徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
2015年6月18日
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何ゆえ、ジューン・ブライドは

幸せになれると申しますの?

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ
徳川るり子

愛するお父様へ

 前文お許しくださいませ。
 お父様、お変わりありませんでしょうか?
 先日、わたくしが通っている英語学校のサラ先生の結婚式に、みんなで列席いたしました。真っ白なドレスに身を包み、満開の花と明るい日差しの下で微笑まれるサラ先生は、とてもお幸せそうでした。
 さて、ヨーロッパには古くから「6月に結婚すると、生涯幸せな結婚生活を送ることができる」という言い伝えがあり、6月に結婚する花嫁を「ジューン・ブライド(June Bride)」と呼ぶことは、お父様もご存知のことと思います。6月の結婚は、なぜこのように特別視されるのでしょうか? 好奇心を抑えきれず、調べてみることにいたしました。
 いくつか資料をあたりましたところ、その起源として様々な説があり、大きくわけると3つに絞れます。
 まず1つ目は、ローマ神話に由来するというもの。古代ローマの人々は、5月に死者を祀るレムリア祭という行事を行っていたため(日本のお盆のようなものでしょうか)、あまり縁起がよくないこととして5月の結婚を避けていたそうです。そして、最高神ジュピター(Jupiter)の妻で、結婚と出産をつかさどる女神ジュノー(Juno)を祝う祭日が6月1日であったことから、6月に結婚するカップルが多かったのだとか。結婚生活の守り神であるジュノーが守護している6月に挙式すると、その加護で幸せになれると信じられていたようです(6月のJuneは、この女神の名前が起源となっています)。
 2つ目は、農業の繁忙期に由来する説。長く厳しい冬が終わった3月~5月は農作業が1年でもっとも忙しい時期であり、かつてヨーロッパでは農作業の妨げとならないように、その期間に結婚式を挙げることを禁止していました。そのため、この禁止期間が明けた6月には、いっせいに結婚式が行われ、村や町をあげて祝福したそうです。
 そして最後の3つ目が、天候や気候に由来するというものです。ヨーロッパでは、6月は1年でもっとも雨が少ない月とされています。一生に一度の「晴れの日」ですから、晴天の中で祝われたいのはもちろんですが、式場や花嫁をたくさんの花で飾るためにも、ちょうどよい気候であったことも大きいようです。6月はバラをはじめとして多様な花々が咲き競いはじめる時期ですので、花の香りで「体臭を覆い隠す」ためにも(!)どれだけ多くの花を用意できたかが、家の財力を示していたとのこと。…花にはそんな役割もあったのですね。
 「ジューン・ブライド」の伝説を大切にするカップルは年々減っており、現在は8月に婚礼を挙げる方が一番多いそうですが、わたくしがどなたかと婚姻を結ぶ際には6月がいいな…と憧れております(そのような予定は今のところございませんので、ご心配なさいませんように!)。それでは今日はこのへんで。お母様にもよろしくお伝えくださいませませ。

かしこ 
平成27年6月15日 るり子

徳川るり子の細腕感情記Ⅱ

とくがわ・るりこ◆ 横浜生まれのお嬢様。名門聖エリザベス女学院卒。元華族出身の24歳。あまりに甘やかされ過ぎたため、きわめてワガママかつ勝気、しかも好奇心(ヤジ馬根性)旺盛。その性格の矯正を画する父君の命により渡英。在英8ヵ月。ホームステイをしながら英語学校に通学中。『細腕感情記』(平成6年3月~平成13年1月連載)の筆者・徳川きりこ嬢の姪。

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