2011年1月20日 No.660

取材・執筆・写真/本誌編集部

Ockenden Manor
オッケンデン・マナーを征く

ガトウィック空港にほど近いウェスト・サセックスの小さな町に、
ミシュラン1つ星を8年も保持し続けているレストランがある。
同レストランを有するのは、かつて製鉄業で潤った
この町の繁栄を伝えるかのように佇むマナー・ハウス。
立地もほどよく、宿泊もでき、美食にありつけるという、この館を今号では征くことにしよう。

 

 レストランの評価と格付けであまりにも有名な「ミシュラン・ガイド」――。フランスで始まり81年以上の歴史を持つこのガイドは、つい最近まで欧米を対象とするものであったが、2007年、「東京版」が初の欧米以外の版として登場。一昨年には「京都・大阪版」も発行され、昨年発行の2011年版では、新たな都市を加えて「東京・横浜・鎌倉版」、「京都・大阪・神戸版」として出版されている。
 2010年版では、新参者の東京が、一都市としては世界最多の星を獲得、三つ星も本場フランスをしのぐ11店に輝き、日本が一挙に「世界で最も洗練された飲食マーケット」として欧米人の注目を集めた格好だ。日本人として誇らしくなるこの朗報の陰で、実は英国も地味ではあるが、35年という英国版発行史上、最多の星を獲得していた。その数百四十。東京が一都市にして261の星を獲得していることを考えると、そこには大きな開きがあるものの、英国、ロンドンもやはり美食の主要国および都市として一定の水準を保ちつつ、年々、磨きがかけられているといえよう。2000年版での英国の星の獲得数は59。10年の間に倍近くに増えていることからもその発展ぶりが伺える。

とはいえ、「世界で最も洗練された飲食マーケット」を首都とする国を離れて、食に関しては何かと不名誉なイメージのつきまといがちな英国に住む我々にとって、「バリュー・フォー・マネー」かつ舌鼓を打てるレストランを見つけるのは至難の業。たとえミシュランの星を獲得していたとしても、いくら現地の新聞や雑誌で高い評価を受けていたとしても「なぜ?」と首をかしげてしまう店も少なくない。それゆえ、本誌編集部には、日本人の視点からみた「英国の美味しい店」を日本人に紹介する使命があり、そのためにはせっせと足を運び、ミシュラン調査員よろしく試食する必要があるのである。
 そんな使命感を胸に、冬時間に変わって間もない11月初旬の朝、取材班は車を南に走らせた。比較的暖かだった10月から一転、寒さに背筋が伸びるような朝だった。空は快晴、清々しい秋晴れの日に恵まれた。

 

1.Truffle Soup
Autumn Truffle, Foie Gras,
Root Vegetables, Pancake

トリュフのスープ

フォアグラとトリュフを使ったぜいたくな1皿。パンケーキを細くスライスし、ヌードル風に仕上げてあるのが、日本人にとってはどうも中華を彷彿とさせる庶民的なイメージで残念。かなりリッチな味わいなのだが、塩味が強めで、食べ終わる頃にはちょっと飽きてしまっていた。1品目にして先行きが不安に。

 

2. Scallops
Etuvee of Leeks,
Smoked Bacon and Onion Tart

ホタテのソテー
リークの蒸し煮添え

ホタテの抜群な火の入りといい、最大限に引き出されたリークの甘みといい、シェフの腕前に脱帽させられ、1品目の不安が見事にかき消された。カリカリのスモークベーコンにサンドされたオニオン・タルトもまた、とろっとした食感と甘みがベーコンと好相性。見た目はなんともシンプルながら、全体に見事なハーモニーを奏でており、この日のハイライトとなった1品。