ワインにまつわる今月のトピック㉚ ヴァレンタイン・デーに飲みたい1本

愛する人をロマンチックにさせる食べ物と飲み物

ヴァレンタイン・デーは愛を誓う祝日。起源は13世紀初めにさかのぼる。時のローマ皇帝クラウディウスは、兵士の士気が下がるのを懸念し結婚を禁止。それに抗議して兵士たちの結婚を助けたヴァレンチノ司祭は、やがて皇帝の怒りにふれて処刑される。2月14日のことだった。以来、人々は同司祭を『恋人たちの守護神』として祭り、処刑日は聖ヴァレンタイン・デーと呼ばれるようになる。この日にチョコレートを贈るのは、欲望を刺激し、愛する人をロマンチックにさせる物質が含まれているとして、チョコレートがアステカ(メキシコ中央部で栄えた国家。1521年に滅亡)の時代より、媚薬食品と見なされてきたからだ。

欲望を刺激し、愛する人をロマンチックにさせてくれる点では「泡(発泡性)」のワインも負けてはいない。開栓時の音、糸のように連なって美しく立ち上るエレガントな泡と美しい色合い、華やかな味わいを備えている。シャンパーニュChampagneが代表格だが、フランスにはシャンパーニュ以外にもクレマンCrémantヴァン・ムスーVin Mousseuxがある。スペインにはカバCavaなど、イタリアにはプロセッコProseccoアスティAstiランブルスコLambruscoなど、ドイツにはゼクトSekt、スロヴェニアにはペニーナPeninaがある他、ニュー・ワールドにも様々なスパークリング・ワインがある。

ヴェネト州生まれの発泡性ワイン

英国で一番人気の高い発泡性ワインはプロセッコで、イタリア北西部のヴェネト州(州都はヴェニス)とフリウリ地方で、白ブドウ品種のグレラGleraを使って造られる。これは2009年に作られた品種名で、それまではブドウ品種名もプロセッコだった。しかし、この品種から非発泡性ワインも造られているため、世界市場で人気上昇中だった発泡性のプロセッコを守るために、別の品種名が設けられたのだ。また、プロセッコには原産地統制名称ワインのプロセッコDOCと、それより上質の保証付き原産地統制名称ワインDOCGがあり、DOCGプロセッコは、コネリアーノConeglianoとヴァルドビアデネValdobbiadeneの村に挟まれた小さな丘陵で造られている。DOCGの中でも、より上質なものはConegliano Valdobbiadene Prosecco Superiore Rive DOCG、そしてプロセッコの最上質ワインはProsecco Superiore di Cartizze DOCGと名乗っている。

2020年に突然登場したロゼ

2008年のプロセッコの総生産量は1億5000万ボトルだったのだが、2018年には6億ボトルに急増。プロセッコの総輸出量の30%を占める英国は最大の輸出先で、2019年には1億1500万ボトルを購入してトップの座を守ったが、英国への輸出量の伸び率は7.5%。伸び率40%の中国&香港、18.5%のオーストラリア&ニュージーランド、そして15%のロシアに比べると小さく、英国、そしてそれに続く最大輸出国のアメリカ合衆国、ドイツ、フランスにおけるプロセッコ市場は、ほぼ飽和状態とみる専門家や生産者が多い。

そのような市場を活性化し、さらなる消費増加を見込んで、突如、去年新たに登場したのがプロセッコ・ロゼ。過去数年間の非発泡性ロゼの人気上昇にあやかろうとの狙いだろう。そもそもプロセッコは、1754年に初めて登場して以来、白ブドウ品種から造られる白の発泡性ワインと決まっていた。それが、2020年にイタリアのワイン法が改正され、黒ブドウ品種のピノ・ノワール(シャンパーニュの主要ブドウ品種の1つ)から造られる赤ワインを10~15%、プロセッコにブレンドして造るロゼの生産が始まったのだ。

ロゼのプロセッコは、白のプロセッコのもつメロンや青いリンゴの風味に、赤いベリーの可憐な香りが加わり、一層おいしく、色もかわいらしくてアペリティフにもってこいだ。そのおつまみとして最高なのは生ハム。メロンを細長く切って生ハムで巻くのもよし、ゆで卵を縦に4等分したものやローストしたアスパラガス、あるいはシェーブル・チーズやかまぼこを生ハムで巻くのもおススメ。プロセッコのもつ微妙な甘さが、生ハムの塩みと非常によく合う。ただし、生ハムはパルマ・ハムやサン・ダニエルといったイタリア産に限る。プロセッコは、例えば、スモーキーさとコク、そしてほのかな肉の甘さを持つスペインのイベリコ・ハムとは合わないのでご注意を(イベリコ・ハムの場合には、スペイン産の発泡性ワイン、カバを飲もう)。

さて、2月14日の夕べをプロセッコ・ロゼでスタートしてみてはいがかだろう(左の写真は、どちらもマークス&スペンサーのもの。各10ポンド)。ロマンチックなひと時を存分にお楽しみあれ。

週刊ジャーニー No.1175(2021年2月11日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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