
●征くシリーズ●取材・執筆・写真/本誌編集部
コッツウォルズ、コーンウォールなどと並び、必見の英国カントリーサイドに挙げられる湖水地方。この「湖水地方」と言う場合、その大半は「湖水地方国立公園 Lake District National Park」を指していることが多い。イングランドとウェールズにある国立公園の中で最も広く、約2243平方キロメートルと東京都(約2188平方キロメートル)の広さに匹敵する面積を誇る国立公園だ。
その名にふさわしく、公園内には小湖、ため池を含めた90近い湖があるが、「Lake」と名のついたものはたったのひとつで、その多くには「water」、あるいは古英語で湖・池をさす「mere」、小湖を意味する「tarn」、ため池や貯水池を意味する「reservoir」という単語が使われている。
また、214もの丘陵があり、イングランドの最高峰、スコーフェル・パイク山 Scafell Pikeがあるのも湖水地方の魅力のひとつ。平坦なイングランドに珍しく、山と湖を同時に望める景勝地が拡がる。
湖水地方は「ピーター・ラビットの里」または「英国ロマン派詩人、ワーズワースの故郷」などといった枕詞付きで語られることが多く、作家が住んでいた家や作品を紹介するミュージアムなど文学関連の見所も確かに多い。しかし、その醍醐味はなんといっても水と緑に囲まれた自然。自然なくしてピーター・ラビットもワーズワースの美しい詩も生まれ得なかったといっていい。
風光明媚に極みがかかるこれからの季節、湖水地方で堪能すべきは、やはり「紅葉」。空気も澄み渡り、ウォーキングで体を温めれば冷気も心地よく感じられる、10月末から11月にかけてが、湖水地方の紅葉シーズンだ。ちなみに紅葉は、1日の最低気温が10度以下の日が続くことで進行し、5度以下になると一気に進むといわれる。「昼夜の気温の差が大きい」「夏が暑く日照時間が長い」「夏に十分な雨が降る」「湿気が少なく乾燥している」などが美しい紅葉の条件だ。英国では、日本で見られるように赤く染まる紅葉はほぼなく、「黄葉(おうよう)」「褐葉(かつよう)」と呼ばれる黄色や褐色に色づくものがほとんどだが、灌木が枯れゆく姿、そしてそれが湖面に映る姿は、日本の紅葉に負けず劣らず美しい。
湖水地方は訪れたことがあるけれど、これまでピーター・ラビット、ワーズワース漬けになってしまっていた方、あるいは英国在住歴は長いのに実は行ったことがないという方、はたまた湖水地方の新しい魅力を貪欲に探している方に、今回は湖水地方の秋を満喫する紅葉コースをご紹介したい。
その名にふさわしく、公園内には小湖、ため池を含めた90近い湖があるが、「Lake」と名のついたものはたったのひとつで、その多くには「water」、あるいは古英語で湖・池をさす「mere」、小湖を意味する「tarn」、ため池や貯水池を意味する「reservoir」という単語が使われている。
また、214もの丘陵があり、イングランドの最高峰、スコーフェル・パイク山 Scafell Pikeがあるのも湖水地方の魅力のひとつ。平坦なイングランドに珍しく、山と湖を同時に望める景勝地が拡がる。
湖水地方は「ピーター・ラビットの里」または「英国ロマン派詩人、ワーズワースの故郷」などといった枕詞付きで語られることが多く、作家が住んでいた家や作品を紹介するミュージアムなど文学関連の見所も確かに多い。しかし、その醍醐味はなんといっても水と緑に囲まれた自然。自然なくしてピーター・ラビットもワーズワースの美しい詩も生まれ得なかったといっていい。
風光明媚に極みがかかるこれからの季節、湖水地方で堪能すべきは、やはり「紅葉」。空気も澄み渡り、ウォーキングで体を温めれば冷気も心地よく感じられる、10月末から11月にかけてが、湖水地方の紅葉シーズンだ。ちなみに紅葉は、1日の最低気温が10度以下の日が続くことで進行し、5度以下になると一気に進むといわれる。「昼夜の気温の差が大きい」「夏が暑く日照時間が長い」「夏に十分な雨が降る」「湿気が少なく乾燥している」などが美しい紅葉の条件だ。英国では、日本で見られるように赤く染まる紅葉はほぼなく、「黄葉(おうよう)」「褐葉(かつよう)」と呼ばれる黄色や褐色に色づくものがほとんどだが、灌木が枯れゆく姿、そしてそれが湖面に映る姿は、日本の紅葉に負けず劣らず美しい。
