
「コッツウォルズ(Cotswolds)」の語源は、羊小屋を意味する「cot」と、なだらかな起伏の原野を意味する「wold」。中世に羊毛取引で栄えたこの一帯には、今なお昔ながらの景観が広がっている。今週から4回にわたり、コッツウォルズの魅力あふれる村々を紹介したい。まず第1弾は、ボートン・オン・ザ・ウォーター/ストウ・オン・ザ・ウォルド/バーフォード。
●征くシリーズ●取材・執筆・写真/本誌編集部

コッツウォルズのヴェニス Bourton-on-the-Water
コッツウォルズの中でも特に人気の高い水辺の村。中心部を流れるウィンドラッシュ川と、そこに架かる石橋が作り出すのどかな風景で人々を魅了している。


村の風景を特徴づけるウィンドラッシュ川。澄みきった水がさらさらと流れ、子供でも安全に遊べるほど緩やかな小川だが、かつては今よりも広くて深く、さらに村のより南方を流れていたと言われる。現在の姿になるのは遅くとも17世紀初頭で、村にあった水車小屋の生産性をあげるため、村の中心を水路が通るよう変更されたと考えられている。これに合わせて17世紀半ばから20世紀にかけて5つの石橋が架けられ、「コッツウォルズのヴェニス」と謳われる現在の光景が生まれた。
中心部は1時間もあればさくっと回れるほどのコンパクトさ。ハイストリートには雑貨店やカフェが建ち並ぶが、川のほとりを散策するのが村の楽しみ方。取材班が訪れた7月中旬。多くの観光客や地元の人が川沿いで犬の散歩をしたり、話に興じたり、アイスクリームを食べたりと思い思いの時間を過ごしていた。川の水に触れてみると、強い日差しとは対象的にひんやりとして気持ちがいい。きれいに整えられた土手に腰を下ろして靴を脱ぎ、素足を水につけてパシャパシャと水遊びしてみれば旅の思い出も深まるはず。
そのほか、観光客向けのアトラクションが徒歩圏内にあることも魅力のひとつ。川沿いの旧水車小屋は現在、「Motoring Museum(自動車博物館)」となっている(下記参照)ほか、村全体を9分の1サイズに縮尺して再現した「The Model Village(モデル・ヴィレッジ)」(下記参照)、フラミンゴ、ペリカンなど、500種類以上の鳥が集まった「Birdland(バードランド)」など。散策だけでは物足りない、という人の欲求も満たしてくれるはず。
村から北へ歩いて30分ほどの場所にある村ロウアー・スローター(Lower Slaughter)には、マナー・ハウスがあるので、足を伸ばして食事やアフタヌーン・ティーを堪能してみてはいかがだろうか。

【写真下】散策の途中、ティールームで休憩したり、地元の人が開催しているマーケットやショップなどに足を運んだりして、村の雰囲気を味わおう!
動画へGo!週刊ジャーニー編集部では、4分弱のムービーを制作しました。
下の動画を、ご覧ください。
収集家の熱意に脱帽 Cotswold Motoring Museum

自動車の歴史を紹介する博物館。創業は1978年。英国人収集家のマイク・キャバナー氏が水車小屋として使われていた建物を改装してオープンした。 さかのぼること20年前、キャバナー氏は英自動車メーカー、ライレー社のスポーツカー「Brooklands」(1929年製)を30ポンドで購入。以来、気に入ったものを次々を買い集めた。当時南アフリカに住んでいたキャバナー氏は、英国に戻ってきてこの元水車小屋が売りに出されていることを知ると、収集品をすべて輸送。そうしてこの博物館が誕生した。
エンジンオイルの臭いが漂う空間に、クラシック・カーのほか、レトロなバイクや自転車、交通標識、おもちゃが所狭しと並ぶ。時代によって変化するデザインの変遷は、乗り物ファンでなくとも楽しめる。

【同下】ディスプレイされるクラシック・カー。丁寧に手入れされていて、ピッカピカ!
【同右上】コッツウォルズを走った乗合馬車。
ミニチュア・サイズの村 The Model Village

