ワインにまつわる今月のトピック㉚番外編 冷やして飲みたいワイン

イングランドで人気のワイン

先月号に引き続き、2021年11月に発表されたワインの人気調査の結果についてお送りしたい。今号では、第2位となったシャルドネChardonnayと第4位のロゼを取り上げることにする。なお、シャルドネはブドウ品種のことだが、ロゼはピンク色のワインの総称。

多種多様に変化するシャルドネ種のワイン

シャルドネ種は、寒くても温暖でも、暑くても栽培できることから、世界中のワイン産地で栽培されている。しかし、気候や土壌、醸造法などによって味わいが多種多様に変化するので、その特徴を一言で表現するのは難しい。例えば、シャルドネ種から最高の白ワインを産するフランスのブルゴーニュ地方ひとつとってみても、北に位置するシャブリ地区のワインは酸味が高く、刃がねのように切れ味がよく、塩味を感じることさえあるほどミネラル感の強い、硬い味わいの辛口ワインで青いリンゴや梨といった香味をもつ。それより南のコートドールで造られるシャルドネはオークを使って熟成させることが多く、バターやスモークの味わいを思わせ、柑橘類の風味を持ち、驚くほど複雑で表現力がある。そして、そのまた南に位置するマコン地区で造られるシャルドネはフル=ボディで、良く熟した梨、桃、時にはトロピカル・フルーツを思わせるワインを造る。こうしたブドウ産地の違いだけではなく、各年の天候によっても、また醸造方法によっても味わいが様々に変化する。その上、シャルドネにはクローンが多く、フランスだけでも32のクローン使用が許されている。各地でクローンが開発されるので、国、そして産地によって、シャルドネの個性が異なるのは自然なこと。とはいうものの、シャルドネのワインは概して大変おいしく、落胆させられることが少ない。それが人気の要因になっているのかもしれない。また、例外はあるものの、ニュー・ワールド(欧州や北アフリカ、中東といったオールド・ワールドを除く)のシャルドネの方が、フル=ボディで、果実香味やアルコールが強いといえる。

各種料理に合わせやすいロゼ

ロゼ・ワインは、実に食事に合わせやすい。色がかわいらしいだけでなく、果実香味がでしゃばらず、酸味もそれほど高くなく、飲みやすい。また、長期熟成させるものではないので、買ったら長く置かずに、そして冷やして飲むこと。ランチでも夕食でもピクニックでも楽しめるのも特長。赤ワインと同じく、黒ブドウ品種のみから造られ(シャンパーニュのロゼ・ワインは、白ワインに赤ワインをブレンドすることが多いが)、香りは赤ワイン同様ながら、果実香味はよりおとなしいので料理を圧倒しない。特に有名なのは仏プロヴァンス地方のロゼ。これはアルコールは高め、かつボディがしっかりした辛口ワインで、サラダでも、肉料理でも、アジアの料理でも、さらには中東、アフリカの料理とも相性がよい。マグロやホタテ、焼き鳥、から揚げチキン、海藻サラダと、本当に何にでも合う。

そのようなロゼの中から、今回お薦めしたいのは「ウィスパリング・エンジェルWhispering Angel」=写真。一般的にロゼ・ワインは安価で入手しやすいのだが、このワインはちょっとお値段が張る(ウェイトローズで£20)。その分、味わいも高級で、飲んでみれば納得がいくはずだ。


英国の「乾杯」の歴史

ところで、英国では乾杯のことを「トーストtoast」と言い、乾杯する時に「チアーズCheers!」と声を掛け合うことは多くの方がご存知の通りだが、なぜだろう? その起源は、水が不潔で人々に飲まれることが少なかったエリザベス1世の時代(16世紀)にまでさかのぼる。水の代わりにワインやシェリー、エールやビールが多く飲まれていた(たとえ子供でも)のだが、沈殿物が多かった。そこで、金属製のジョッキの底にトーストの一片を置いて、飲み物から沈殿物を取り除いて風味をよくし、また硬くなったパンを食べやすくしていたという。一方、「チアーズ」という掛け声は、「顔」や「頭」といった意味を持つ古いフランス語の「chiere」に由来し、18世紀頃から激励という意味を持つようになり、やがて「健康を祝して」といった意味を持つ「cheers」に移り変わったとされている。9月に入ったが、まだもうしばらくは夏の名残を感じさせる日が続くようだ。冷やしたロゼでCheers!

週刊ジャーニー No.1256(2022年9月8日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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