何ゆえ、英国の「プディング」は日本のプリンと異なりますの?
愛するお父様へ
前文お許しくださいませ。
お父様、いかがお過ごしでしょうか? 早速ですが、本日も日本と英国の違いをまたひとつ発見いたしましたので、ご報告いたしますね。
昨日、友人のソフィア嬢と一緒に、ハムステッドのパブでサンデーローストをいただきました。甘党のわたくしとしましては、やはり「デザートは別腹」。もちろん、食後の甘味も注文することにいたしました。
どれにしようか散々迷ったものの、「Pudding with custard」を注文。久々に「プリン」を口にすることができると楽しみにしておりましたが、テーブルに運ばれてきたのは…熱々のカスタードがたっぷりとかけられたスポンジ・ケーキ! とても美味しそうではありますけれど、わたくしが注文したプリンではございません。慌てて店員の男性に「お皿をお間違えですよ」と伝えましたところ、彼は不思議そうな表情。そして、このスポンジ・ケーキが「Pudding with custard」だとおっしゃるのです! 一体どういうことなのでしょう? 日本のプリンと英国の「プディング」は別の食べ物なのでしょうか。気にかかりましたので、調べてみることにいたしました。
さまざまな資料に目を通しました結果、どうやら英国のプディングには2つ意味があることがわかりました。
英国でのプディングの発祥は、古代までさかのぼります。当時は牛や豚の腸に肉などを詰めて茹でた、ソーセージのような料理だったとのこと。しかし17世紀になると、「肉を使って茹でた料理」と「小麦粉・ナッツ類・砂糖を使って茹でた料理」に2分化されたようです。18世紀後半には、肉を材料とする前者のプディングが少しずつ姿を消しはじめ、さらに19世紀には、後者のプディングにナッツ類のほかドライフルーツなどが加えられ、デザートとしてのプディングが主流となったとのことでした。ですので、英国において単に「プディング」と言った場合、スポンジ・ケーキのような焼き菓子や、時にはデザート全般を表現する言葉にあたるのだとか。
サンデーローストやイングリッシュ・ブレックファーストといった伝統的な英国料理には、ヨークシャー・プディング、ブラック・プディング(血肉ソーセージ)などの「プディング」が添えられていますが、これらは『元祖のプディング』の名残りのようです。
わたくしが注文した「Pudding with custard」は「プディングのカスタード添え」ですので、店員の方は間違えていなかったことがわかりました(疑っていたわけではございませんが…)。
ちなみに米国では、英国と同様にスポンジ・ケーキのようなプディングなどもありますが、そのほかに卵をベースにしたカスタードやゼラチンを含んだムースのようなデザートも「プディング」と呼ぶそうです。どうやら日本の「プリン」は、米国から伝わったようですね。ただお父様、英国にもプリンはあるのですよ! スーパーマーケットで発見したその商品名は「クリーム・キャラメル」。プリン=クリーム・キャラメルと覚えておかなくては、と学んだ次第です。
それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。
かしこ
平成28年11月28日 るり子