ボートン・オン・ザ・ウォーターの村を9分の1サイズで再現したモデル・ヴィレッジ。隣接するパブ「The Old New Inn」の元オーナーの発案で、地元の職人らによって5年間かけて作られた。完成は1937年。
村を流れる川や石橋、住居、教会、ショップなど驚くほど忠実に作られ、教会からは音楽さえ聞こえてくる。建物の中の家具や人にまで気を配って作られたものもあり、その精巧さに作り手の村に対する愛を感じずにはいられない。

7つの道が交わるマーケットの町 Stow-on-the-Wold
ボートン・オン・ザ・ウォーターから北へ約6キロ。マーケットとしての古い歴史を持つストウ・オン・ザ・ウォルドは、市場の名残である広場が今も町の中心だ。


コッツウォルズ一帯でもっとも高地(標高およそ250メートル)に位置するストウ・オン・ザ・ウォルド。7つの主要道路が合流する交通の要衝として、古くはヘンリー1世の命を受けて市場が開かれた。14世紀に入るとエドワード3世の勅許により年に1度、羊毛と家畜を取引する市場が設けられ、全盛期には1度に2万頭の羊の売買が行われるまでに成長した。中心部の広場(マーケット・スクエア)には細い小路が何本か今も残っており、これらはその昔、羊の群れを整列させるために使われていたという。羊毛産業が衰退すると、馬の品評会が行われるようになり、現在も年に2度、近隣の広場で開催されている。
マーケット・スクエアは四方が建物に囲まれ、ギフト・ショップやティールームが並びにぎやかな雰囲気。周辺には、947年まで起源をさかのぼることができるイングランド最古の「inn」(宿泊可能な酒場)のひとつ、「The Porch House」もあり、現在も宿泊施設兼パブとして人々を迎えている。
こだわりのオーガニック・ファーム Daylesford Farmshop & Café

ストウ・オン・ザ・ウォルドから東へ車で10分。周囲を牧草地に囲まれ、車でなければ行きづらい場所にありながら、多くの人を惹きつける店がこのオーガニック・ファーム。こだわりの自然派食材、天然素材のキッチン雑貨などが販売されるほか、レストランも併設される。
活気ある東の玄関口 Burford
ロンドンから車で約1時間40分。「はちみつ色」の家々が目につくようになれば、そこがコッツウォルズの東の玄関口バーフォードだ。

小高い丘から斜面に沿ってメインストリートが伸び、その先には田園風景が広がるバーフォード。11世紀に商人ギルドが結成され、現在の町が形作られた。600年にわたり市場として発展、その後は駅馬車の町としての役割を果たした。メインストリートの中ほどにある白と黒を基調としたチューダー朝の建物「The Tolsey」は、かつて商人らが税金を納めた場所。現在はミュージアムとして町の産業を紹介する。
大通りには、典型的なコッツウォルズの建物以外にも、様式の異なる建物が並ぶので観察しながら歩くのも一興。センスのいいアンティーク・ショップや雑貨店を覗けば英国らしい物に出会えるかも。老舗ベーカリー「Huffkins」(ストウ・オン・ザ・ウォルドにもあり)は日本でも話題の名店。
Travel Information ※2018年8月13日現在
■ロンドンから車

M40でオックスフォード方面に向かい、ジャンクション8でA40の出口を出る。
Burford
A40をしばらく進みA361に右折する。ロンドンからおよそ1時間40分。
Bourton-on-the-Water
Burfordへと続くA361で曲がらずそのままA40を進み、A429に右折。そこから5マイルほど。ロンドンからおよそ2時間。
Stow-on-the-Wold
Bourton-on-the-Waterを出てA429を北上するか、Burfordを出てA361→A424→A429を北上すると到着する。ロンドンからおよそ2時間。
■ ロンドンから公共交通
Burford
London Paddington駅から電車に乗り、Hanborough駅で降りる(所要1時間ほど)。バス233のBurford行きに乗っておよそ50分。または、Oxford駅からバス853のCheltenham/Gloucester行きに乗って約45分。
Bourton-on-the-Water、Stow-on-the-Wold
London Paddington駅から電車に乗り、Moreton-in-Marsh駅で降りて(所要1時間半ほど)、バス801(Cheltenham行き)に乗り換える。およそ20分でStow-on-the-Wold(バス停はLibrary)に到着。さらに10分バスに揺られるとBourton-on-the-Waterにたどり着く。
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週刊ジャーニー No.1048(2018年8月16日)掲載