ワインにまつわる今月のトピック：英国産スパークリング・ワイン
地球温暖化が英国にもたらしたプラスの産物
各国のワイン名産地が、干ばつや日照り、自然火災、カビ病、新しい害虫等々、いろいろな被害を受けている中、英国では地球温暖化の恩恵を受けブドウの完熟が可能となり、ワインの品質がますます向上している。自然現象のおかげというだけでなく、そのレベルの向上の背景には様々な人的努力も認められる。例えば、英国のブドウ栽培における最大の問題である春霜に関し、2月23日付「WineGB」の発表によると、「ブドウ畑における霜害に対するよりスマートな予測、コミュニケーション、管理」と呼ばれるプロジェクトに「Innovate UK」と環境・食糧・農村地域省（Defra）から30万ポンド以上の資金が投じられているという。国を挙げて国内のブドウ栽培の発展への支援が行われていることが分かる。
英国農産業界きっての成長株
2012年、英国のブドウ栽培面積は1,384ヘクタール、年間生産量は750mlのボトルで340万本だったが、2023年の公式発表によるとブドウ栽培面積は約4,200ヘクタール、収穫量は2000万本以上と好調な伸びを見せている。英国のワイン産業の伸びが、英国内農業部門で第１位となっていることも納得がいく。中でも特に質の向上がみられるのは、シャルドネ種ベースのブラン・ド・ブランBlanc de Blancsで、世界で注目を集めている。今月号では、その中でも、ワイン愛好家たちが好んで入手している特にすばらしいブラン・ドゥ・ブランを4銘柄を紹介する。
ウッドチャーチ・ヴィンヤード、ウッドチャーチ・ブラン・ドゥ・ブラン
Woodchurch Vineyard, Woodchurch Blanc de Blancs 2014
ラベルにブラン・ドゥ・ブランと書かれている場合には、そのワインは白ブドウ品種のみから造られているということを示す。特に上質のスパークリング・ワインは、シャルドネ種のみから造られる。このワインはケント産。アルコール度は12.1 %、残留糖分は8.6g/l。多くのシャンパーニュよりやや辛口め。死んだ酵母と30ヵ月間接触させているために、シャンパーニュ特有のブリオッシュ香とうまみが醸し出され、リンゴの花の匂いを呈す味わい深いエレガントなワインに仕上がっている。小売価格60ポンド（https://woodchurchwine.co.uk）。
グレイフライアーズ・ヴィンヤード、ブラン・ドゥ・ブラン
Greyfriars Vineyard, Blanc de Blancs, Magnum 2014
こちらももちろんシャルドネ種の実から造られている。サリー産。アルコール度は12 %とシャンパーニュ並だが、残留糖分が4.0g/lと、ブルゴーニュの白ワイン並の辛口だ。酸味もウッドチャーチ・ヴィンヤードよりもやや高い。このワインは、ブドウの収穫後、オーク樽（新樽ではない）内で発酵＆熟成させているので、味わいは上質のブルゴーニュ白ワインに似て多面的な複雑な味わいを持つ、凝縮した味わいの辛口ワインだ。マグナム（150cl入り）で60ポンド（www.greyfriarsvineyard.co.uk）。
ナイティンバー・ヴィンヤード、ブラン・ドゥ・ブラン
Nyetimber Vineyard, Blanc de Blancs . Magnum 2014
ウェスト・サセックス産のあまりに有名なワイン。100%シャルドネ種から造られ、アルコール度は12 %、残留糖分は9.5 g/lとほぼシャンパーニュ並。酸味も秀でてはおらずバランスが抜群だ。死んだ酵母との接触が6年間と抜きんでて長く、なるほど、さすが英国のスパークリング・ワインを世界に知らしめただけのことはあるとうなずける、王者の味わいのワインだ。マグナム＝写真＝で110ポンド（https://nyetimber.com）。
ハロー・アンド・ホープ・ヴィンヤード、ブラン・ドゥ・ブラン
Harrow & Hope Vineyard, Blanc de Blancs 2014
バッキンガム産。シャルドネ種100%。ベース・ワイン、つまり、発泡性を持たせる前の元になるワインの50％をオーク樽で発酵および熟成させたワインを使い、発泡性を持たせた後、38ヵ月間死んだ澱と接触させている。アルコール度12 %、残留糖分9.5 g/l。柑橘類の風味に、焼いたリンゴやトースト、ブリオッシュといった複雑な風味が加わる官能的な味わいを持つワイン。マグナムで115ポンド（https://harrowandhope.com）。
週刊ジャーニー No.1333（2024年3月14日）掲載
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