湖水地方は訪れたことがあるけれど、これまでピーター・ラビット、ワーズワース漬けになってしまっていた方、あるいは英国在住歴は長いのに実は行ったことがないという方、はたまた湖水地方の新しい魅力を貪欲に探している方に、今回は湖水地方の秋を満喫する紅葉コースをご紹介したい。
紅葉オススメエリア
南部
● コニストン・ウォーター Coniston Water● ターン・ハウズ Tarn Hows
● ライダル・ウォーター Rydal Water
● ラングデール Langdale
● ホークスヘッド Hawkshead
【コニストン・ウォーター】モーターボートの世界水上スピード記録保持者であったドナルド・キャンベルが記録更新にチャレンジし、時速300マイルを達成した直後に、湖面にせり出た岩に激突し即死したという曰くつきの湖。ヴィクトリア時代の思想家、ジョン・ラスキンが愛した湖としても知られ、ラスキンは屋敷の中からでも庭からでもコニストン湖を眺められるブラントウッド邸を購入し、晩年をここで過ごした。
【ラングデール】ラングデール・パイクスと呼ばれる、ごつごつとした岩肌が独特のシルエットを見せる峰や、リトル・ラングデール、グレート・ラングデールの美しい渓谷を望むことができる。詳しくはこちらにて。
西部
● ワスト・ウォーター Wast Water● ハードノット・パス Hardknott Pass
【ワスト・ウォーター】周囲は11キロとそれほど大きくはないが、英国で最も深いといわれる湖。南東湖岸の一番深い部分は水深82メートルにも及ぶ。近くにイングランドで一番高いスコーフェル・パイク山があり、難易度が上のウォーキングコースとセットで楽しめる。詳細はこちらにて。
www.visitcumbria.com/wc/hardknott-pass/
北部
● ダーウェント・ウォーター Derwent Water● ボローデール Borrowdale
● アルズウォーター Ullswater
● アイラ・フォース Aira Force
【ダーウェント・ウォーター】 1855年から1903年にかけて、湖水地方でのポター家の滞在先といえばダーウェント湖畔だった。ビアトリクス・ポターの絵本に登場するベンジャミン・バニーやリスのナトキンが生まれた場所といわれる。ちなみに175年以上の歴史を誇る色鉛筆ブランド「ダーウェント」は、ケズィックを拠点に小さな鉛筆製造所から始まり、現在は世界中で愛用されるファインアートメーカーに成長している。
www.keswick.org/
http://www.thwaitehow.co.uk/borrowdale/
【アイラ・フォース】 アルズウォーターまで来たら、ぜひ訪れたいのがアイラ・フォース。フォースは滝Forceの意味で、ここは湖水地方の中でも最も壮麗な滝と称えられている。日本の華厳の滝の100分の1ほどのスケールで拍子抜けする日本人観光客も少なくないが、紅葉スポットとしてはオススメ。車では至近まで行くことができず、駐車場から歩いて約20分ほど。
The Borrowdale Hotel
ボローデール・ホテル
Borrowdale, Keswick, Cumbria CA12 5UYTel. 017687 77224
Fax. 017687 77338
Email: このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
www.lakedistricthotels.net
ピーター・ラビット誕生の地
Beatrix Potter
ビアトリクス・ポター 1866-1943

