2010年7月15日No.634

取材・執筆・写真/本誌編集部

アルプスの峰々と古城が美しい 白鳥が集う村
フュッセン&シュバンガウを征く

 

◆ロマンティックな道のり

ドイツには、英国のロンドン、フランスのパリ、日本の東京に匹敵するような、その国を代表する一大都市というものがない。ドイツの正式名称が「ドイツ連邦共和国」であることからもわかるように、中世の時代からこの地域には自由都市や小さな国家が連立していた。そのため、北部、南部、中部とエリアによって異なるユニークな文化が発達し、行く先々でさまざまな様相を見せるのがドイツの醍醐味でもある。
首都ベルリン、ミュンヘン、ハンブルクといった主要都市もさることながら、ドイツの観光名所として親しまれているのは、国内に150以上もあるといわれる「観光街道 Ferienstrae」。これらはドイツの政府観光局や自治体が、それぞれのテーマに沿って史跡や景勝地を結んだルートで、国内外の旅行者のために企画運営されているものだ。そこに一本の道が通っているわけではなく、地図上で主な観光名所をつなぎ、その位置関係をわかりやすく示した便宜上の「街道」。その通りに訪問順路が定められているわけでもなく、旅行客は自分の興味、関心に合わせて好きな場所を訪れればよい。
グリム兄弟とその童話や伝説にゆかりのある地を結ぶ「メルヘン街道」やドイツの文豪ゲーテの足跡をたどる「ゲーテ街道」、オーストリアの国境近く、アルプス山脈の自然を結ぶ「アルペン街道」、高級温泉保養地バーデン・バーデンと森や湖を結ぶ「ファンタスティック街道」などは、日本人観光客の利用度も高いルートだが、最も知名度があり、ドイツ観光の最大の目玉になっているのが、お馴染み「ロマンティック街道」。ヴュルツブルクをスタート地点とし、ローテンブルク、ネルトリンゲン、アウクスブルク、終点のフュッセンまでを結ぶ、全長約350キロの道のりには、中世のバイエルンを髣髴とさせる町や村、芸術や自然に浸れるスポットが満載だ。
ロマンティック街道の道程を示す標識  「ロマンティック街道」が誕生したのは1950年。2010年で60周年を迎えた。この街道の名は既述のようにバイエルン地方の観光を推奨するために名づけられたものではあるが、「ローマ風の」という意味合いも込められており、この辺りに紀元前後のローマ人が作った「ローマ街道Roman Road」が存在していることを指す。
紀元前15年に、現在のイタリア北部からアルプスを越えてレヒ川上流までを結ぶ「クローディア・アウグストゥス街道」という街道の建設が始まり、紀元47年にはフュッセンからアウクスブルクを越え、より北へと拡張された。中世の時代には、さらに北のドナウ川、マイン川と交差することで、重要な通商ルートとして栄えたという。その道程と、現在のロマンティック街道のルートはぴたりとは重ならないものの、ほぼ同じ道筋を辿ることから、ロマンティック街道はローマ街道であると誤解されることも多い。
ロマンティック街道をめぐる観光バスツアーのほとんどは、各スポットを駆け足で周る旅程のものがほとんどだが、バイエルンの雄大な自然と中世の街並みの美しさに浸るなら、あえて、ひとつの場所に留まってみるのも一案。とくに、オーストリアとの国境にほど近いフュッセンは、アルペン街道の通過地点でもあり、ノイシュヴァンシュタイン城、ホーエンシュヴァンガウ城の2大古城を訪れるのにも最適のロケーションで、さらにアルプスの大自然を堪能できる保養地としても利用価値が高い。