■ 第223話 ■第3神殿、出来たらどうなる?
▶前号ではテキサスで見つかった「完璧な赤毛雌牛」5頭がイスラエルに到着した話をした。これでユダヤ教第3神殿建設の条件が整った。ところが第1神殿と第2神殿があった場所には現在イスラム教の「アル・アクサ・モスク(岩のドーム)」が建っている。第3神殿を建てるにはモスクをぶっ壊すか、妥協して別の場所に建てるかの二択しかない。前者が採択されればユダヤ教徒とイスラム教徒の衝突は避けられない。ユダヤ教徒は言う。「ここにかつて我々の神殿があった。だからモスクを壊してここに神殿を再建する」。イスラム教徒は返す。「それは2000年も前の事。君らは追放され離散した。今さらここは昔、俺んちだったなど笑止千万」。答えなき論争。
▶仮に第3神殿が建った場合、一体何が起こるのか。抽象的な言い回しの多い聖書は研究者によって解釈が異なる。色々読んだり見たりしたが統一見解に辿り着けない。そこでここではより多く目についた見解を記す。ざっくり言えば救世主(メシア)が来臨するらしい。救世主は2000年間、神殿がなかったために出現が叶わなかったということだ。では救世主は何をしにやって来るのか。世界が近く終末を迎えるため、ノアの方舟の時と同様、神に選ばれし民たちを救いに来るのだろう。神に選ばれていない民はどうやら「ごきげんよう」らしい。ええーっ、選ばれてないいぃ。
▶完璧な赤毛雌牛がテキサスの牧場で見つかり2022年9月にイスラエルに運び込まれたと語った。送った牧場主はキリスト教徒だ。なんで? これを理解するにはキリスト教がユダヤ教から派生した宗教であることを理解しておく必要がある。さらにイスラム教もまた旧約聖書ありき。全く違って見える3つの宗教だが、実はいずれも同じ神様を崇める一神教だ。雌牛を送った牧場主はキリスト教の中でも「親イスラエル」と言われる福音派の信者だ。アメリカ大統領選の行方を左右するとも言われる白人福音派。第3神殿が再建されればユダヤ教徒にとっての救世主が来臨する。一方、福音派の人々は第3神殿が再建されれば彼らにとっての救世主、イエスが再臨すると信じている。だから神殿再建を後押しする。ところがユダヤ教側はイエスはユダヤ教信者の一人であって救世主だとは認めていない。イエスを救世主と認めたら自らの手で救世主をローマに突き出し、処刑させたことになってしまう。ユダヤ教徒の救世主とキリスト教徒の救世主イエス、第3神殿完成の暁にやって来る救世主は一体どっちなの? 分からん!!
▶これだけでも十分厄介なのに「ちょっと待ったー」と、ねるとん式に参入するのがイスラム教徒だ。イスラム教では第3神殿完成時にやって来るのはダッジャールという偽の救世主だと信じられている。右目潰れ、肌赤く、地上に現れると「我こそはお前たちの主」と偽って40日間地上を支配するらしい。その1日は1ヵ月にも1年にも感じられるという。なんか邪悪さレベルがビミョーだけど、そのダッジャールが去った後に本物の救世主が現われるのだそうだ。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、それぞれが信じる救世主が三つ巴で同時に出現したら一体どうなるの? もしも世界を巻き込んだ戦争にでもなったら3宗教、どれとも無関係な人にとってはウルトラ超迷惑。しかしキナ臭い話はこれで終わらない。どの団体からも怒られていなければ次号に続く。チャンネルはそのままだぜ。
週刊ジャーニー No.1345(2024年6月6日)掲載
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