絵本の出版を強く薦めたのもローズリーだった。著作権使用料を得、両親から遺産を譲り受けたポターは大好きな湖水地方の土地を次々と買い上げ、晩年には牧羊場を購入、経営した。14の農場と4千エーカーにおよぶこれらの土地は彼女の遺言によりナショナル・トラストに預けられ、今もその美しさが失われないよう保たれている。
2006年に公開されたレネ・ゼルウィガー主演の『ミス・ポター』は、ポターの人生やピーター・ラビットシリーズ出版への道のりを描いた彼女の伝記的な映画。婚約してまもなく死別してしまった編集者ノーマン・ウォーン(ユアン・マクレガー演)とのはかない恋も描かれている。湖水地方でのロケも実現し、美しい大自然の映像も盛り込まれているのでまた観ていない方は要チェックだ。
ビアトリクス・ポターの世界

ピーター・ラビットに登場するキャラクター

● あひるのジマイマ 自分が産んだ卵がすべて農家の人にとりあげられてしまっていたジマイマは親切な紳士に誘われ、彼の家で卵を産み、孵そうとする。しかし、その紳士は 実はずるいキツネだった…。
● ティギーおばさん ルーシーという少女はおっちょこちょいで何度もハンカチを失くす。ある日、失くしたハンカチを探していると、彼女のハンカチを干しているハリネズミのティギーおばさんに出くわす。
● 子ぶたのブランド 子ぶたのブランドは市場に行く途中、森で迷い、見知らぬ人の小屋で一夜を過ごすことになる。しかし、そこには女の子ぶたウィグが閉じ込められていて、ブランドは逃げるように忠告される。
ヒル・トップ

ナショナル・トラスト

水仙に魅せられて
William Wordsworth
ワーズワース 1770-1850

妹ドロシーの存在
ワーズワースの詩作活動を、生涯を通じて支えたのが、生涯独身を貫き、兄の片腕として一生を送った妹のドロシー。彼女は生活・行動のほとんどをワーズワースと共有し、それは彼が結婚してからも変わることがなかった。ドロシーもまた詩人であり、彼女の詠んだ「仔鶉の詩」には「私は兄を愛している。おそらく独占欲とも言える形で。だから、明日行われる兄の結婚を控えて、今、これほどまでに苦しんでいるのだ。表に出してはならない感情ゆえにこそ、これほどまでに苦しく、切なく、心に血の涙を迸らせて…。」と綴られている。ワーズワースの書いた「ルーシー詩篇」もまた、公にはできない妹への愛を詩として昇華させたものという説があり、文人たちの間ではその強い愛情は「兄妹の絆を越えたもの」と囁かれていた。現在のワーズワース研究の多くはドロシーの日記から判明したことも多く、ワーズワースの名を世界に知らしめる上でもドロシーは大きく貢献した。ダブ・コテージ

ライダル・マウント
Travel Information
※2008年9月1日現在
アクセス
車
ロンドンからはM1でノーサンプトンNorthamptonを通過、レスターLeicesterの手前でM6にのり、ジャンクション36で降りてA591でウィンダミアまで、あるいはジャンクション37で降りてA66でケズィックまで。ちなみにロンドンまでの帰路は、ウィンダミアからケンダルへ出てM6にのり南下するのが一般的だが、コッカーマスやケズィックなどの北部に滞在していた場合は北東部のペンリスまで出てそこからM6にのるのも手。ジャンクション37にあるKillington Service Areaでは美しい湖の景色を望みながら食事ができるので、ぜひお立ち寄りいただきたい。電車
ロンドン・ユーストン駅からオクスンホルム・レイク・ディストリクトOxenholme Lake Districtまで約3時間半。オクスンホルム・レイク・ディストリクトからウィンダミアまで湖水線で約20分。コーチ
ロンドン・ヴィクトリア・コーチ・ステーションからウィンダミアまで約7時間。Dove Cottage
ダブ・コテージ ①

Tel: 01539 63514
www.wordsworth.org.uk/
Rydal Mount
ライダル・マウント ②
Ambleside, Cumbria LA22 9LUTel: 015394 33002
www.rydalmount.co.uk
Wordsworth House
ワーズワース・ハウス ③
Main Street, Cockermouth, Cumbria CA13 9RXTel: 01900 820884 (Infoline)
Hill Top
ヒル・トップ ⑤

Tel: 015394 36269
www.nationaltrust.org.uk/hill-top www.nationaltrust.org.uk/beatrixpotter
The Grasmere Gingerbread shop
グラスミア・ジンジャーブレッド・ショップ ④

Church Cottage, Grasmere, Ambleside, Cumbria LA22 9SW
Tel: 015394 35428
www.grasmeregingerbread.co.uk
Beatrix Potter Gallery
ビアトリクス・ポター・ギャラリー ⑥

Tel: 015394 36355
The World of Beatrix Potter Attraction
ビアトリクス・ポターの世界 ⑦
Bowness-on-Windermere, Cumbria LA23 3BXTel: 015394 88444
www.hop-skip-jump.com
※番号は上のMAPと対応
週刊ジャーニー No.541(2008年9月18日)掲載