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2017年3月9日

 

ご当地ワインと郷土料理&名産物⑲スペイン・リオハ地区 再考

遅く訪れた近代化の機運

 

スペインのワイン産地として最も名高いところといえば、リオハ。今号では、このリオハに今一度立ち戻ってお届けすることにしたい。スペインにブドウ栽培とワイン醸造を持ち込んだのは古代フェニキア人。つまり、古代ローマ人によるフランスにおけるワインの歴史より古いことになるが、リオハで初めて近代化が進んだのは19世紀半ばからと、決して早くない。この近代化を起こした人物が2人いる。今でも最上質のリオハ・ワインと位置づけられる、マルケス・デ・ムリエタMarqués de Murrietaとマルケス・デ・リスカルMarqués de Riscalの創立者たちである。

 

19世紀半ばの 特需が招いた質の低下

19世紀半ばにフランスのブドウの樹がウドンコ病の大被害を受け、続いてフィロキセラ(ブドウ根アブラムシ)によってほとんどのブドウ畑が荒廃してしまうと、フランスはスペインとの間に通商条約を結び、ワインの輸出に対する関税を大幅に引き下げ、ビルバオ港からリオハ・ワインを大量に輸入するようになった。リオハのワイン産業は猛烈な勢いで拡大し、その当時、人気が高かったものの栽培に手のかかるテンプラニーヨ種より、ウドンコ病に抵抗力があって大量生産ができるガルナッチャ種を使ってワインが盛んに造られるようになる。しかもドウロ川やラ・マンチャあたりのワインと混合してフランスに輸出していた。

立ち上がった2人の造り手

そのような中、1870年代まで続いていたスペイン王位継承による内乱で、負け側についたためにロンドンに亡命中だったリオハ地方出身で元首相の将軍、ビトーリア公エスパルテロEspartero, Duque de Victoriaの影響を受け、リオハ・ワインの将来を案じ、近代化の必要性を強く感じた男がいた。ビトーリア公エスパルテロの副官で、同じくロンドンに亡命していた大佐ルシアーノ・デ・ムリエタLuciano de Murrietaだ。彼は、スペインへの帰路の途中でボルドーに滞在し、ボルドー・ワインについて研究。リオハに戻るとブドウ園を建設、テンプラニーヨ種とガルナッチャ種を使って、ボルドーの醸造法でワインを造り始めた。それまでのスペイン・ワインは、非衛生的な環境で、浅い大桶でブドウを足で踏みつぶして発酵させ、皮袋に入れて貯蔵していたため、ワインには独特な不快な風味があった。しかし、ボルドー式、つまりブドウを急速に圧搾してから深い木製の大樽に移して発酵させることにより、清らかな風味をもつ、フレッシュで濁りのないワインを造ることが可能になった。
こうしてムリエタは、完璧なリオハ・ワイン造りを目指したわけだが、時を同じくして、ボルドーで同地の製法を学んだ野心家がいた。リスカル侯ドン・カーミロ・ウルタド・デ・アメサガDon Camillo Hurtado de Amézagaだ。彼はとにかくボルドー・ワインが好きで、リオハでボルドー・ワインに似たワインを造ることを画策。リオハに戻った彼は、10年の歳月をかけて、地下にワイン貯蔵庫を建設。200ヘクタールの畑の4分の3にリオハのブドウ品種を、そして1/4にボルドーのブドウ品種を植え、ボルドーからワイン管理人を雇い、ワインを長期熟成させた。最初のワインは1862年に出来上がり、1865年にボルドーで行われたワイン品評会で見事最優秀賞に輝く結果となった。

スペイン屈指の ワイン産地に成長

ビトーリア公エスパルテロとムリエタが案じたように、その後、フランスはブドウ生産量が回復するとスペインとの通商条約を破棄。しかし、ボルドー製法とテンプラニーヨ種を組み合わせたリオハのワイン産業は、この地で代々受け継がれ、リオハはスペインの最高品質ワイン生産地としての地位を確立していったのだった。リオハの赤ワインは出しゃばった果実香味がなく、コクと甘味があり、土、キャラメル、ヘーゼルナッツの風味をもつマンチェゴ・チーズ=写真=によく合う。周りの縄目の色が濃いほど熟成期間が長く、味わいがまろやかでコクがある。ぜひリオハの赤ワインとともに味わっていただきたい。

 

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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