ワインにまつわる今月のトピック㉚ シャンパーニュ再訪 その2

上質だった今年のボージョレ・ヌーヴォー

ご承知の通り、11月の第3木曜日は仏ボージョレ地区で作られる新酒、ボージョレ・ヌーヴォーbeaujolais nouveauの解禁日。楽しまれた読者も多いことだろう。今年は輸送費上昇のために、日本でのボージョレ・ヌーヴォーは例年の1.6倍と値段が高騰したとのこと(3300~5500円ほど)。ただ英国では、通年と変わらず10~12ポンドほどのままで入手しやすい価格が維持された。今年のボージョレ・ヌーヴォーは上質で、紫がかった色が美しく、イチゴやレッドカラントの果実香味が際立っている。ボージョレ・ヌーヴォーはできるだけ早く消費するように造られているので、1月末までには飲み切っていただきたい。

ノン=ヴィンテージとヴィンテージの違い

さて、そうこうしている間に、今年もまた坊主も走るという師走がやってきた。愛する人や家族と過ごすクリスマス、気の合う友人達や会社の仲間と集まる忘年会、そして謹んで祝う新年会と盛り上がる機会が多い。お祝いの席に欠かせないのがシャンパーニュ。この時期、シャンパーニュのセールが多いのもうれしい。ラベルに収穫年が書かれていないのは、NV(ノン=ヴィンテージNon-Vintage)、一方、収穫年が明記されたものはヴィンテージもの。ノン=ヴィンテージとは、過去に造られたワインとブレンドしていることを、ヴィンテージは単一年で産出されたブドウから造られていることを意味する。シャンパーニュはフランスでも最も北に位置するワイン産地なので、単一年で産出されたブドウから造るのが難しく、品質レベルを保つために、過去に造られたワインとブレンドするのが一般的なのだ。

シャンパーニュを冷蔵庫に入れたままにするのは厳禁

この時期は家の中でもそれほど気温が上がりすぎる心配はないが、シャンパーニュは出番が来るまで、涼しく陽の当らない暗い場所に、ボトルを横にして置いておくことが肝心。飲む前日に冷蔵庫に横にして入れる。横にするのはコルクを湿った状態にすることで、中味を封じることができるからだ。そうしておいても、冷蔵庫の中ではコルクが次第に縮み、ボトル内の気圧が下がってしまうので、1週間以上入れておかないように注意したい。また、1週間ほど冷蔵庫に入れておいたものを、また外に出して保管するのもよくない。質は劣化する。もちろん、例外はあるが、通常NVは1年以内に、ヴィンテージは2~3年で飲みたい。

今冬イチオシのブラン・ドゥ・ブラン

今号ではこの冬に是非試していただきたい、イチオシのシャンパーニュをご紹介する。アペリティフとしてそのままでも、または、魚介類のお供に最高なのがピエール・モンキュイPierre Moncuit。シャンパーニュ地方でも白ブドウ品種の産地、コート・デ・ブラン地区の特級村に位置する家族経営のメゾンだ。1889年からブドウ栽培に携わり、ピエール(Pierre Moncuit)が独自のシャンパーニュを造り始めたのが1928年のこと。1977年からは3世代にわたって、ブドウ栽培およびワイン造りは、母から娘へと女系で受け継がれてきている。

ここのキュヴェ・ブラン・ドゥ・ブラン、グラン・クリュCuvée Blanc de Blanc Grand Cru=写真右=を勧めたい。シャルドネ種100%から造られ、のど越しがシルキーで、グレープフルーツに加え、焼きリンゴや甘い香辛料の風味、そしてミネラル感が伴い、後味に雑味のない、フレッシュで実においしいシャンパーニュだ。ワイン・メーカーが女性というだけあって、なんともエレガントで精妙。一度飲んだら、ファンになること請け合いという1本だ。
値段は、セルフリッジSelfridgesとウィスキー・エクスチェンジThe Whisky Exchangeで44ポンドと、ブラン・ドゥ・ブランにしては非常にお得。どのメーカーでも、ブラン・ドゥ・ブランは、他のNVと比べて値段がかなり高いのが普通だからだ。では、今年も1年、無事に過ごせたことを感謝し、そしてコロナとウクライナでの紛争が1日も早く終息し、来年が今年よりも良い年になることを願って乾杯!

週刊ジャーニー No.1269(2022年12月8日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。
www.miyokostevenson.co.uk
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