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ワインにまつわる今月のトピック:ワインを造るブドウの収穫期

生活に根差した別名を持つフル・ムーンたち

先月30日のブルー・ムーンは、スーパー・ブルー・ムーンと呼ばれ、すばらしく明るく、輪郭がはっきりとした、とても大きな満月だったが、ご覧になられた読者も少なくないことだろう。月が地球に一番近づいた時に見られる、このスーパー・ブルー・ムーンが次に現れるのは14年後の2037年だという。
満月といえば、日本に「中秋の名月」という呼び名があるように、英国でも1年を通してフル・ムーンに別名がある。

  • 【1月】ウルフ・ムーンWolf Moon
  • 【2月】スノー・ムーンSnow Moon
  • 【3月】ワーム・ムーンWorm Moon(ワームは土中にいるミミズなどのこと)
  • 【4月】ピンク・ムーンPink Moon (本当にピンク色で素晴らしい)
  • 【5月】フラワー・ムーンFlower Moon
  • 【6月】ストロベリー・ムーンStrawberry Moon
  • 【7月】バック・ム―ンBuck Moon(バックは雄ジカのこと)
  • 【8月】スタージョン・ムーンSturgeon Moon(スタージョンはチョウザメのこと)
  • 【9月】ハーヴェスト・ムーンHarvest Moon(またはCorn Moon)
  • 【10月】ハンターズ・ムーンHunter’s Moon(またはHarvest Moon)
  • 【11月】ビーバー・ムーンBeaver
  • 【12月】コールド・ムーンCold Moon

これらは、農業や狩猟で成り立っていた暮らしに根差しており、もともとアメリカ先住民が名付けたものが基になっているという。それが英語圏内に広がったとされ、他の名前で呼ばれる月もあるが、英国ではここでご紹介した名前が使われるのが一般的だ。

大切なブドウの収穫月

英国の9月と10月の満月はハーヴェスト・ムーン、つまり収穫満月。ワイン業界でも忙しい時期だ。ブドウ収穫については、手作業の場合はグレープ・ピッキングgrape picking、機械を使う場合にはハーヴェストHarvestと呼ぶが、ブドウの出来不出来がワインの品質を左右するだけに、ワイン産業に携わる全ての人にとって、期待と不安の入り混じる時期ともいえる。

さて、ロンドンからほど近いケント州のワイナリーでも、ピッキングを経験させてくれるところが複数ある。ウィストン・エステートWiston Estatewww.wistonestate.com)、ティンウッド・エステートTinwood Estate(www.tinwoodestate.com)、ラスフィニー・エステートRathfinny Estate(https://rathfinnyestate.com)などが挙げられる。

ロンドン近郊で体験するグレープ・ピッキング

例えばウィストン・エステートでのピッキングを申し込む場合には、公式ウェブサイトの最初の画面をスクロールダウンしてニュースレターに登録し、メールアドレスと名前を記入して申し込む。先着順とのことなので、早めに申し込む必要がある。収穫はおそらく10月の2週目あたり。まだ日にちが決まっていないが、ニュースレターとともに収穫日が知らされる。午前8時頃から始まり、ランチをブドウ畑でとり、午後5時ぐらいに終わる。要予約(先着順)だが無料。
また、ティンウッド・エステートの場合には、公式ウェブサイトの上段にある「Experience」をクリックし、出てきた画面内にある「Special Event」をクリックすると複数の収穫参加可能日が表示されるので、その中から希望日を選ぶ。現時点では10月3日、4日、6日に空きがあるとのこと。1~2時間の収穫を経験し、その後ランチとワインを楽しむことができる。参加費は65ポンド。

手作業で行われるブドウの収穫

特に注意事項はないが、当日の朝、現地でどのようにピッキングするかについての説明がある。収穫用はさみはワイナリーが用意してくれる。収穫は手で丁寧に行うが、各枝には収穫してよいブドウとしてはいけないブドウがあるので、収穫してはいけないブドウは樹に残したままにする。各人がプラスチックの箱を渡され、そこに収穫したブドウを入れていく。持ち物として、園芸用の手袋、フード付きの防水ウィンド・ブレーカーは持参した方がよい。残念ながら小さい子どもさんは参加できない。
収穫したブドウがワイナリーに運ばれ、ベルト・コンベアーにのせられたブドウ房から腐った果粒が取り除かれ、除梗機を通って、プレス機(圧搾機)に入れられるまでの過程を見学させてくれるところもある。その後は、大きな発酵槽(おそらく温度調節できるステンレス製タンク)に入れられ、糖分がアルコールに変わり、やがてワインへと変身を遂げていく。そうしたワインの1滴に、自分で収穫したブドウが含まれているかもしれないと考えるとうれしくなる。秋の1日、ブドウ畑で過ごしてみてはいかがだろう。

週刊ジャーニー No.1308(2023年9月14日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。
www.miyokostevenson.co.uk
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