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ご当地ワインと郷土料理&名産物㉒ 北米・カリフォルニア その1

カリフォルニアのワイン産地を襲った業火

今年10月初めに米カリフォルニア州を襲った原野大火災は、死者41人、負傷者185人を出し、8万5,000ヘクタールの土地(東京23区の半分弱の面積)、少なくとも5,700棟を焼失させ、10万人が避難しなければならないという大惨事だった。このエリアは高級ワイン産地としても有名なナパNapa、ソノマSonoma、メンドシーノMendocinoといった地域も含まれ、4万ヘクタール余りのブドウ畑も焼滅したとされている。カリフォルニア州に存在するブドウ栽培地の5分の1以上が焼けてなくなってしまったことになる。それだけではない、実際に焼けなかったとしても、立ちこめる煙によってどれだけの人々やブドウ畑、自然生物が被害を受けたかは計り知れない。

ワイン生産量は30%減か

2017年のカリフォルニアにおけるブドウの出来は素晴らしく、運よく、火災が始まる前にブドウを収穫したワイナリーが多かった。ナパとソノマの産地では約85%、メンドシーノでは約75%のブドウがすでに収穫されていたという。ところが、ハイ・エンド、つまり高級ワインを造るワイナリーではブドウをなるべく長い間、樹につけたままにしておく傾向が強く、特に、晩熟のカベルネ・ソーヴィニョン種と古樹のジンファンデル種の収穫が遅れ、被害を受けたようだ。
たとえ焼失などの被害がなくとも、火災の煙が立ち込めたブドウ畑は広い範囲におよび、ブドウを収穫できたとしても、ブドウにしみついた、火災に起因する煙の風味をワインから取り除くことは不可能だろうといわれている。また、直接火災の影響がなかったワイナリーでも、停電となった地域が少なくなく、温度管理装置付き発酵槽に入ったままの、つまり仕込み中のワインに悪い影響が出ないわけがないだろう。こうした事情により、2017年のカリフォルニア・ワインの生産量は少なく見積もったとしても30%減とされている。


復興への大きな課題は人材確保

ブドウの樹は強い。したがって、根や幹、または多少の枝が残っていれば、2018年はともかく、2019年には収穫できるブドウができるとも見込まれている。しかしながら、ブドウ畑の世話をする人々が確保できなくなる可能性が高いという大きな問題が残された。ニューヨーク・タイムズによると、この度の火災の被害をうけた北部カリフォルニアのワイン産業に従事する5万5,000人のほとんどは移民で、今回焼失した5,700棟の多くは彼らの住居だったのだ。住む場所を失った彼らが、ブドウ畑に残ってくれる可能性は低く、働き手の確保は今後、深刻な問題になる。
今回の火災では、ナパ、ソノマ、メンドシーノで1200ワイナリーが何らかの被害を受けたが、うち、全壊もしくは大きく破壊されたのは約10ワイナリーにとどまった。被害を受けたワイナリーとして報じられているのは次の通り。
【ナパ郡】Darioush Winery, Hagafen Cellars, Helena View Johnston Vineyards, Jarivs Estate, Mayacamas Vineyards, Paras Vineyard, Pulido-Walker's Estate Vineyard, Robert Sinskey Vineyards, Roy Estate, Segassia Vineyard, Signorello Estate Vineyards, Sill Family Vineyards, Silver Oak Cellars, Sky Vineyards, Stags' Leap Winery, Storybook Mountain Vineyards, VinRoc, White Rock Vineyards, William Hill Estate Winery
【ソノマ郡】Ahh Winery, Ancient Oak Cellars, Chateau St. Jean Domaine Carneros Vineyard, Gundlach Bundschu Winery, Nicholson Ranch, Paradise Ridge Winery
【メンドシーノ郡】Backbone Vineyard & Winery, Redwood Valley Frey Vineyards, Golden Vineyards, Oster Wine Cellars
自然災害の多い今年、ここにも大きな傷跡が残されたわけである。なお、カリフォルニア原野大火災被災者への寄付に興味のある方はwww.gofundme.com/raise-funds/CAfirereliefを参照していただきたい。

週刊ジャーニー No.1009(2017年11月9日)掲載

ミヨコ・スティーブンソン Miyoko Stevenson

WSETディプロマ取得。Circle of Wine Writers会員。Chevalier du Tastevin(利き酒騎士)団員。Jurade de St-Emilion団員。Ordre des Coteaux de Champagne団員。国際日本酒利き酒師。The Guild of Freemen of the City of London会員。ワイン関連の訳書・著書あり。現在、ロンドンでワイン教室を主宰。
www.miyokostevenson.co.uk
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