行くルートもあり。

■ ロンドンから公共交通

London Paddington駅から電車でKemble駅へ(約1時間15分)。駅からはタクシーで20~25分。

週刊ジャーニー No.1050(2018年8月30日)掲載